2年ぶりの優勝を狙う阪神タイガースジュニア 「NPB12球団ジュニアトーナメント」は明日開幕!
■2024年最後の野球大会
全国からトップクラスの小学生たちが集い、激戦を繰り広げる「NPB12球団ジュニアトーナメント」が今年も開催される。
「プロ野球という夢を身近に」というコンセプトのもと始まったこの大会では、プロ野球各球団がジュニアチームを結成し、その球団のOBが監督やコーチを務める。選手はプロと同じユニフォームを着て戦い、トーナメントの頂点を目指す。
野球界では年末のこの時期の恒例行事として定着し、この大会を経験したプロ野球選手も年々増えている大人気の大会だ。
今年は第20回の記念大会となり、従来のプロ野球12球団に加えて招待チームとしてファームリーグ2チーム(オイシックス新潟アルビレックスBC、くふうハヤテベンチャーズ静岡)と独立リーグ2チーム(四国アイランドリーグplus、ルートインBCリーグ)も参戦し、計16チームで日本一を争うことになる。
(組み合わせはNPBの公式サイト⇒NPB12球団ジュニアトーナメント)
2024年を締めくくる野球大会。小学生にとって注目の試合であるのはもちろんだが、どのカテゴリーの試合も終了して“野球ロス”に陥っている野球ファンにとっても、逸材を発掘することができる楽しみな大会である。
今年、最後に笑うのはどのチームか。また、どんなスター選手が誕生するか。今からワクワクさせてくれる。
■阪神タイガースジュニア・倉橋清瀬キャプテンの言葉
阪神タイガースジュニアはこれまで優勝1回(2022年)、準優勝2回(2016年、2017年)という戦績を記録し、今年は2年ぶりの優勝を目指している。
8月に異例の1カ月間かけてのセレクションを行い、関西および近隣県から精鋭16人を選出した。そして9月から約4か月間、練習と練習試合を重ねてきた。12月21日、22日の土日は最後の練習に汗を流し、仕上がりはバッチリだ。ボール回しもタイムを計測し、緊張感ある中で取り組んだ。
すべての練習が終わったあと、倉橋清瀬キャプテンがナインの前であいさつをした。
「同じチームじゃない子でもこんなに仲よくなれたのは、自分たちよりも監督、コーチやトレーナーさんだったり、保護者のみなさんの支えがあったからこそだと思う。東京も自分たちのお金で行くわけじゃない。その重みをもつとともに、今まで教えてもらったこと、自分にできることを考えて、月曜日と火曜日の2日間をとくに大事にして、自分の課題を潰すことと、いいところを伸ばしていこう」。
そして、保護者に向かってくるりと振り返った。
「保護者のみなさま、今日まで応援やサポート、送迎ありがとうございました。ここまで来られたのはお母さんやお父さんのおかげだと思っています。本戦を大事にして、自分たちのできることを考えてプレーをするので、残り少ない期間ではあるけど、応援やサポートをよろしくお願いします。5ヶ月間、ありがとうございました」。
最も遠い鳥取県から片道3時間かけて通った大谷弥寿選手の名前も挙げつつ、感謝の気持ちを述べた。
■人のために、誰かのために
練習後の玉置隆監督は、言葉を発すると涙がこぼれそうになるようで、あえてふざけて見せた。それくらい、子どもたちへの思い入れが強く、一緒に練習をすることが最後だと思うと、淋しさに胸が押しつぶされそうになっていた。
8月のセレクションからずっと見てきたジュニアたち。ひとりひとりに対して、どうしたら伸びるのか、その子にとっていい方向に進めるのか、さまざま考えながら向き合ってきた。
週末だけではあるが、ともに過ごし、ともに戦ってきて、たしかな手応えを得た4ヶ月間だった。
「技術面でも当然レベルは上がっているんですけど、その中でもやっぱりチームプレーがすごくできるようになってきている。はじめは『自分の力を見て見ろ』ってビュンビュン投げていた子たちが、しっかりワンバウンドで投げる。チームのために何をすべきかということを理解している。今までは自分のためにやっていたのが、スローガンどおり『人のため、誰かのために』できるチームになっているという意識はありますね」。
結成当初に玉置監督が掲げ、毎週毎週、口酸っぱく言ってきたことでもある。ジュニアたちがそれを理解し、実行してくれていることが、長としては嬉しくてたまらない。
また、ノックでも締まりが出てエラーが減ってきたことや、バッティングでもつなぐ意識が高まってきたことも、そこに起因している。ジュニアたちの目覚ましい成長ぶりに、玉置監督は相好を崩す。
■普段どおりに入れるかがポイント
いよいよ明日、本番を迎える。初戦の相手は福岡ソフトバンクホークスジュニアだ。本戦へ向けて、玉置監督は「初戦の入りが一番難しいと思う」と切り出した。
「僕は監督1年目だけど、長く監督をされている方でも、初戦の入り方っていうのはたぶん苦労されると思う。そこでどれだけ普段どおりに入れるかっていうところ。メンタル面ですね。僕たちが言葉でどうもっていくかというところが重要になってくる」。
大会の緊張感たるや、想像もできないことだ。トップクラスの子どもたちとはいえ、未経験ゾーンに入るわけだ。そこはプロの世界で修羅場をくぐってきた、百戦錬磨の首脳陣の力が試される。
玉置監督は「言葉」をポイントに挙げる。
「楽しくしてあげたほうがいいのか、それとも緊張をさらに煽るようにやったほうがいいのか。やっぱり子どもなんで、そのへんが難しいところではある。でも、普段どおりに入らせてあげられることが僕らの仕事。言葉を大事にして、かけていきたいですね」。
自身に言い聞かせるように、そう話した。
■スイッチを入れるタイミングは
また、「一番怖いのは、試合の中でスイッチを入れること」と、「スイッチの入れ方」の重要性も説く。
「失敗したときにスイッチを入れるんじゃなく、プレーボールからすぐスイッチを入れるようにしたい。試合が始まっているのに、エラーしたり、先手を取られてから『あ、やばい、やばい。ここからなんとかしなきゃ』と慌ててスイッチを入れるんじゃなくて、よーいドンで全員がスタートを切ってモードに入れるように。そこをどうもっていくか」。
16人全員が最初から一斉にスイッチを入れて全開モードでいけるよう、そこも監督として気にかけている点だ。
■課題は克服できたのか
約1ヶ月前、玉置監督が課題に挙げていたことがある。12球団一ではないかと思われる仲のいいチームであるがゆえに、いいときはイケイケドンドンで勝利に向かって攻めていける。だが一転、劣勢に立たされたときに弱さが出る。先手を取られたとき、ピンチのときにどう跳ね返すか。そこを危惧していた。
(課題についての記事⇒「ジュニアトーナメントまで1カ月弱。『阪神タイガースジュニア2024』の今ある課題とは」)
「結局、その後の試合はありがたいことに全部勝たせていただいた」と大量失点や大きなピンチもなく、12月は5試合中4試合が完封勝利で、あと1試合も1点差をモノにしている。
課題に取り組めるような試合展開はなかったが、「僕が前から言っている『先手必勝』ということを実行してくれた。12月は全部、後手に回ることがなかった」と、選手たちの健闘を讃える。
「後手に回ることがなかった中、ベンチでの行動や声のかけ方は見ていましたけど、大丈夫だなというイメージはありますね。劣勢でもみんな声を出し続けていましたし、ひとりひとりがやるべきことを理解して行動していた。勝っていても『もっと声出していこうよ』とか『追いつかれてからじゃ遅いよ』とか、油断せずに声で鼓舞していますし、危機感をもっているのが伝わってきた。大会でもし後手に回っても、跳ね返してくれるんじゃないかと思います」。
個々に考え、取り組んでいるところにも、子どもたちの成長を感じ取っていた。
■首脳陣の力を結集
昨年はコーチとして参戦した大会に、初めて監督として臨む。
「僕が気負うことはないですし、むしろ一番気負っちゃいけない立場なんで。本当に平常心でいこうと思います。後ろには頼りになる岩本(輝)ヘッドもいますし、森田(一成)コーチもいますし、1人で試合を動かすわけじゃないので、彼らの力を借りながらやります。子どもたちの力をすべて発揮できるような動かし方をしてあげる、そこだけ意識しようと思っています」。
首脳陣の力を結集して大舞台に挑む玉置監督は、最後に「ここまでしっかりやれたなっていう自信があります」と力を込めた。
■意気込むちびっこ虎戦士たち
16人それぞれが成長できた約4ヶ月間(セレクションを入れると約5ヶ月間)だった。身長が伸びた選手、体重が増えた選手、体つきががっしりしてきた選手…見た目にも変化があったし、もちろん元プロに教えてもらったことで技術も格段に上がった。チームの結束力も高まった。
そして、インタビューでも大きく変わった選手もいる。もともとおしゃべりが得意な選手もいるが、話すのが苦手で言葉が出てこず、うまく伝えられない選手もいた。
しかし、最終日に話を聞いたときにはみんな自分で考え、スラスラと話せるようになっていた。やはり、自信と自覚が芽生えたということなのだろう。
そんな16人のちびっこ虎戦士たちに、《タイガースジュニアに入って成長したこと》、《大会への意気込み、どんなプレーをしたいか》、この2点について語ってもらった。
(メンバーのプロフィール⇒「『阪神タイガースジュニア2024』メンバー決定! 今年のちびっこ虎戦士16人はこんな面々だ!」)
【#0 北嶋隼士】*副キャプテン
《タイガースジュニアに入って成長したこと》
継続できる力が成長したかなと思います。努力の継続です。素振りをしたり、ノックを受けたり、そういうのが継続的にできました。
結果としてなかなか出せなかったけど、それでも継続してやりきりました。
《大会への意気込み、どんなプレーをしたいか》
優勝して、玉置監督を胴上げしたいです!(ドヤ顔)
《副キャプテンとして》
「しっかりするところはしっかりやろう」っていう、そういう声かけは頑張ってできたかなと思います。
【#1 小倉勇人】
《タイガースジュニアに入って成長したこと》
レベルの高い投手と対戦するようになって、その高いレベルの投手に対しての対応の仕方を学んで、対応できるようになったかなと思います。
《大会への意気込み、どんなプレーをしたいか》
自分のバットでチームに貢献したいです。
【#5 中野煌大】
《タイガースジュニアに入って成長したこと》
森田コーチにバットを引いてためるということを教えてもらって、それをやるようにやってから打球が伸びるようになりました。
《大会への意気込み、どんなプレーをしたいか》
試合に出たらヒットで後ろの人につなぎたいです。つなぐバッティングをしたいと思っています。
【#6 倉橋清瀬】*キャプテン
《タイガースジュニアに入って成長したこと》
切磋琢磨しながらチームでやるということと、自分で考えて行動できるというところが成長しました。
《大会への意気込み、どんなプレーをしたいか》
チームに貢献できるようなプレーをして、絶対に優勝して玉置監督を胴上げします!
《キャプテンとして》
短い4ヶ月間やったけど、とても楽しかった。移動とか練習とか自チームとは違ってきつかったけど、いろいろな4ヶ月間でした。
その中で、自分がやることはやれたと思うし、あとは本戦で優勝することが僕の仕事だと思うので、ちゃんと自分の役目を果たせるようにやっていきたいです。
【#11 福家一花】
《タイガースジュニアに入って成長したこと》
今まではただ単にバッティングとか走塁とかするだけだったけど、ジュニアでは自分の実力が全然だから、前よりももっと練習するようになったし、足りてないことがわかって練習方法も変りました。
自チームでは走塁も一番上だけど、ジュニアでは真ん中から下くらいだと思うので、走る量も増えたし、守備練習でも速い球を受けるようになりました。
《大会への意気込み、どんなプレーをしたいか》
本戦では、やっぱり一番はチームを盛り上げること。代走では積極的なプレーをして、守備ではノーエラーでチームに貢献できるように頑張ります!
【#15 関井楽永】
《タイガースジュニアに入って成長したこと》
判断力ですかね、やっぱ。たとえばカバーとか。
僕、自チームではピッチャーはするけど本格的にはやっていないので、ピッチャーのカバーであったりとか、あまりわかっていなかった。そういうところが成長したかなと思います。
《大会への意気込み、どんなプレーをしたいか》
ピッチャーだったら絶対に0点に抑えるので、みなさん、絶対に見といてくださいね。(読者に訴えかける)
【#16 佐藤颯月】
《タイガースジュニアに入って成長したこと》
1球目から積極的にストライクを入れることと、ノーアウトからランナーを出しても冷静にストライクを取れるようになったところです。
玉置監督から「ランナーを出すと焦って同じテンポで投げてしまう」と言われて、テンポをずらすには「冷静に周りを見ながら野手に声をかけるように意識したらいい」と教わりました。
《大会への意気込み、どんなプレーをしたいか》
試合に出たらチームに貢献できるように全力を尽くして頑張るし、出ないときも自分なりに最高のサポートをして、玉置監督を胴上げします!
【#23 井上和樹】
《タイガースジュニアに入って成長したこと》
上手い人たちが集まっているので、上手い人はどうやっているのかとかいろいろ見て、考えてやるようになりました。
自チームではあまり経験できないことが多かったので、いろんな面ですごく成長したと思います。
《大会への意気込み、どんなプレーをしたいか》
盗塁は全部成功させて、守備では足を使っていいプレーをしたいし、バッティングはコンパクトに。遠くへ飛ばしたい気持ちもあるけど、しっかりコンパクトに打っていきたい。ピッチングでは1回か2回くらいだと思うけど、しっかり低めに投げて抑えたい。
チームのために、自分の欲張りじゃなく、チームとしてしっかり行動できたらなと思います。
【#24 金川蓮佑】
《タイガースジュニアに入って成長したこと》
肩が強くなりました。肩が弱かったので、チューブを使ったトレーニングとか、努力をしました。
《大会への意気込み、どんなプレーをしたいか》
スタメンで出て、ヒットを打って活躍して、優勝したいです。
【#32 中川諒星】
《タイガースジュニアに入って成長したこと》
自分からの行動だったりが成長しました。
準備とかグラウンドを走るとか、これまではできなかったけど、周りを見てできるようになりました。
《大会への意気込み、どんなプレーをしたいか》
どこのチームも強いけど、もし打たれても、最後まで力強く投げきります!
【#33 宗田悠聖】
《タイガースジュニアに入って成長したこと》
速い球でも打ち返せるバッティングです。
速い球にはタイミングを早くするとか、とらえるポイントを前にするとか、森田コーチにいろいろ教わりました。
《大会への意気込み、どんなプレーをしたいか》
勝っているときも負けているときも、1本でも多くのヒットや長打を打ちたいです。
【#34 井上凛太朗】*副キャプテン
《タイガースジュニアに入って成長したこと》
周りを広く見られるようになって、チームワークの大切さを知った。
技術面では肩の強さとか、キャッチャーとしても成長できたし、あと、ちゃんと野球と向き合えるようになりました。
タイガースジュニアに入るまでは練習は何一つやっていなかったけど、周りに引きつられて、やらなやばいと思って必死に練習をするようになりました。
《大会への意気込み、どんなプレーをしたいか》
(横に大谷選手が来たので)キャッチャーとして、弥寿くんとかが暴投を放ってきても抑えたいなと思います(笑)。
あと、ヒットを…(大谷選手が「ヒットじゃなくてホームランを狙え」とツッコむ)ホームランを目指しまぁす!
《副キャプテンとして》
大会で清瀬が緊張していたりしたら支えるし、チームに対しても、みんなが気楽にできるように頑張ります。
【#35 大谷弥寿】
《タイガースジュニアに入って成長したこと》
技術的なことになるけど、球が速くなったり、できなかったことができるようになりました。
球が速くなったのは、岩本コーチに「キャッチボールで高いフライを投げたら胸のところが使えるから。(胸を指して)ここが強くなるから、球速が上がるよ」って言われて、ふわっとしたボールを高く投げるようにやっとったら速くなりました。
《大会への意気込み、どんなプレーをしたいか》
チームのためにできることをやります!
【#50 齋藤達騎】
《タイガースジュニアに入って成長したこと》
バッティングが成長したと思います。森田コーチから、重心を落としてためて打つということと、力を入れる場所を学びました。
《大会への意気込み、どんなプレーをしたいか》
チームのみんなから頼られるバッティングや守備、走塁を見せていきたいです。
【#51 阪田應介】
《タイガースジュニアに入って成長したこと》
どんなこともみんなで力を合わせて、いいチームが作れたことです。
自分自身は、チーム内のバッティングのいい人を見て、どうすれば打てるかなって考えて家で練習したことです。
《大会への意気込み、どんなプレーをしたいか》
守備では守備範囲を広くして、打席ではバントを決めなきゃいけないところで確実に決めたいです。
そして、監督を胴上げしたいです!
【#89 神田莉湖】
《タイガースジュニアに入って成長したこと》
試合中の声かけだったり思いやりだったり、それとバッティングもそうだけど、全部がレベルアップしました。
《大会への意気込み、どんなプレーをしたいか》
試合に出られる機会は少ないと思うけど、自分がやるべきことをしっかりやって活躍したいです!
■「NPB12球団ジュニアトーナメント」は明日開幕
最後に倉橋キャプテンは、「控えの選手もやることはいっぱいある。(試合に)出ている人だけじゃなく、ほかの人も出ている気持ちで臨まないと優勝はできない」とナインにハッパをかけた。
「優勝できるように!玉置監督を胴上げできるように頑張っていきましょう!」
そう声を張り上げ、ナインは「おーっ!」と呼応した。
2年ぶりの優勝をかけて、阪神タイガースジュニアは大会1日目の第4試合、福岡ソフトバンクホークスジュニア戦(明治神宮野球場)に挑む。
「NPB12球団ジュニアトーナメント KONAMI CUP 2024~第20回記念大会~」は明日、開幕だ。
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