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『週刊文春』が暴いた「“愛子天皇”極秘計画」は、天皇制の根幹に関わる深刻な問題を浮き彫りにしている

篠田博之月刊『創』編集長
『週刊文春』1月2・9日号(筆者撮影)

愛子さまの結婚をめぐる女性・女系天皇論

 『週刊文春』2025年1月2・9日号が目玉として掲載した特集記事「悠仁さまを揺さぶる“愛子天皇”極秘計画」は、ある意味衝撃的な内容だ。

 2016年、現在の上皇が「生前退位の意向」を表明した当時の安倍政権で、ある極秘計画が進行していたという。女性天皇は容認するにしても女系天皇は受け入れがたいとして、愛子天皇が誕生した時に夫となるべき旧皇族の青年を探せという指示が出されたというのだ。記事中で「事情を知る当時の政権中枢」がこう証言している。

「安倍総理はこの指示を極秘裏に、杉田和博官房副長官(当時)に命じました。血統が天皇に連なる旧皇族の男系男子と愛子さまが結婚すれば、その子どもも天皇に連なるY染色体をもつ『男系男子』となる。それならば愛子天皇が誕生した後も、男系の子どもが皇位を継承していけるという計画だったのです」

 そしてこう続く。「密命を受けた杉田氏が調査した結果、旧皇族の賀陽家に年齢が近い男子が二人いることが判明した」

 2013年、週刊誌で愛子さまの見合い相手として賀陽家の息子の存在が報じられたが、それにはこんな背景があったのかもしれない。

「該当する皇族は生身の人間」との秋篠宮発言

 証言した「当時の政権中枢」とは誰なのか、どこまで裏がとれている話なのか。そのあたりがもう少し明らかにされれば大スクープとして新聞・テレビが後追いしただろうが、今回は、それを紹介したYouTubeチャンネルだけが盛り上がって終わりそうな気配だ。ただ安倍元総理らは男系男子にこだわっていたし、その意向を受けて杉田和博官房副長官(当時)が動いたというのは、いかにもありそうな話だ。

 秋篠宮さまが2024年11月の誕生日会見で女性皇族問題について訊かれ、「該当する皇族は生身の人間」と語っていたが、当の愛子さまにしてみれば、気持ちの良い話ではないだろう。当事者の意思と別に後継問題が論じられ、政権中枢が密かに動くという経緯が、この問題の本質を映し出している。天皇制の伝統をどう守るのかという観点からすれば当事者の気持ちは二の次になってしまう。

『週刊新潮』1月2・9日号(筆者撮影)
『週刊新潮』1月2・9日号(筆者撮影)

 

 さて、その秋篠宮さまの「生身の人間」云々の言葉を引用しながら、『週刊新潮』1月2・9日号が報じたのが「佳子さま30歳 加速する『皇室離脱』願望に秋篠宮さまの胸の内」だ。こちらもある意味で深刻な問題で、記事中の関係者によれば、佳子さまは今も「皇室から出るには結婚するしかない」と語っているという。ただ、今のままであれば、眞子さんのように自分の意思で結婚相手を見つけるのは至難の業だろう。女性皇族をめぐる議論が高まりつつある中で、佳子さまについて今後どう考えていくべきなのか。関係者も頭を痛めているに違いない。

 そういえば『週刊現代』が12月28日・1月4日号から「17年ぶりの大幅リニューアル」を敢行し、本文のレイアウトを大きく変えたのだが、その号の表紙は何と佳子さまだ。女性週刊誌の場合は佳子さまの表紙は珍しくないが、いまや男性高齢者向け雑誌となっている同誌に佳子さまの写真がドーンと掲げられているのは確かに目立つ。つまり同誌の読者にとっても佳子さまというのは気になる存在になっているというわけだ。

『週刊現代』12月28日・1月4日号(筆者撮影)
『週刊現代』12月28日・1月4日号(筆者撮影)

「天皇制というそもそも非合理性を孕んでいるシステム」

 女性皇族問題を含めて象徴天皇制をどう考えるのか。本格的議論を始めるべきだという声は広がっているように見える。

 年明け1月4日に発売された『週刊ポスト』1月17・24日号が「天皇家の昭和100年」という巻頭特集を掲載している。2025年は昭和100年にあたるのだが、佐藤優さんと片山杜秀さんの対談の形で天皇制の経緯や問題点を8ページにわたって語り合っているのだ。その中で佐藤優さんがこう語っている。

「天皇制を維持したいのであれば、私は女系天皇、女性天皇といった議論は危ないと思います。なぜなら、天皇制というそもそも非合理性を孕んでいるシステムに、部分的に合理性を持ち込もうとしているからです」

 つまりそもそも天皇制というのは非合理性を孕んでいるシステムだというわけだ。その発言の前には片山さんがこう語っている。

「昭和100年は、明治以来続いた天皇制の分岐点に差し掛かっている印象を受けます」

 確かに、今、後継問題をめぐって象徴天皇制は大きな岐路に立たされている。大学でジェンダー問題を学んだ佳子さまや愛子さまは、その時代の流れと相反する天皇制の問題に悩んでいるはずだ。それは天皇制の持つ絶対的矛盾で、愛子さまや佳子さまの結婚問題はその具体的現れだ。

秋篠宮「生身の人間」発言の真意

 先に言及した秋篠宮誕生日会見での発言はこうだった。「該当する皇族は生身の人間。その人たちがそれによってどういう状況になるのか。(略)宮内庁の然るべき人たちは、その人たちがどういう考えを持っているかを知っておく必要がある」

 前出『週刊新潮』では、この発言について「秋篠宮家の事情を知る関係者」がこう語っている。「今回のご発言は一見して宮内庁に苦言を呈された格好になっていますが(略)ご発言の真意は、ご自身や佳子さまのお気持ちを把握しないまま協議を進めていく与野党の政治家、そしてその立法府から報告を受ける政府への“痛烈なご批判”に他なりません。新たな制度が作られつつある裏で、当事者が抱く思いを世間に知ってほしいと考え、あえて“身内”たる宮内庁の名を挙げてアピールされたのです」

 2025年、皇室や天皇制をめぐる議論は広がっていくのだろうか。

月刊『創』編集長

月刊『創』編集長・篠田博之1951年茨城県生まれ。一橋大卒。1981年より月刊『創』(つくる)編集長。82年に創出版を設立、現在、代表も兼務。東京新聞にコラム「週刊誌を読む」を十数年にわたり連載。北海道新聞、中国新聞などにも転載されている。日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長。東京経済大学大学院講師。著書は『増補版 ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)、『生涯編集者』(創出版)他共著多数。専門はメディア批評だが、宮崎勤死刑囚(既に執行)と12年間関わり、和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚とも10年以上にわたり接触。その他、元オウム麻原教祖の三女など、多くの事件当事者の手記を『創』に掲載してきた。

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