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STARTO・福田淳CEOが就任後に話したこと──ジャニーズ批判の急先鋒が受け皿に #専門家のまとめ

松谷創一郎ジャーナリスト
STARTOオフィシャルサイト。

 10月8日、旧ジャニーズ事務所の新会社・STARTO ENTERTAINMENTの設立が発表された。この会社のCEO(最高責任者)に就任するのは、のんや井上晴美などのエージェント会社を経営する、ブランドコンサルタントの福田淳氏だ。

 福田氏は同日に『文春オンライン』の取材に応じ、翌日には新聞・通信社(スポーツ紙を除く)と在京テレビ局の囲み取材に応じ、さらに過去に出演していた経済系ネットメディアにも出演した。

 そうした限られた取材のなかで、福田CEOはどのような発言をしているのか。昨日確認した過去の発言と現在のそれは、異なっているのか?(「STARTO・福田淳CEOが過去に語っていたこと」2023年12月14日)。

 あらためてその内容をまとめた。

▼日本の芸能界はビジネスモデルが弱い。海外のようにライセンス制じゃなく、口利きが主流の古い業界。それを近代化できるチャンス

▼マネージャーたちに「共演NG」などと絶対に言わせない。それはテレビ局が決めること。私たちは芸を磨き、オーディションに行くだけ

▼タレントがすごく強くないと(本来の)エージェント制は成り立たない。STARTOはマネジメント契約もあるハイブリッド型を想定

▲「【旧ジャニーズ新会社・福田淳社長インタビュー:前編】福田淳とは何者か?/代表を引き受けた理由/木村拓哉さんとの面談/精鋭のトップガン集団/日本型エージェントモデルとは?/バラエティよりドラマの時代」(『PIVOT 公式チャンネル』2023年12月11日)

▼なんでも自由。タレントがやりたいことをサポートするのが会社の役目。「やってみなはれ」しかない。やらない理由がない

▲「【旧ジャニーズ新会社・福田淳CEOインタビュー:後編】グローバルに売りにいく/独自の音声配信サービス/BTSに学べること/育成部門の行方/ファンクラブの今後/港区一極集中/日本のエンタメは世界で売れる」(『PIVOT 公式チャンネル』2023年12月12日)

 福田氏はまだ多くの取材を受けているわけではないが、話す内容は以前とは変わっていない。本人が日本大学芸術学部出身で映画監督志望だったこともあり、クリエイティヴィティについての造詣は深く、かつ当然のことながらコンテンツビジネスについても明るい。

 今回のSTARTOの誕生は、当然のことながらジャニーズ事務所の創業者による最悪の性加害に端を発している。だがその性加害の根をたどっていけば、ジャニー喜多川氏のクリエイティヴィティに対する軽視に行き着く。ステージで若者たちが創り出す作品を大切にしていたならば、ジャニー氏は性加害など続けなかったはずだからだ。

 今回の問題に限らず、クリエイティヴィティの軽視は日本の芸能界やポピュラー文化にいつの間にか根付いてしまった。性加害を引き起こした構造の根底にあるのはこの側面だ。ジャーナリズムもテレビ局の反省も、今回そのことに言及しないのはクリエイティヴィティを軽視しているからだろう(というか、そもそも興味がなさそうだ)。

 筆者は被害者のひとたちと頻繁にやり取りしているが、そのとき救われるのは彼らの多くがいまもエンタテインメントを愛していることだ。ステージに立っていた彼らは、音楽やドラマに関しての見識がとても深い。その話をしているととても楽しい。

 この問題は、複数のポイントから解決に結びつけていかなければならない。もちろん第一は被害者の救済であるが、コネとバーターを続けて競争力を失った日本のポピュラー文化(主に音楽とドラマ)の健全化も重視する必要がある。移籍の自由化など、健全な競争が働くことこそが再発防止にもつながるからだ。

ジャーナリスト

まつたにそういちろう/1974年生まれ、広島市出身。専門は文化社会学、社会情報学。映画、音楽、テレビ、ファッション、スポーツ、社会現象、ネットなど、文化やメディアについて執筆。著書に『ギャルと不思議ちゃん論:女の子たちの三十年戦争』(2012年)、『SMAPはなぜ解散したのか』(2017年)、共著に『ポスト〈カワイイ〉の文化社会学』(2017年)、『文化社会学の視座』(2008年)、『どこか〈問題化〉される若者たち』(2008年)など。現在、NHKラジオ第1『Nらじ』にレギュラー出演中。中央大学大学院文学研究科社会情報学専攻博士後期課程単位取得退学。 trickflesh@gmail.com

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