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STARTO・福田淳CEOが過去に語っていたこと──テレビ局や芸能界への提言 #専門家のまとめ

松谷創一郎ジャーナリスト
スピーディ社公式サイトより。

 先日、発表された旧ジャニーズ事務所の新会社・STARTO ENTERTAINMENT。CEOにはのん(能年玲奈)や井上晴美などのエージェント会社を経営する、ブランドコンサルタントの福田淳氏が就任することとなった。

 すでに新聞社・通信社(一般紙のみ)とテレビ局、そして過去に出演していた経済系ネットメディアの取材に応じており、そのひととなりが注目されている。

 そんな福田氏には強い逆風も吹いている。一報が報じられた10月末からネット右翼系のジャニーズファンが「福田はイヤだ!」と駄々をこね続け、最近ではテレビの囲み取材で被害者への言及(謝罪)をしなかったことで旧ジャニーズ批判層からも反発を呼んでいる。

 では、実際のところ福田氏はどんな人物なのか? 彼はこれまで複数の著書を出版し、自メディアでもさまざまな業界の多くの著名人と対談するなど、積極的に発信を続けてきた。その中から芸能界とメディア業界についての言及をまとめた。

▼タレントの特徴と社会的接点をいつも考える。芸能界の旧態依然としたコネクション重視のやり方は、21世紀では限界がある

▼年端もいかない若者と奴隷契約を結んでしまう芸能プロダクションのありかたは、公正取引上、非常に問題がある。優越的地位の濫用だ

▼ジャニーズ性加害問題をきっかけに、芸能プロが移籍の自由をルール化し、監督官庁はテレビ局をちゃんと指導すべき

▼アメリカがコンテンツ寄りだとするならば、日本はインフラ寄り。日本はテレビ局などが支配的で、感性が鈍くなってしまった

 本人も認めるように、福田氏はジャニーズ事務所をはじめとするこれまでの芸能界やそれを取り巻くメディア企業に対し、極めて批判的な立場だった。

 ジャニーズ事務所の性加害問題についても、同様の厳しい姿勢だった。つい最近(おそらく9月中旬)の段階でも、「旧来の事務所は被害者救済に専念して、新しい会社は負の遺産を引き継がないで、日本のエンタメを引き続き牽引していってほしい」とも述べている(『J-CASTニュース』2023年10月1日)。まさか自分が新会社を引き受けるとは思っても見なかっただろう。

 福田氏のこうした過去の発言は、STARTOのCEO就任後も大きな変化はない。しかし、その先はかならずしも平坦ではない。最大の難関は運転資金の調達だが(「STARTO社が抱える課題、そして目指す未来」2023年12月9日)、古い商慣習を変えたくない業界人から強い反発を受けることも予想される。

 なにより、保守的かつ閉鎖的だった旧ジャニーズ事務所と180度異なるSTARTO社の姿勢に対し、タレントだけでなく社員がどこまで馴染めるかも未知数だ(筆者はおそらく旧会社幹部の一部は割れると見ている)。

 福田氏がこの逆風にどう対峙していくのか今後も注目だ。

ジャーナリスト

まつたにそういちろう/1974年生まれ、広島市出身。専門は文化社会学、社会情報学。映画、音楽、テレビ、ファッション、スポーツ、社会現象、ネットなど、文化やメディアについて執筆。著書に『ギャルと不思議ちゃん論:女の子たちの三十年戦争』(2012年)、『SMAPはなぜ解散したのか』(2017年)、共著に『ポスト〈カワイイ〉の文化社会学』(2017年)、『文化社会学の視座』(2008年)、『どこか〈問題化〉される若者たち』(2008年)など。現在、NHKラジオ第1『Nらじ』にレギュラー出演中。中央大学大学院文学研究科社会情報学専攻博士後期課程単位取得退学。 trickflesh@gmail.com

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