日本・中国・韓国・台湾の東アジアの出生率は低いが、アメリカでも急減しているアジア系の出生率
米国の出生率動向
先進諸国は全世界的に出生率低下である。日本をはじめとする韓国、中国、台湾などの東アジア諸国はとりわけ低い出生率である。
一方、米国は今まで割と高い出生率をキープしていたが、CDCの統計によれば、2020年の合計特殊出生率は1.64と1950年以来の過去最低で、2021年に1.66となったもののその回復は微々たるものだった。
それでも、東アジア諸国の出生率と比べればまだまだ高い水準にあると言えるのだが、米国はご存じの通り移民の多い国である。人種別の出生率を見るとどうであろうか。
CDC統計より、2016年から2021年までの人種別合計特殊出生率の推移をまとめたものが以下である。
どの人種も全体的に低下基調にあるのだが、それでも白人系より黒人系やヒスパニック系の出生率は高い。特に、ヒスパニック系は2021年でさえ1.89という高い値を示しているし、何より2017年という最近まで2.0以上であった。
しかし、このグラフでもっとも注目されるのが、アジア系出生率の大きな低下である。2021年は1.35という値で、日本とほぼ変わらない。2016年に1.69もあったことを考えると、その減少幅は大きい。
米国におけるこのアジア系の出生率の急減と、東アジア諸国の低出生率とは関係あるのだろうか?
東アジアの出生率
ここで、米国アジア系と日本、中国、韓国、台湾などの東アジア諸国の出生率とを一覧にしたグラフを確認してみよう。
米国アジア系の急減ぶりもそうだが、それ以上に中国の急降下ぶりがすさまじい。中国の出生率はすでに日本より下で、2021年は1.16とこのままの勢いだと来年には台湾より下がり、韓国同様1.0を切るかもしれない。
米国アジア系と中国の近年の下降曲線が似ているが、これは米国の中国系移民の出生率が低下しているのだろうか?
米国の元の国籍別の数字はないので詳細はわからないが、アジア系全体が先進諸国の中でも出生率の低下が激しいという共通点があるのが興味深い。
ちなみに、国連の推計によれば、中国の人口はこのままの自然増減で推移すれば、2100年には今の人口14億から半減の7億にまで低下するとされている。日本も1.2億から6000万人と半減すると推計されているが、元の人口の絶対数が大きいだけに、中国の人口減少のインパクトは大きい。
日本の出生率の今後
日本は、少子化と大騒ぎするが、なんだかんだ今のところは低いなりにキープしていると言えるだろう。出生の元となる婚姻数が激減している中で、出生率をキープしている要因は、結婚している夫婦の出生数が今はそれほど減っていないからである。
先ごろ発表された社人研の将来推計においても、中位推計における今後の日本の出生率見込みは1.33-1.35とみている。が、これはかなり希望と政治的な思惑を含んだ調整数字だろう。私の考えとしては、よくいって1.25であり、1.30をキープするのは容易ではないと考えている。
なぜなら、この合計特殊出生率というのは、単に今結婚している女性が子どもを産んだだけではあがらないからだ。この値の対象となる分母は未婚者も含む15-49歳の全女性であり、未婚率があがってしまえば自動的に出生率は下がってしまう。そして、女性の未婚率が改善されると言い切れる材料もほとんどない。
とにかく、出生率をあげるためには、今いる母親が産む数を増やすだけでは到底実現できない。新たに第一子を生む婚姻が増えなければ、今後出生数も減るのは当たり前の話である。子どもの数0人→1人をまず作らなければ、第2子も第3子もない。
韓国や中国の出生率が激減しているのは、ほぼ婚姻数が激減しているからだということで説明がつく。子育て支援一辺倒の少子化対策は的外れと繰り返し述べているのはそういうことである。
ところで、2023年の人口動態速報において、1-2月の出生数は前年比5%減にとどまっているのに対し、婚姻数は前年比21%減少となっている。どうやらこれで2024年も出生が増えることはないようである。
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