日本が学ばなければならない「韓国の少子化対策の失敗」出生率激減の根本理由
的外れな少子化対策議論
相変わらず、与野党間で「少子化対策の予算倍増」がどうだ、という話ばかりが取りざたされるが、何度もいうように、政府支出の予算を増やせば子どもの数が増えるというものではない。
「家族関係政府支出のGDP比」をあげることと、出生率があがることとは何の相関もないことはこちらの記事で検証済みの話である。
ちなみに、家族関係政府支出とは、公的な社会保障給付の支出額のうち家族関連に含まれるもので、具体的には、子供手当、寡婦手当、出産・育児休暇手当、保育支援に相当する。それのGDP比である。
→「異次元の少子化対策」を検証する~子育て支援は出生率に影響するのか?
しかし、どんなにエビデンス付きでこういう記事を出しても、「そこに触れられたら死ぬのか?」と思うぐらい、政治家は与党も野党も一切触れないのが不気味で仕方がない。
百歩譲って、「予算をつければ出生率があがる」のが確実ならば、「どうぞ予算をつけてください」と言いたいところだが、実際予算をつけても効果はないことはすでに日本だけではなく、全世界で証明済みの話である。出羽守の好きなフランスでさえ例外ではない。
不思議なのは、なぜ効果のないことに意固地に金をかけ続けようとするのか?という点だ。もし、民間の会社であれば、何十年も投資して一向に成果を出さないプロジェクトに対して「成果が全然出ないな。ようし!予算倍増だ」とはならない。そんな社長がいたら経営者失格だろう。
韓国の出生減が止まらない
ところで、日本の出生率よりも低いどころか、出生率世界最下位の韓国がまた出生率の最低記録を更新したようだ。2022年の韓国の合計特殊出生率は、0.78となってしまった。
日本と韓国の最近の出生率推移をみると、1990年代まではずっと韓国の方が日本を上回っていた。2002年に逆転されて以来、韓国は20年以上日本を超えられていない。
韓国は、こんなに出生率が低いのだから、さぞ家族関係の政府支出は日本より低いのだろうと思うかもしれない。
確かに、最新の2019年の実績でいえば、家族関連の社会支出GDP比は、日本1.73%に対して、韓国は1.37%と低い。しかし、もしこの支出割合の多寡に応じて出生率が変わるのだとすれば、2国間のGDP比と出生率は同じくらいの差があるはずである。が、実際はそんなことはない。
2019年値で対比すれば、支出比は日本の方が1.26倍であるのに対し、出生率は1.47倍である。むしろ、韓国は日本より投じた予算分ほど出生率はあがっていないことになる。
韓国の少子化予算推移
より具体的に見ていこう。
韓国の家族関係支出GDP比は、2004年まではほぼまったくないに等しいレベルで推移していた。ここの部分に予算を投じていなかったわけである。
しかし、皮肉なことに、予算をかけていなかった時代ほど出生率は高いのだ。2004年以降、急激に毎年予算を増やしているものの、増やせば増やすほど出生率は低下している。これは紛れもない事実である。
韓国では、2006年以降だけでも合計28兆円の予算を投入しているが、そのほぼ全部は「子育て支援」対応である。それでこの出生率低下であるのだから、子育て支援がいかに出生増には効果がないことかがわかるというものだ。
誤解のないように、この予算を増やせば出生率が下がるなどという因果を言いたいのではない。しかし、少なくともこの予算を増やしたところで出生増にはなっていないことは事実だ。子育て支援は否定しないが、それを拡充しても出生増にならないということを何度も申し上げているのはそういうことだ。
韓国出生減の要因
では、なぜ韓国の出生率は世界最下位まで落ち込んでいるのか?
答えは単純明快である。婚姻数が減っているからだ。
これは日本にも中国にも言えることだが、東アジア圏で出生率があがらない原因はほぼ婚姻数が減っているということで説明がつく。
韓国の婚姻数(人口千対)は、1993年まで9.0もあった。それが、2020年には4.2と半減以下にまで下がった。日本で婚姻率が9.0を最後に上回ったのは1974年である。2020年の日本の婚姻率も4.3と韓国とほぼ同じであるが、日本が46年かけて下がったレベルを韓国は27年で到達してしまったことになる。
この急激な婚姻減が、現状の韓国の低出生率の根源である(韓国の婚姻が激減した理由についてはまた別記事で書く)。
プラス1人出産にはならない
なぜ、児童手当などを増額しても出生数があがらないかは、韓国に起きた事実を見れば答えがわかる。児童手当が増額されても、もう一人を産むという行動にはならず、今いる子の教育費の増額に費やされるからだ。事実、韓国の子の教育関連費は諸国と比して抜きんでて高い。
→「子どもにお金がかかりすぎ」少子化が進む日本と韓国だけ異質な教育費負担
何度もいうが、今、子育て世帯にプラス1人の子を奨励するより、子0人→1人となる婚姻数をひとつ増やした方が全体的に出生は多くなる。結婚すれば計算上最低1.55人の子が生まれるからだ。
そこを無視し続けるなら出生減はもっと加速するだろう。合計特殊出生率を下げているのは、出産数の減少ではなく、未婚率の上昇なのである。
日本が少子化対策で参考にすべきは、フランスでも北欧でもなく、反面教師としての韓国である。
韓国の少子化が婚姻数によるものであることを正確に把握することは大事になるが、このまま的外れな政策ばかりしていると、日本の出生率もやがて韓国並みに1.0を切るかもしれない。
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