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給料は増えない、税や社会保障費はあがる、おまけにインフレまでやってくる地獄

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:イメージマート)

300万も稼げないのか?の声

前回の記事(20代後半で年収300万円にも満たない若者が半分もいる経済環境では結婚できない)にツイッター上で多くの反響をいただいた。

「そんなに少ないの?」という驚きの声も多く、「嘘でしょ?自分含めて周りは20代でもみんな300万は楽に超えてる」という感想もあった。

記事内に明記した通り、これは全国値なので、東京だけに限定すればプラス100万でみないといけない。

たとえば、東京で大手の総合商社やマスコミ等に就職したなら、新卒でも初年度年収は余裕で300万円を超えるだろう。しかし、仮に東京であったとしても、飲食業やサービス業などの場合、大卒であっても初年度300万未満であることも少なくない。業種によっても大きく変わるからだ。

写真:イメージマート

平均値の罠

しかし、いずれにしても、国税庁民間給与実態調査によれば、全年齢の2019年給与実績でさえ平均436万円でしかない。20代後半の男性だけだと平均403万円だが、それはあくまで未婚も既婚も合算した金額である。何度も言うように、年収は男性の場合、未婚より既婚の方が多い。

未婚だけに限定した20代後半の平均年収は、民間給与実態調査からは算出できないので、前回同様2017年の就業構造基本調査から計算すれば、約314万円程度である。

そして、これはあくまで平均値でしかない。一部の高所得者がいれば平均はあがる。前回の記事通り、49%が300万円未満ということは、中央値では300万円ギリギリといったあたりに落ち着く。ちなみに、就業構造基本調査における年収とは手取りではなく額面である。

私の周りという同類縁のバイアス

結婚は同類婚が増えている。年齢や学歴、収入などが同じようなレベルの者同士が結婚するということである。

それは、同類が出会うきっかけが多いからだ。自分の友達を見ても、たとえ勤務先が違っても大体同じような収入の人が多いだろう。友達の友達もまた同じだ。職場での出会いならなおさらだろう。まさに「類は友を呼ぶ」し、「類としか結婚しない」のである。

自分の周りは全員300万円以上あるという人は、そういう同類縁でつながるし、反対に自分の年収が200万円台なら、また周りもそういう人たちになる。

環境が縁を作るというのはこういうことである。

写真:アフロ

「金がない」は言い訳

さて、前回の記事に対しては「金がないから結婚できない、なんて所詮言い訳だ。愛があれば結婚できる」という反論も寄せられた。確かにそういう人もいるのだろう。しかし、それはあなたの考えであって、それが全員に共通する考えではない。「金がないから結婚できない」と考えざるを得ない人もいるのだろう。

初婚男性の年収のボリュームゾーンは300万円台であるのは事実であることは何度もご紹介しているが、この300万円を超えるかどうかという壁が、結婚への道を踏み出せるかどうかの分岐点になっていることは確かで、それが「300万円の壁」と言われる所以なのである。

互いに300万以上同士なら結婚に踏み切れても、250万円と250万円で結婚すればいいじゃないか、とは現実なかなかなっていないのである。

実際、恋愛はともかく、結婚は経済生活である。反対に、結婚生活を破綻させる理由の多くも経済問題である。愛があれば結婚はできるのかもしれないが、金がなければ結婚は持続できないのだ。

20年前より減った可処分所得

仮に、20代後半で300万未満でも、30歳になれば必ず給料はあがるという「約束された未来」があるのならばまた行動も変わるかもしれない。高度成長期とはそういう未来がみんなに描けていた。だから、皆婚に邁進できたのである。

ところが、現代の若者には「明日は今日よりよくなる」という成功体験がない。それどころか「明日は今日より悪くなる」という事実ばかりが提示される。

国民生活基礎調査から、29歳以下の可処分所得を2019年と1999年とで比較してみよう。

無残な事に、20年前の20代よりほぼすべての年収帯でマイナスとなっており、その分が全部100万未満へと移行している。

平均給料は30年あがっていないといわれるが、可処分所得はむしろマイナスなのだ。これは、賃金があがっていないにもかかわらず、税や社会保障費、加えて消費税などの非消費支出がステルス的にあがっているからである。

29歳以下の可処分所得の中央値は、1999年は269万円だった。しかし、20年後の2019年は逆に236万円と12%以上も減少している。それだけ20代のうちに「300万円の壁」を超えられない層が増えていることの証であり、初婚数が減るのは当然の結果かもしれない。

表面上、額面給料があがったとしても、なんだかんだ引かれて、使えるお金が減るのでは、若者が未来に期待なんかできないのは当たり前だ。

ただでさえ、全ての分野でインフレが起きている。ウクライナ戦争の影響を受けるのはこれからであり、インフレはさらに加速するだろう。

結婚どころではない。まさに今月を生きるのに精いっぱいだ。若者はいったい何と戦わされているのだろう。

なお、インフレで食費があがるのは、若者に限らず日本人全体の幸福度をさげるのではないかと危惧する。美味しいものを食べることは日本人にとって何より大事だからだ

日本人がセックスより気持ちいいと感じる「美味しいものを食べる」ことへの欲望

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※記事内グラフの無断転載は固くお断りします。

独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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