都道府県別20-34歳の歪な未婚人口男女差「うちの地元は男ばっかで結婚できない」
未婚男が余る
男女の人数は同じではない。
総人口で比べれば、寿命の長い女性の人口の方が多くなる。しかし、未婚人口だけで比べれば、逆に男の方が430万人も多い。
そうなる理由は、そもそも出生男女比が女100に対して男105と男の方が多く生まれることに加え、皆婚を支えていた社会的結婚お膳立てシステムが崩壊して以降、離婚再婚を何度も繰り返す時間差一夫多妻男が初婚女と再婚するパターンが多いため、未婚男がその割を食っているからだ(参照→未婚男性の「男余り430万人」の実態~もはや若者ではなくおじさん余りへ)。
この「未婚の男余り現象」は、地域によっても差がある。
以前、単純な20代男女の人口差について書いたが(参照→ますます結婚がきつくなる「地方の男女マッチング不全」20年間で大変化した20代の男女比格差)、今回はより精緻化して、未婚人口での男女差を見ることにする。また、結婚という観点から、初婚の大部分を占める20-34歳の年齢帯で見ていくことにする。
男余りトップ5
2020年の国勢調査配偶関係不詳補完値から、都道府県別の20-34歳での未婚男女比についてMAPにすると以下の通りである。ちなみに、全都道府県男余りで未婚女が余っているエリアはひとつもない。
その上で、全体の傾向としては、丁度関ケ原あたりを境目として、東日本の方が西日本より男余り度数が高い。特に、福島、茨城、栃木の北関東周辺が突出して高い。
未婚の男女比が高いトップ5は以下である。小数点第3位以下の数字で順位付けしている。
1位 福島県1.40
2位 栃木県1.39
3位 茨城県1.39
4位 富山県1.36
5位 群馬県1.35
5位までは35%も男の方が多いわけで、万が一その地域にいる未婚女性が全員結婚したとしても35%は相手がいないということになる。
製造業が多い所は男余り
このうち、茨城と栃木は20年前も同じような比率で、歴史的にも男余り県である。それは、茨城と栃木に大企業の工場が多くあり、特に20代男性が多く流入してきたからという理由である。ちなみに、2000年のデータでいえば、男余り全国1位は神奈川県であった。こちらも京浜工業地帯があったという理由が考えられる。その意味では、愛知も1.31で高い。
言い方をかえれば、製造業が盛んな地域ほど男余りになりやすい。
そうした就業構造の特性に加えて、20代の女性か流出しているかどうかが大きく作用する。
茨城、栃木の北関東は首都圏にも近く、魅力的な働き場を求めて女性が東京へ流出する。若い女性が希望する美容系やアパレル、飲食宿泊系など第三次サービス業の仕事が地方には少ない。福島、群馬、富山も同様だろう。東日本の女性は主に東京に一極集中するからだ(参照→各都道府県別20代男女の東京流出率でわかる「関西男と東北女の行く道」)。
それを裏付けるように、東日本の中では東京がもっとも男余り率は低い。
同様に、西日本中から若者が人口集中する大阪、福岡なども低い。京都が低いのは大学生が多いためである。
西日本も安心ではない
しかし、だからといって、西日本が安泰ということではない。
北関東および東日本はずっと男余り現象が続いているが、2000年との比較をすると、むしろ西日本の中国四国、九州地方の男余り率が上昇している。それでもまだ東北や北陸に比べれば低いが、この20年間の上昇率が続けば、いつかは追いついてしまうかもしれない。
反対に、かつては高かった、埼玉、千葉、神奈川などの首都圏が大きく減少している。他に、減少しているのは、大阪、兵庫、福岡、愛知、宮城など大都市がほとんどである。これは、東京に限らず、仕事のある場所へ女性が流出しているからだろう。
求められるのは魅力的な産業の創出
何度もいうように、出生数が激減しているのは若者の婚姻数が減っているからであり、地方において婚姻数が減っているのは、そもそも若者の人口流出に大きな影響を受ける。なぜなら、婚姻も出生も完全に若者の人口に依存するものだからだ。
ちなみに、大学などの学校の誘致はあまり効果はない。あくまで若者が移動するのは仕事を求めてである。
各自治体は、若者だけではなく全体人口の減少という悩みも抱えており、あの手この手で移住計画を打ち出してはいるが、全体の流入を図ることも大事だが、そもそも若者の流出を食い止めることの方が最優先ではないだろうか。
また、若者の婚姻増、出生増を目指すのであれば、取り組むべきは、婚活支援などではなく、企業の誘致や新たなサービス産業の創出(たとえば地元ならではのグルメ産業)などで、若者が「働きたい」と思える環境を作ることだろう。
統計を観察すればわかることだが、20代を地元で過ごした若者はその後よほどのことでもない限り、遠い距離の移動はしないものである。
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