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2022年の婚姻数が微増したが、それは東京など所得の高いエリアが増えているだけ

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:アフロ)

婚姻数が増えたといっても…

9月15日に、2022年の人口動態確定報が公開された。婚姻件数は 50 万 4930 組で、前年の 50 万 1138 組より 3792 組増加した。婚姻数が前年を上回ったのは2019年の令和婚効果以来のことである。

しかし、これは長引くコロナ禍の中で、2020-2021年に婚姻するはずだったカップルの「結婚の後ろ倒し限界」によってもたらされたものであり、決して婚姻数が上向きになったという話ではない。

その証拠に、2023年6月までの半年間の速報では、すでに前年比7%減で推移しており、私の予測では、2023年婚姻数は46.8万組程度へとまた減少するだろう。

それだけではなく、2020-2022年の3年間にわたる若者に対する「恋愛ロックダウン」政策で、若者の男女の出会い機会を奪ったがために、2024年以降の婚姻数はもっと減るだろう。

なぜなら、若者の恋愛結婚における出会いから結婚までの交際期間中央値は約3年だからである。本来、2023年に結婚するはずだったカップルは、2020年に出会っていたはずだった。それが「恋愛ロックダウン」によって失われたのである。

2023年以降、コロナの規制はなくなり、通常モードへと移行したものの、この「失われた3年」のツケは大きいものとなるだろう。

2023年以降に出会ったカップルが実際に婚姻数という形でデータに反映されるのは2026年以降となる。つまり、2023-2025年の婚姻数は大幅に停滞する可能性があるのだ。

都道府県別の婚姻数増減

冒頭に書いたように、2022年婚姻数は前年比0.7%増と微増はしたが、全国的に同じように微増したわけではない。むしろ、大多数のエリアは激減している。

都道府県別に、2021-2022年の婚姻数の増減率をたかいところから順に並べ替えたのが以下のグラフである。

婚姻数が前年を超えたのは、東京、神奈川、大阪、千葉、埼玉、京都、茨城、栃木、鳥取の9都府県のみである。石川と岡山は前年と同じで、残りの36道県はすべてマイナスだ。

プラスのところもメインは東京であり、こちらの過去記事(参照→合計特殊出生率全国最下位でも「東京だけが唯一出生数を増やしている」という事実)にも書いた通り、婚姻率が常に全国1位である東京をはじめとした首都圏だけが結婚できているということになる。裏返せば、東京以外の地方エリアは相変わらず婚姻数は減り続けている。

ちなみに、グラフにはないが、東京23区だけを抽出すれば、前年比9%増である。東京の中でも23区という所得の多いところだけが婚姻数が増えているのである。わかりやすくいえば、所得の高いところでしか結婚は増えていないのである。

中間層の婚姻離れ

「失われた30年」などといわれるが、参考までに、1995年と2020年の全国1700超の市町村別の課税所得の増減率と、2020年の所得との相関を示したのが以下のグラフである。

青●がここ25年で所得が増えているところ、赤×が減っているところである。

圧倒的に、いわゆる中間層の所得だけが減っていることがわかる。減っているところが多すぎて、赤×でほとんど塗りつぶされてしまった。

増えているところもそのほとんどは東京23区であり、ファナックのある忍野村、ホタテ御殿で有名な猿払村、NHKの番組で「日本一裕福な村」と紹介された更別村など一部の特殊な事情のある地域を除けば大都市だけが所得が増えていることになる。

ちなみに、もっとも所得の高い東京港区は婚姻数も出生数も増やしている

未婚や非婚の原因が経済問題であることを頑なに認めようとしない界隈がいるのだが、「結婚も出産も金の問題である」といい加減認めたらどうだろう。

中間層の不安と諦観

何度も言っていることだが、婚姻数が増えなければ出生数は増えない。

そして、婚姻数がなぜ減っているかと言えば、若者の経済環境がまったく改善されないどころかかえって悪化しているからだ。なぜなら、増税や社保料負担増で彼らの手取りが年々減らされているからである。

SNSなどで目立つ、声も大きければ、承認欲求も大きい「恵まれた環境下の若者」は全体のごく一部でしかない。運よく大企業に就職できた上位3割の層には無関係な話かもしれない。年収の高い者同士、経済同類婚によってパワーカップルになればいいのではないか。

写真:アフロ

しかし、見るべきは、そうではない残りの7割の方である。

前少子化担当大臣が、結婚を希望する若者とともに、中央区のタワマンに住む夫婦に話を聞きに行くなどという的外れなことをやっていたが、連れていかれた若者たちからすれば「中央区のタワマンに住めるような経済力があるなら苦労はしない。一体、僕たちは何の自慢話を聞かされているのだろう」と思ったのではないか。

かつて日本の婚姻を形成していた人口ボリューム層である年収300-400万円の若者が、現在の境遇に対する不安と将来への諦観によって、ことごとく結婚できなくなっているのが現状なのである。

経済問題も含めて、若者に対する「結婚への負のお膳立て」が多過ぎるのである。

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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