【Yahoo!ニュース 個人】9月の月間MVAとMVCが決定
■Yahoo!ニュース 個人、9月の「月間MVA(Most Valuable Article)」と「月間MVC(Most Valuable Comment)」が決定しました
社会の課題を伝えている・議論を喚起している・読者の心に響く……などの観点で選出している「月間MVA」。記事のアクセス数ではなく、目指す世界観「発見と言論が社会の課題を解決する」を体現している記事を、編集部を中心とした運営スタッフがアナログで選出しています。あわせて、すぐれたオーサーコメント「月間MVC」も選出しました。厳選5本の記事と1本のオーサーコメントを、筆者の受賞コメントとあわせてご紹介します。
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9月のMVA
■「電話も繋がらない、テレビも見られない、情報が手に入らない」停電続く千葉県鋸南町の住民のいま(堀潤)
筆者による受賞コメント:Yahoo!ニュース個人を通じて、報道が足りない現場の声を多くの人たちに届けることができたことに感謝しています。関連記事を含めて大変多くの方に読んでいただきました。ツイッターでは台風から1週間余りで2000万インプレッションとなりました。記事の拡散に力を貸してくださったみなさんにも感謝しています。一方、申し訳ない気持ちもあります。上陸は9日、10日の午後に千葉県鋸南町を始め、各地で孤立している方々やそのご家族からSNSを通じて連絡をいただき、翌朝現場に向かいました。被害の深刻さは想像以上でした。台風15号の初動の遅れは、国や自治体だけではなくメディアも検証されるべきです。私ももう一日早く現場に入っていればと自責の念に駆られています。そして、今、再び台風19号が接近しています。屋根の復旧が追いついていない集落がいくつもあります。高齢化率の高い地域では、お年寄り同士が助け合って行かざるを得ない「老老共助」が現状です。農業被害も千葉県全体では東日本大震災の規模を上回っています。継続した支援が必要です。義援金の受付も行われています。ぜひ皆さんのお力を再びお貸しください。引き続き市民の皆さんと一緒に現場から発信していきたいと思います。この度はありがとうございました!
(堀潤)
選出理由:千葉県に甚大な被害をもたらした台風15号。直撃2日後に南房総を中心に取材し、ライフラインが寸断されている惨状や住民の悲痛な声を映像とともに報道しました。災害取材が豊富で、多くの情報が集まってくる筆者ならではの「今」を伝える記事です。
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■盛り上がるラグビーW杯 熊谷が見せた驚異的な大量輸送と「神対応」(大島和人)
筆者による受賞コメント:9月20日に開幕したラグビーのワールドカップが、大きな盛り上がりを見せています。選手や監督の奮闘、競技の魅力は既に多くの方へ伝わっているはずです。しかし今回はグラウンド外のストーリーを題材にしました。いち観客として軽い気持ちで訪れた9月24日の熊谷ラグビー場でしたが、そこで目の当たりにしたボランティアスタッフの素晴らしい対応、効率的な大量輸送に大きな感銘を受けました。裏方として尽力する「無名の人々のスーパープレー」が、私にこの記事を書かせました。選手の何十倍、何百倍というボランティアスタッフがこの大会を支えています。また組織委員会や行政のプロフェッショナルたちは長い年月をかけて準備を重ね、困難な開催条件をクリアするための知恵を出していました。彼らは選手たちと同じくワールドカップの「ヒーロー」「ヒロイン」です。
(大島和人)
選出理由:会場へのアクセスが悪いことで知られる熊谷駅。しかしラグビーW杯では観客輸送がスムーズなことを聞きつけた筆者は、現地に足を運び、組織委員会や地元の人が一体となって様々な工夫をしていることを伝えました。同種の悩みを抱える駅や自治体にも参考になる記事です。
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■大松尚逸、引退!―稀代の勝負師が福井で静かにユニフォームを脱いだ(土井麻由実)
筆者による受賞コメント:NPBでは面識のなかった大松尚逸選手とBCリーグの現場で接するようになり、その魅力に引き込まれました。刻んできた実績はもちろんですが、野球への情熱、知識、そして取り組む姿勢…なにもかもが尊敬させられるものでした。またその“引き出し”の多さで、伸び悩む若手選手たちの意識をみるみる変えていくところを目の当たりにし、理想の指導者像を見た思いでした。知り合って日も浅いわたしが、このような引退記事を書かせていただくことができたのは非常に光栄で、その記事で受賞できたことはこの上ない喜びです。今後は指導者として活躍されるであろう大松氏へのはなむけとして、この受賞をご本人にも報告しようと思っています。
(土井麻由実)
選出理由:ロッテ、ヤクルトで活躍した大松尚逸が現役引退を発表した日に公開された記事です。筆者は取材活動を通じて、引退までの過程を描きました。また、選手生活を終えるプレーヤーの境地にも迫り、大松選手の人間性を感じることができる記事です。
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■ブーム終焉?カプセルホテル事業者の悲鳴!活況から一転「予約が入らない」(瀧澤信秋)
筆者による受賞コメント:月間MVAに選出いただきましたことこの上ない光栄に存じます。ホテルはイメージを大切にするビジネスだけに、ホテルジャーナルの世界でもポジティブな情報発信がほとんどです。過度に盛られた情報も氾濫する中で、時に忌憚なき情報は消費者利益に資することもあります。今回はカプセルホテル業界の声にフォーカスしましたが、今後も利用者目線のホテル評論家として様々なカテゴリーの宿泊施設について、ニュートラルな視座で情報発信していきたいと思います。
(瀧澤信秋)
選出理由:他業界からの参入も相次ぎ、巷間で話題を呼ぶ「カプセルホテル」。一見順調に見えますが、実はその勢いに陰りを見せ始めているようです。苦境の中でも戦う現場の事業者の声も伝えながら、見かけだけではわからないホテル業界の現在を伝えてくれました。
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■千葉大停電の遠因か。倒木処理の難しさと山武杉の悲劇を振り返る(田中淳夫)
筆者による受賞コメント:千葉への台風襲来直後、現場に入る機会を得た。そして事態の深刻さと処理の困難さに気づく。とくに倒木処理は、林業でも最大級の危険な作業だ。記事を通して現場の苦労と防災にも関わる林業の役割に気づいていただければ幸いである。
(田中淳夫)
選出理由:9月の千葉大停電の遠因となった「倒木」に着目した記事。倒木処理の難しさや、スギの病気という千葉県特有の事情を解説しています。森林ジャーナリストという自身の専門性を生かした、ニュース個人ならではの発信です。
9月のMVC
■『【バレー】日本、石井・途中起用の鍋谷が奮闘し、世界女王セルビアをフルセットの接戦で破る W杯女子2019』の記事へのオーサーコメント(柄谷雅紀)
筆者による受賞コメント:このたびは名誉ある賞に選出頂きましてありがとうございます。記者という立場で心がけていることは「事実を正確に伝えること」です。セルビアは確かに昨季の世界選手権を制した国で世界ランキングも1位でした。しかし、今大会は主力の多くが来日していません。そのことを伝えずに「世界女王を破った」と報じるのは事実をきちんと伝えてない上、日本とセルビアの双方に対してのリスペクトを欠くものだと思いました。正確な情報を伝えたいと思い、あえて「違和感がある」という表現を使いました。ただ、それでも苦戦続きだった日本がセットカウント0―2からセルビアに逆転勝ちをしたことは評価できることなので、そのことも伝えたいと思い、表現と構成に腐心したコメントでした。あおりすぎずに、事実を正確に伝え、価値を正しく評価する。これを肝に銘じて、これからもスポーツの魅力を伝えていきたいと思います。
(柄谷雅紀)
選出理由:W杯バレー女子の対セルビア戦で「世界女王を倒した」と表現したニュースに対して「違和感がある」と率直な指摘をしつつ、試合を分析しました。スポーツ報道における誇大な表現を冷静にとらえることを教えてくれたコメントです。