カルビは部位の名前じゃない? 今さら聞けない焼肉の秘密
暑い夏こそ焼肉でパワーをつけよう
29日は「肉の日」ということで、牛肉を食べる人も多いだろう。牛肉は人間の身体を形成する上で不可欠な「タンパク質」はもちろん、エネルギー源となる「脂質」や、ビタミンB2やB12などの「ビタミン」、さらには鉄分や亜鉛などの「ミネラル」などを豊富に含む食材だ。連日猛暑が続き食欲も減退する夏にこそ、パワーをつけるべく牛肉を食べよう。
効率良く手軽に牛肉を食べるならやはり「焼肉」がオススメだ。老若男女に愛される焼肉は、今や国民食と言っても良いほどに私たちの日常生活に浸透している。多くの人が焼肉を楽しんでいる一方で、焼肉について意外と知らないことも多いのではないだろうか。今回は知っているようで知らない「焼肉の部位」について考えてみよう。
焼肉店は独自の部位名をつけられる
焼肉の部位と言えば「カルビ」「ロース」「タン」「レバー」などを思い浮かべる人が多いだろう。しかし、最近では聞いただけではどこの部位なのか分からないものも少なくない。それは近年の焼肉店のメニューが驚くほどに細分化されて、独自の名称がつけられているからだ。
スーパーや精肉店で牛肉を販売する場合は、国がJAS法(日本農林規格等に関する法律)で指定した11の部位名(「ネック」「かた」「サーロイン」「ヒレ」など)での表示義務があるが、焼肉店の場合は自由に名前をつけることが出来る。言わば、焼肉店の部位表記はある種メニュー名に近いものがある。
「カルビ」は部位の名前じゃなかった?
例えば「カルビ」は朝鮮語で肋骨を意味する言葉で、バラ肉全般を指す通称やメニュー名であって正確には部位名ではない。国の指定する部位名で呼ぶならば「ばら(かたばら・ともばら)」が正しい部位の呼び方となる。
さらに最近の焼肉店ではメニューが細分化され、これまで「カルビ」「上カルビ」と呼ばれていた部分は、「トモバラ」「カタバラ」や「ゲタ(中落ち)」「三角バラ」「カイノミ」など、細かく分けられるようになっている。
また一昔前に「ソフトカルビ」と呼ばれていたメニューは現在の「ハラミ」のこと。しかも「ハラミ」は横隔膜の筋肉部分の名称だが、正肉ではなく内臓肉つまりホルモンとして分類されている部位だ。
「シャトーブリアン」は人の名前だった?
「究極の赤身」として知られる高級食材「シャトーブリアン」。最近ではステーキ専門店だけではなく、焼肉店でも見かけることが増えてきたが、シャトーブリアンとは牛ヒレ肉(テンダーロイン)の中央部のこと。あまり動かすことのない部位のため、赤身でありながら肉質がとても柔らかくきめも細かい、牛一頭からおよそ600g程度しか取れない稀少な部位だ。
「ヒレ」はフランス語の「Filet」が語源だが、「シャトーブリアン」は19世紀フランス革命時代の政治家でもあり作家の『フランソワ=ルネ・ド・シャトーブリアン』から名付けられている。美食家でもあったシャトーブリアンが、この部位を好んで食べていたことから名付けられたと言われている。
同じくステーキでも人気の「サーロイン」の語源は諸説あるが、ロース肉を意味する英語「loin」に爵位である「Sir」をつけたという説が一般的に知られている。イギリス国王がこの部位を食べて感動して、Sirの称号を与えたことから「サーロイン」の名前がついたと言われている。
英語由来や形状由来の名称も?
外来語由来の部位をいくつか挙げれば、「レバー」は英語の肝臓を意味する「liver」、「タン」は舌を意味する「tongue」、「ハツ」は心臓を意味する「hearts」、肩バラ肉の「ブリスケ」は胸肉や肋肉を表す「brisket」から、それぞれ名付けられている。またお尻の部分にある「イチボ」は、お尻の部分の骨が「H-bone」と呼ばれているところから訛ったと言われている。
また、切り出した形状から付けられた部位名も多い。肩ロースの一部である「ザブトン」は四角い形状が座布団のように見えるから。肩甲骨近くの「トウガラシ」も形状が唐辛子のように見えるから。第1胃の「ミノ」は開くと蓑のように見えるから。リブロース芯の近くにある稀少部位「エンピツ」は鉛筆のように細長く錐体になっていることから、それぞれ名付けられている。
料理とは知れば知るほど、その美味しさは増していくものだ。もっと焼肉について知って、もっと美味しく楽しく焼肉を食べて頂きたい。
※写真は筆者によるものです。
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