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深夜ドラマはもったいない?クドカン脚本を豪華俳優が演じる名作『季節のない街』

武井保之ライター, 編集者
ドラマ25『季節のない街』(テレ東・BSテレ東 )公式サイトより

話題作の多い春ドラマのなかで、テレビ東京の深夜ドラマ枠『季節のない街』が異彩を放っている。もともとディズニープラスで昨年8月に配信されたドラマだが、地上波放送で初見の視聴者を引きつけているようだ。

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12年前の災害の仮設住宅にいまも暮らす人々

山本周五郎の同名小説を原作に、宮藤官九郎が脚本を執筆。12年前に起きた大災害によって建てられた仮設住宅を舞台に、災害で家を失った家族や、どこかから流れ着いたその日暮らしの労働者などが暮らす、ディストピアのようでユートピアなのかもしれない“街”の人間模様を描く。

クセもの揃いのその街は、都会とは正反対ののんびりとした空気が流れる。そこで暮らす人それぞれ過去を抱えながらも、誰もが自身をさらけだし、周囲に体裁を気にすることなく自分らしく自由に生きる。

個性的過ぎる登場人物たちがときにぶつかる生活は、どこか微笑ましく、心温まるエピソードばかり。冬ドラマ『不適切にもほどがある!』とはまったく異なるジャンルの作品だが、クドカンの人の本質を捉える視点と、愛情を込めてその人生の滑稽さをカッコよく、温かく描く作風は共通している。

ドラマの世界観からにじむメッセージ

そんな本作には、驚くほどの豪華俳優が集結している。メインキャストの池松壮亮、仲野太賀、渡辺大知のほか、仮設住宅の面々を濱田岳、坂井真紀、三浦透子、片桐はいり、ベンガル、荒川良々、MEGUMI、高橋メアリージュン、増子直純(怒髪天)など。

さらに、鶴見辰吾、岩松了、皆川猿時、又吉直樹、前田敦子、塚地武雅、藤井隆らも登場する。とくに、池松、仲野、渡辺の3人がクドカン脚本で映えている。彼らを中心にしたこの街の空気や温度感が、染み入るように視聴者の心を捉えていく。

回によっては、12年前の災害の仮設住宅がいまもまだあることや、そこで暮らさざるを得ない人たちの心情を代弁するかのようなメッセージもある。それはクドカンの思いであり、出演者をはじめドラマに携わるスタッフ誰もが共有している感情だからこそ、作品そのものの世界観となって伝わってくるのだろう。

一見ほのぼのとした地方の人々の生活を描いているようで、豪華キャストのアンサンブルが個性豊かな登場人物の悲喜こもごもの人間模様を繊細かつ痛切に映す。そんな名作になっている。

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ライター, 編集者

音楽ビジネス週刊誌、芸能ニュースWEBメディア、米映画専門紙日本版WEBメディア、通信ネットワーク専門誌などの編集者を経てフリーランスの編集者、ライターとして活動中。映画、テレビ、音楽、お笑い、エンタメビジネスを中心にエンタテインメントシーンのトレンドを取材、分析、執筆する。takeiy@ymail.ne.jp

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