『Believe』木村拓哉に投影する理想の生き様 現実社会の醜聞へのカウンター的な人物像
木村拓哉主演のテレビ朝日木曜ドラマ『Believe-君にかける橋-』第2話が放送され、物語の輪郭がだいぶはっきりしてきた。冤罪を晴らす主人公の人生再生のヒューマンドラマに、脱獄エンターテインメントの要素も加わりそう。この先への期待値が高まる。
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現実とは対照的な理想の人物像
主人公の狩山陸(木村拓哉)は、現実社会の事件やスキャンダルを起こす人間とは対照的な人物像として描かれている。会社と社員を守るために事故の責任を1人で背負い、妻のことを心から愛して慕う仲睦まじい様子が描かれる。
現実社会では、事故や事件の責任を取らない企業経営者、不祥事からの責任逃れに終始する政治家ばかりがメディアに登場し、著名人の不倫スキャンダルの話題は後を絶たない。
そんな醜聞だらけのリアルへのカウンター的な人物として描かれているから、狩山に共感しやすく、応援したくなる気持ちが湧いてくるのだろう。ふと気がつくと彼の物語に見入ってしまう。
一般社会を生きるなかでの共感ポイント
彼の境遇にも共感ポイントがある。狩山は、会社と8000人の社員を守るために真実にフタをして罪を背負う。
ここまで大きな罪や出来事ではないにしても、一般社会の会社員であれば、事を荒立てないために不正に目を瞑ったり、不満を抑え込んだりといった何らかの近しい経験があることだろう。
また、妻の余命を知った狩山は、再審を請求し無罪を訴えようとするが、弁護士からは証拠がないうえ、逆に隠蔽や偽証で罪が重くなるから、1年半の刑期を受け入れ、出所してから会社に約束された地位を受け入れたほうがいいとアドバイスされる。
これも近しい自分ごとに置き換えやすい。多少の犠牲であれば、その後の生活や人生が楽になるほうになびきがちなのが、現実の選択になるかもしれない。
そこを狩山は、真っ当な正義をつらぬく。それはドラマだからかもしれないが、それも込みで、視聴者が自身の生き方のひとつの理想として投影することでカタルシスを得る。そんな楽しみ方が視聴者を引きつけているように感じる。
脱獄エンターテインメントにも期待
加えて、第2話では脱獄エンターテインメントの要素が加わった。自由への脱出の大きなカタルシスを生み出す同ジャンルの名作は多く、コアファンは多い。しかし、日本の刑務所では脱獄が極めて難しいことからリアリティに欠けるため、近年の日本の現代劇ドラマではあまり描かれていない。
そこに踏み込んだことに、ワクワクさせられた視聴者は多かったのではないだろうか。
一方、有罪判決で終わった事件を執拗に調べ続ける、警視庁捜査一課の刑事・黒木正興(竹内涼真)が、事故の犠牲者・若松(竹内涼真の一人二役)と近しい関係性にあることが明らかになってきた。この先は、脱獄と真実の追求が両輪となっていきそうだ。
今期ドラマは豊作と言われているが、そのなかでももっとも注目したい作品のひとつだ。
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