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今絶対に食べておくべき 福岡のラーメン「新潮流」3軒

山路力也フードジャーナリスト
豚骨ラーメンだけが福岡のラーメンではない。

「非豚骨」が激増している福岡

街角の屋台ラーメンも福岡ならではの光景。
街角の屋台ラーメンも福岡ならではの光景。

 博多ラーメンや長浜ラーメンなど、豚骨ラーメンの聖地としても知られる福岡市。白濁した豚骨スープに加水率の低い細麺の組み合わせは、福岡市民や博多っ子にとってDNAに刷り込まれた、いわばソウルフードと言っても良い。福岡は豚骨ラーメンの街なのだ。

 しかしながら、ここ数年は福岡ならではの豚骨ラーメンではない、醤油ラーメンや豚骨醤油ラーメン、そして創作ラーメンを出す店が激増している。「非豚骨」「脱豚骨」と呼ばれる新たな潮流が広がりをみせ、2021年にオープンした新店では非豚骨ラーメン店の開業数が豚骨ラーメン店の開業数を上回った。

 また、これまでは地元福岡の老舗や人気ラーメン店で修業を積んで独立開業するケースが多かったが、他県で学んだ味を提供したり独学でラーメンを創作したり、あるいはフレンチや和食など異なるジャンルの料理人が作るラーメンにも注目が集まっている。今回は福岡で経験豊富な料理人が作るラーメンで話題の3軒をご紹介しよう。

和食料理人が作る伝説の豚骨ラーメン『拉麺處 丸八』

日本料理店『油山山荘』の敷地内にある『拉麺處 丸八』。
日本料理店『油山山荘』の敷地内にある『拉麺處 丸八』。

 福岡の中心地から車で20分ほどの場所にある、標高597mの油山にひっそりと佇む、1972(昭和47)年創業の割烹『油山山荘』。日本庭園を眺めながら河豚料理を堪能出来る店の店主が、店の敷地内に2022年オープンしたラーメン店が『拉麺處 丸八』(福岡県福岡市城南区大字東油山147)だ。

 店主の渡邉健さんはラーメン好きが高じて、割烹を営みながら独学でラーメン研究に勤しみ、1989年にラーメン店『丸八』を開業。割烹とラーメン、どちらも人気を博していたが、体調不良や人手不足などで2006年に惜しまれつつラーメン店を閉じた。しかしコロナ禍の中、2020年に期間限定で『油山山荘』のランチメニューとして丸八のラーメンを復活させ話題になり、今回新たに常設の店舗として完全復活を果たした。

 当時の丸八のラーメンは羽釜を使った久留米ラーメンの製法をベースにしたものだったが、今回は寸胴を使った繊細かつ重層感のある味わいに進化。頭骨とゲンコツを丁寧に炊いた旨味あふれるスープに、しっかりと茹でられた中細麺が合わせられる。博多ラーメンとも久留米ラーメンとも違う丸八流の豚骨ラーメンは、福岡の豚骨ラーメンの奥深さを感じさせる一杯になっている。

大胆な発想でラーメンを再構築する『ニシムラ麺』

『ニシムラ麺』はレストランのランチタイムに暖簾を掛け替えての二毛作営業。
『ニシムラ麺』はレストランのランチタイムに暖簾を掛け替えての二毛作営業。

 福岡の中心地から離れた閑静な住宅街にある古い一軒家を改装した完全予約制レストラン『Nishimura Takahito la Cuisine creativite』(福岡県福岡市南区平和2-5-29)。フレンチベースでありながら、和食などの手法も大胆に取り入れたイノベーティヴ・フュージョンの人気店だが、ランチタイムには暖簾を掛け替えてラーメン店になる。その名も『ニシムラ麺』だ。

 オーナーシェフの西村貴仁さんは大のラーメン好き。これまでレストランで提供してきた自らの世界観を、大好きなラーメンで表現することで今まで以上に多くの人たちに楽しんでもらいたいと、今までにはないオリジナルのラーメンを創作。2020年よりランチタイムを自らの名前を冠した『ニシムラ麺』という屋号を掲げて新たな挑戦を始めた。

 食材と向き合ったインスピレーションから紡がれるラーメンは、ポルチーニの旨味を凝縮させた一杯や、ニラをペーストにしてニラそばを再構築するなど、どれも従来のラーメンのアプローチとは異なるものばかり。バケットを添えてスープを染み込ませたり、ポークリエットを炊き立ての白ご飯に添えるなど、大胆かつ柔軟な発想で楽しませてくれる。

フレンチの技法を駆使した新感覚ラーメン『めんとスープ』

「めんとスープ」はラーメンの新たな可能性を示すヌードルガストロノミック。
「めんとスープ」はラーメンの新たな可能性を示すヌードルガストロノミック。

 2022年4月にオープンしたばかりの新店ながら、早くも料理好きやラーメン好きの間で話題を集めている店が『めんとスープ』(福岡県福岡市早良区野芥3-14-17)だ。暖簾や提灯などは一切なく、大きめのテーブルが一つとハイチェアーだけが置かれたスタイリッシュな店は、一見ラーメン店とは思えない佇まい。

 オーナーシェフの安藤寛さんは、数々の人気フレンチでキャリアを重ねてきた人物。長年培ってきたフレンチの「フォン(出汁)」の技術や美味しさを、ラーメンで表現出来ないかと、ラーメンを主役に据えた「ヌードルガストロノミック」として独立開業した。

 フレンチの技法から生まれた「中華そば」や「オマールエビラーメン」など、フレンチならではの「香り」や「旨味」の表現を大切にしつつ、フレンチではなくラーメンとして落とし込むように心がけているという安藤さん。食べ始めから食べ終わりまで、温度によって変わる香りや旨味の変化の楽しさが感じられる一杯は、今までのラーメンにはない世界観を提示している。

 今回ご紹介した3軒は、いずれもベテランの料理人が本気で作るラーメンを提供する店ばかり。博多ラーメンとは違った、新たな福岡のラーメンを体感する上で欠かせない店ばかりなので、ぜひとも足を運んで頂きたい。

※写真は筆者によるものです。

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フードジャーナリスト

フードジャーナリスト/ラーメン評論家/かき氷評論家 著書『トーキョーノスタルジックラーメン』『ラーメンマップ千葉』他/連載『シティ情報Fukuoka』/テレビ『郷愁の街角ラーメン』(BS-TBS)『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日)『ABEMA Prime』(ABEMA TV)他/オンラインサロン『山路力也の飲食店戦略ゼミ』(DMM.com)/音声メディア『美味しいラジオ』(Voicy)/ウェブ『トーキョーラーメン会議』『千葉拉麺通信』『福岡ラーメン通信』他/飲食店プロデュース・コンサルティング/「作り手の顔が見える料理」を愛し「その料理が美味しい理由」を考えながら様々な媒体で活動中。

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