絶対に食べておかねばならない 福岡の豚骨醤油ラーメン「基本」3軒
福岡には家系ではない豚骨醤油がある
博多ラーメンや長浜ラーメン、久留米ラーメンなど、福岡は豚骨ラーメンの街として全国にその名が知られている。しかしながら、ここ数年は「非豚骨」「脱豚骨」の流れが加速化しており、白濁した豚骨ラーメン以外のラーメンを出す店が増殖している。
中でも横浜発祥の豚骨醤油ラーメンである「家系ラーメン」を出す店が福岡で急増中。醤油のパンチが効いたスープに幅広の麺と、白濁スープに細麺の豚骨ラーメンとは異なるスタイルながらも多くの人の支持を集め行列を作っている。今後もその出店の勢いは止まりそうにない。
しかし家系ラーメンが上陸する以前から、福岡にはオリジナリティあふれる豚骨醤油ラーメンが存在しており、今も変わらぬ人気を集めている。家系が進出する下地を作ったと言っても過言ではない、福岡スタイルの豚骨醤油ラーメンを提供する人気店3軒を今回ご紹介したいと思う。
博多豚骨醤油の嚆矢『入船食堂』(2007年リニューアル)
博多区住吉の路地裏に佇む『入船食堂』(福岡県福岡市博多区住吉4-15-6)は、60年年以上の歴史を持つ老舗。かつてはチャンポンや定食を出すまさに「食堂」だったが、2007年にラーメン専門店としてリニューアル。家系ラーメンがブームになる前から、長年にわたり福岡で家系スタイルの豚骨醤油ラーメンを提供している嚆矢的な存在だ。
店主の高田英輔さんは家系発祥の地、横浜出身。20歳の時に家系ラーメン店で修業を始め、ラーメンの世界へ足を踏み入れた。横浜と福岡で家系ラーメン店に勤めた後、結婚を機に奥様の実家である『入船食堂』に入り、2007年よりメニューを一新して家系スタイルの豚骨醤油ラーメンを提供。豚骨ラーメンに慣れ親しんだ福岡の人たちに合わせて、スープに豚頭を入れるなど独自の工夫を凝らしたオリジナルの豚骨醤油ラーメンで人気を博している。
醤油と鶏油の甘さが光る『麺処 恭や』(2012年創業)
博多の夜の繁華街「中洲」の国体道路沿いで、圧倒的な人気を誇るのが『麺処 恭や』(本店:福岡県福岡市博多区中洲2-1-11)だ。2012年の創業以来、深みのある豚骨スープの旨味と、醤油と鶏油の甘味が特徴的な豚骨醤油ラーメンは、中洲の夜の締めの一杯として定着。現在は県内外に3店舗を展開している。
店主の田阪恭之介さんは、かつて中洲にあった家系ラーメン店出身。独自に家系ラーメンと九州豚骨ラーメンの「呼び戻し」製法を融合させて、横浜の家系ラーメンを福岡の人たちのためにローカライズした先駆だ。その後『海豚や』の立ち上げに参画して、自身の名前を冠した『恭や』を開業。スープには那珂川市の地下水を使い、麺には国産小麦を3種類配合するなど、素材にもこだわりを持っている。
若者の絶大な支持を受ける『無邪氣』(2012年創業)
学生が多く住む七隈で人気を集める店が『無邪氣』(本店:福岡県福岡市城南区七隈4-8-17)。福岡の人たちの味覚に合わせて、地元福岡の醤油を使ってやや甘めに仕上げたオリジナルの豚骨醤油ラーメンを提供。2012年の創業以来、学生を中心に人気を集めて、今では福岡市内に4店舗を展開している。
店主の新島康樹さんは東京の家系ラーメンの人気店『武蔵家』出身。修業先で学んだ家系ラーメンを基本にしてはいるが、福岡の人の舌に合うようにローカライズしている。味の決め手となる醤油は地元福岡の老舗醤油蔵のものを使い、関東とは異なる甘さを上手に生かした。さらに麺も福岡の老舗製麺所と共同開発したオリジナルを使用。見た目こそ家系ラーメンのように見えるが、福岡スタイルの豚骨醤油ラーメンだ。
今回ご紹介した3軒は、いずれも地元の人たちに愛され続ける、福岡のラーメンを語る上で欠かせない老舗ばかり。家系ではない福岡ならではの豚骨醤油ラーメンをぜひ食べ歩いて欲しい。
※写真は筆者によるものです。
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