2022年に注目すべき 福岡の醤油ラーメン「新店」3軒
豚骨の街、福岡で加速する「脱豚骨」の潮流
毎年数千もの新店が誕生し、同じ数だけの店が廃業するラーメン業界。飲食業界の中でもライバルが多い厳しい世界だが、長引くコロナ禍の中でありながら、2021年にも数え切れないほどたくさんのラーメン店がオープンした。
福岡でラーメンといえば「豚骨」だが、ここ数年「脱豚骨」「非豚骨」の流れが加速している。白濁していない透明な醤油ラーメンや塩ラーメン、あるいは味噌ラーメンなど、2021年にオープンした新店の多くが豚骨ではないラーメンを看板に掲げている。
その中で、2022年にますます人気が上がっていくであろう、注目すべき新進気鋭のニューカマーのラーメン店を実食した上で厳選。どの店も2021年にオープンしたばかりの新店ながら、豚骨の街福岡のラーメンシーンを変える可能性を秘めた実力店ばかりだ。
鶏の旨味と醤油の香り『大衆中華酒場 六根』(2021年4月創業)
飲食店が数多く集まる福岡屈指の飲食エリア「大名」に、2021年4月オープンしたのが『大衆中華酒場 六根』(福岡県福岡市中央区大名1-10-6)。テラス席もある開放的な雰囲気の店内には、鍋を振る音が響いて活気に満ちあふれている。こちらはニラ饅頭の人気店『一優亭』がリニューアルした店で、オーナーシェフの関一優さんが自ら厨房に立っている。
これまでもうどん店や炉端焼店など、国内外で数々の飲食店を手掛けてきた関さんだが、ラーメンに関しては初めての経験。しかし出すからにはラーメン店にも負けないクオリティのものを提供したいと、旧知の人気ラーメン店主のアドバイスも受けながら試行錯誤を重ねてオリジナルのラーメンを完成させた。居酒屋業態の夜はもちろん、ランチタイムはラーメン専門店なみの人気ぶりだ。
厳選した鶏ガラをふんだんに使用した鶏清湯ベースのラーメンは、すっきりとした味わいと醤油の香りとコクが印象的な味わい。さらに表面に浮いた鶏油がさらなる深みを与えている。漆黒の色合いのスープが光る醤油ラーメンの別名は「大名ブラック」。黄金色に輝くスープの塩ラーメン「大名ゴールド」と共に、早くも大名エリアの名物となりつつある。
フレンチの技法が光る琥珀色のスープ『麺屋 澄々』(2021年9月創業)
古き博多の中心地、店屋町に2021年9月オープンしたのが『麺屋 澄々(すず)』(福岡県福岡市博多区店屋町4-24)。ホテルや飲食店の料理プロデュースや、熊本大畑のイノベーティヴレストラン『Loop』などを手掛ける『Rédu→M(レデューム)』グループによるラーメン業態。
店の外観は一見するとラーメン店とは思えない雰囲気。スタイリッシュでシックな佇まいの店内は、ラーメン店には珍しいクローズドキッチンで、音楽は流さずに風鈴の音だけが響く。檜を用いたお膳の上に特注のラーメン丼と箸置き。さらに丁寧な接客で出迎える。レストランとしてのエッセンスが随所に感じられる店だ。
フレンチシェフでもあるオーナーが作ったラーメンは、鶏の旨味が程よいスープに九州醤油の甘さが広がる醤油ダレが融合したもの。そこに自家製のかぼす胡椒を溶かし入れる事で味に変化が生まれ、旨味の立体感が増していく。個性的な形状をした特注の丼も、ラーメンの香りを楽しんで欲しいという思いから。細部に至るまで料理としての完成度が高いラーメンになっている。
ネオノスタルジックな町中華の再構築『福はこび』(2021年9月創業)
博多から地下鉄で約20分、福岡市の西端にあるベッドタウン姪浜に、2021年9月オープンした『福はこび』(福岡県福岡市西区姪の浜4-11-23)は、豚骨ラーメンの人気店『博多一双』による新業態。オープン直後から話題になり、連日行列を作る人気店になっている。
今回の『福はこび』のコンセプトは、地域密着型の古き良き「町中華」。懐かしいのに新しい、ネオノスタルジックなラーメン食堂を目指した。これまでの『博多一双』は、ラーメン職人が気合を入れて作っているイメージの店だったが、今回の『福はこび』は、地元で長年愛されていた老舗の町中華の店舗を改装し、懐かしさと温かみのあるアットホームな雰囲気が感じられる。
自慢の醤油ラーメンは「誰もが懐かしさを感じる今までにない醤油ラーメン」を目指して作り上げたもの。鶏と豚、野菜をふんだんに使用した旨味と香りあふれるスープに、地元福岡の老舗醤油蔵の再仕込み醤油を使った濃厚で熟成感のあるオリジナル醤油ダレを合わせた。麺は福岡の人気製麺所『製麺屋慶史』と共同開発したオリジナルの熟成中太麺で、試作に一年かけて完成させたという意欲作だ。
福岡は数多くの豚骨ラーメン店がひしめき合っている豚骨王国だが、醤油ラーメンなど非豚骨のラーメンも市民権を得つつある。今回ご紹介した3軒はいずれも2021年にオープンした醤油ラーメンの店ばかり。そして新店とは思えない実力派ばかりだ。同じ醤油ラーメンでありながらも個性は全く違うので、ぜひ3軒とも食べて自分好みの味を見つけて欲しい。
※写真は筆者によるものです。
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