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2022年に注目すべき 個性豊かなラーメン「新店」5軒

山路力也フードジャーナリスト
東京、千葉、大阪、京都、福岡の5都市でオープンした新店から厳選した。

個性豊かなラーメン店が続々登場した2021年

 毎年数千もの新店が誕生し、同じ数だけの店が廃業するラーメン業界。飲食業界の中でもライバルが多い厳しい世界だが、長引くコロナ禍の中でありながら、2021年にも数え切れないほどたくさんのラーメン店がオープンした。

 コロナ禍ということもあって、2021年は例年ほど全国へと飛ぶことは出来なかった筆者だが、主たる活動拠点である東京・千葉と、関西は大阪・京都、さらに九州の福岡では、新しく出来たラーメン店を中心に食べ歩くことが出来た。

 その中で、2022年にますます人気が上がっていくであろう、注目すべき新進気鋭のニューカマーのラーメン店を実食した上で厳選。どの店も2021年にオープンしたばかりの新店ながら、他の店とは違った存在感と個性のある店ばかりだ。

貝出汁が光る間借り店『拉麺 はま家』(東京・六本木/2021年5月開業)

六本木交差点近くの中華居酒屋『餃包』の昼間を間借りして営業する『拉麺 はま家』。
六本木交差点近くの中華居酒屋『餃包』の昼間を間借りして営業する『拉麺 はま家』。

 六本木交差点近くにある中華居酒屋の昼間を間借りする形で、2021年5月にオープンしたのが『拉麺 はま家』(東京都港区六本木4-9-8)。仙台で居酒屋など飲食店を展開する会社によるラーメン業態。コロナ禍によって閉店したラーメン店が仙台から移転し、間借りする形で再開して人気を博している。

 「貝だし専門の間借りのラーメン屋」というコンセプト通り、貝出汁がベースのラーメンを数種類メニューに揃える。基本の「しそ塩そば」は、桑名の蛤をベースに宍道湖のシジミや広島の牡蠣など、貝の旨味があふれんばかりの力強いスープ。さらに丸鶏も使って厚みを出している。細かく刻まれたシソオイルがスープと一体になると、和風ジェノベーゼのような味わいに変化するのも楽しい。

ハイブリッドな王道豚骨『麺 松風』(千葉・松戸/2021年8月創業)

千葉屈指のラーメン激戦区松戸にオープンした『麺 松風』。
千葉屈指のラーメン激戦区松戸にオープンした『麺 松風』。

 千葉屈指のラーメン激戦区、松戸駅東口に2021年8月オープンした『麺 松風』(千葉県松戸市松戸1291-4)は、博多ラーメンを楽しみながら、夜はちょい呑みも出来るスタイルの店。店主は豚骨ラーメンの人気店『博多 一風堂』で長年経験を積んだベテラン職人で、地元で待望の独立を果たした。

 修業先の『一風堂』のスープは「取り切り」で、その日のうちに使い切るが、松風のスープは「呼び戻し」で、前日のスープを元に継ぎ足していくスタイル。ここには店主が一風堂傘下の『名島亭』でも働いていた経験が生かされている。福岡の人気豚骨店の「良いとこ取り」をした、ハイブリッドな一杯を楽しむことが出来る店だ。

味が変化し続ける『だしと小麦の可能性』(大阪・日本橋/2021年10月開業)

間借り営業から念願の固定店となった『だしと小麦の可能性』。
間借り営業から念願の固定店となった『だしと小麦の可能性』。

 北新地の人気カツサンド専門店『なおらい』が、2021年4月に間借り営業という形でラーメン専門店を100日限定でテストオープン。そこでのフィードバックを得て、2021年10月に裏なんばエリアで念願の路面店として開業したのが『だしと小麦の可能性(だしかの)』(大阪府大阪市中央区日本橋2-5-8)だ。

 豚と鶏の動物をベースに蛤やアサリ、干し貝柱、雲丹、干し海老などを合わせたスープは驚くほどに複雑で力強い旨味にあふれている。そこに牛豚鶏3種の薄切り低温調理レアハムをしゃぶしゃぶのようにしてスープに潜らせたり、鉢に入ったバジルとチーズをすり潰してジェノベーゼソースにしたり、さらにドライトマトのムースを溶かしたりと、次々と味が変わっていく遊び心満載のラーメンに仕上がっている。

超濃厚鶏白湯『とことんとりコトコト』(京都・東寺/2021年1月開業)

手作り感覚あふれる温かみのある佇まいの『とことんとりコトコト』。
手作り感覚あふれる温かみのある佇まいの『とことんとりコトコト』。

 京都は濃厚な鶏白湯ラーメンの文化がある街だが、その流れを汲んだ超濃厚鶏白湯ラーメンで一躍人気店になっているのが、2021年1月オープンした『とことんとりコトコト』(京都府京都市南区西九条比永城町26-2)だ。以前は深草で『間借り屋』という屋号で営業していたが、念願の実店舗を東寺エリアに構えた。

 驚くほどに濃度と粘度がある超濃厚スープは、油分をしっかりと取り除いてあるのでベタつきやしつこさが一切ない。二種類のネギが食感と味わい共に良いアクセントになっている。麺は京都の老舗製麺所『麺屋棣鄂』の平打ち麺でスープと絡みまくる。京都の濃厚鶏白湯の歴史に沿った、京都でなければ食べられないラーメンだ。

家系の常識を覆す『らーめん 三刀流』(福岡・九産大前/2021年4月創業)

家系ラーメンの常識を覆す『らーめん 三刀流』。
家系ラーメンの常識を覆す『らーめん 三刀流』。

 福岡市東区に2021年4月オープンした『らーめん 三刀流』(福岡県東区香住ヶ丘2-11-28)は、京都や海外で店舗展開している『麺家 あくた川』が手掛ける新ブランド。店主が大分出身ということもあり、いつかは九州に出店したいという思いが叶った九州1号店だ。

 店名などに「家系」とは謳っていないが、福岡でも屈指の本格的な家系ラーメンを提供。しっかりと骨の旨味を感じさせる濃厚なスープにキリッとした醤油ダレ、さらに家系御用達の製麺所『酒井製麺』の逆切り家系麺。そこに焦がしたニンニク油を浮かべた「黒流らーめん」や、辛い香味油を浮かべた「赤流らーめん」など、バリエーションも展開。家系の新たな可能性を感じさせるラーメンになっている。

 人気ラーメン店がひしめき合う東京、千葉、大阪、京都、福岡。今回ご紹介した5軒はいずれも2021年にオープンした新店ばかりだが、いずれも新店とは思えないほどの存在感あるラーメンを提供している。2022年のラーメンシーンでさらに人気が上がっていくことは間違いないだろう。

※写真は筆者によるものです。

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フードジャーナリスト

フードジャーナリスト/ラーメン評論家/かき氷評論家 著書『トーキョーノスタルジックラーメン』『ラーメンマップ千葉』他/連載『シティ情報Fukuoka』/テレビ『郷愁の街角ラーメン』(BS-TBS)『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日)『ABEMA Prime』(ABEMA TV)他/オンラインサロン『山路力也の飲食店戦略ゼミ』(DMM.com)/音声メディア『美味しいラジオ』(Voicy)/ウェブ『トーキョーラーメン会議』『千葉拉麺通信』『福岡ラーメン通信』他/飲食店プロデュース・コンサルティング/「作り手の顔が見える料理」を愛し「その料理が美味しい理由」を考えながら様々な媒体で活動中。

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