「信じられない!」 やっと酒が解禁になるも飲食店にとってかなり微妙なワケ
東京都はまん延防止等重点措置へ
2021年6月20日に、東京都や大阪府など、沖縄県を除く9都道府県で緊急事態宣言が解除されます。東京都や大阪府などの7都道府県では、6月21日から7月11日まで、まん延防止等重点措置が適用。
東京都と大阪府では、飲食店に対してほぼ同様の措置がとられることになります。営業時間は20時まで、酒類提供は原則禁止ですが、一定条件のもと11時から19時まで提供可能、さらには1グループ2人まで。東京都では、酒類提供時の滞在時間が90分までと、大阪府よりも厳しくなっています。
酒類提供の条件とは、東京都であれば、感染防止徹底宣言ステッカーの提示、コロナ対策リーダーの登録とe-ラーニング研修の受講。全てがウェブで完結するので、そこまで負担にならないかもしれません。
緊急事態宣言の期間中は酒類提供が禁止されていただけに、それに比べれば緩和されたといえます。しかし、周囲の飲食店関係者の反応をみてみると「一歩前進」であるという声が上がる一方で、「信じられない」「どうすればよいのか」「制限がまだ続くなんて」といった声も聞かれており、全ての飲食店が手放しに喜んでいるわけではありません。
声が届かなかった
飲食業界が最も失望しているのは、自分たちの声がまたも国や自治体に届かなかったこと。
直近でいえば、6月10日10時から飲食業界の18団体が集まった会見が実施されました。酒類提供の禁止と時短営業の緩和、認証制度の導入、生産者などサプライチェーンの支援を要望し、エビデンスにもとづいた政策を求めています。
「外食産業崩壊寸前、事業者の声」緊急記者会見 - YouTube
これまでも各団体や影響力のある料理人、大手飲食企業の創業者や社長などが署名運動を行ったり、陳情したり、要望書を提出したりしてきました。しかし、18団体も集まって声を上げたことはありません。外食産業は25兆円もの規模を誇る大きな産業ですが、それだけ切羽詰まってきたということです。
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協力金の支給が中小企業だけではなく大企業も対象となったり、支給額が事業規模に応じるようになったりと、改善された面もあります。しかし、しっかりとした感染症対策を行っている飲食店が通常営業を行えるようにするという、飲食業界たっての願いは届いていません。
振り返ってみれば、飲食店に対する時短営業は2020年11月28日からずっと続いています。半年以上もの間、飲食店にだけ対策をとりながらも、感染が抑えられないのは失策以外の何物でもないでしょう。
今回のまん延防止重点等措置の施策を鑑みれば、飲食業界の声が届かなかったということで、東京都の約10万店もある飲食店は、国や自治体に対して大きく失望しています。
2人までの酒類提供では厳しい
時短営業については、以前から、営業時間が短くなるので余計に密になるだけではないかと指摘されてきました。しかし、国や自治体は全く聞く耳をもっておらず、納得できる説明もしていません。
ただでさえ、20時までの時短営業と19時までの酒類提供となっている上に、1グループが2人までと制限が設けられました。
6月から7月にかけては繁忙期ではなく、コロナ禍の中ということもあって、6人を超えるような大人数の利用はほとんどないでしょう。
ただ、一般的に飲食店の1グループあたりの来店人数は2人から3人が最も多く、その次が4人から5人。2人から5人がボリュームゾーンであるだけに、その最低人数である2人グループにしか酒類提供できないのはやはり打撃です。
新しい生活様式の行方
昨年5月に「新しい生活様式」に関する記事を書きました。
新型コロナウイルスの感染が拡大し始め、日本でもその脅威が認識されるようになった頃です。「新しい生活様式」としてコロナ禍に相応しい行動様式が提言され、その中には飲食店に関連が深い食事に関する項目もあります。
当時は科学的な観点から「新しい生活様式」が守られていればよいというスタンスでしたが、現在は「新しい生活様式」を守っているか守っていないかにかかわらず、飲食店を十把一絡げにして厳しい措置を行っています。
あれだけ提唱していた「新しい生活様式」はどうなったのでしょうか。
山梨モデルといわれる「やまなしグリーン・ゾーン認証」が注目されています。山梨県が定める基準をクリアした飲食店や宿泊施設に対して、自治体がお墨付きを与えて経済を促進するという仕組みです。
新型コロナウイルスが、都道府県によって振る舞いを変えることはありません。本来であれば、自治体ではなく、国がしっかりとした認証制度について議論し、日本全国で統一したレギュレーションを制定するべきではないでしょうか。
東京五輪のツケ
6月20日に緊急事態宣言が解除された後、時短営業や酒類提供の禁止はどうなるのかと、飲食業界は固唾を呑んで見守っていました。
結果として、飲食業界が望む緩和となりませんでしたが、その一方で、東京五輪に関しては、選手村での飲酒が許可されたり、観戦客の上限が5000人から1万人に引き上げられたりする方向。開会式にいたっては2万人にするという驚愕の検討もされています。
国や自治体はこれまで、感染拡大防止のために人流抑制が重要であると述べていましたが、1万人もの人流を人為的に起こすことは理解できません。
以下の調査では、東京五輪をどうするべきかで「中止する」が40.7%、安全で安心な東京五輪が「できると思わない」が64%となっています。
こういった世論がありながらも東京五輪には緩い措置をとり、飲食店にだけ厳しい措置をとるのは全く一貫性がありません。
東京五輪の開催を通して感染が拡大していったら、飲食店に対してまた厳しい制限を課すのでしょうか。そうなれば、飲食業界が東京五輪のツケを払うことになります。
飲食業界は東京五輪に対しても、国や自治体に大きな不安と不満をもっているのです。
分断を生み出さないように
東京都の小池百合子知事は、遅延している協力金の支給に関して、審査態勢を拡充するなどして、これまでより1ヶ月以上早い支給を目指すと発表しました。
支給状況をみてみると、3ヶ月前の3月8日から31日分では約10%が、2ヶ月前の4月1日から11日分では約20%が支払われていません。それ以降の分については、まだ申請も開始されていないのです。
このような状況にあって、もしも引き続き酒類提供も禁止されていれば、もう経営していけないと、お酒を提供していた飲食店も多いでしょう。そうなっていれば、飲食業界と国や自治体の溝が深まったり、飲食業界の中で分断が進んだりしたかもしれません。
今回の酒類提供の緩和はかなりギリギリのところで最悪の事態を免れた形となりましたが、国や自治体は、飲食店にだけ焦点を当てた施策の妥当性について再考してみる必要があります。