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“令和のJFK”は『SIKY』? タテジマに袖を通した松原快(阪神)が独立リーガーリレーの愛称を求む

土井麻由実フリーアナウンサー、フリーライター
カメラマンのリクエストに応えてポーズを決める松原快

■阪神タイガースの新人選手入団発表会

 タテジマのユニフォームに袖を通しての第一歩は、ド緊張だった。「まだ手が震えていますよ(笑)」。松原快投手はそう言って、左手で右手を押さえた。

 12月11日に行われた阪神タイガースの新人選手入団発表会。12球団一といわれる報道陣の数だ。多くの視線が一身に注がれ、煌々と輝くライトを浴びる。一世一代の舞台に、頭の中は真っ白になる。

 育成ドラフト1位の松原投手が質問に答えるのは7番目。ドラフト1位から6位までの選手が答えるのを待っている間、心臓が激しく鼓動しているのを感じていた。

 とはいえ、緊張しながらもしっかりと話していた。共同会見での発言は以下のとおり。

岡田彰布監督を真ん中にガッツポーズ
岡田彰布監督を真ん中にガッツポーズ

――ユニフォームを着た感想は
「伝統あるタテジマを着て、鳥肌が立っています」

――武器は
「まっすぐと変化球のコンビネーションピッチングです」

――一番対戦したいバッターは
「いずれは大谷翔平選手と対戦したいと思います」

――プロでの目標は
「引退されていますが、元阪神のジェフ・ウィリアムス投手のような投手になりたいです」

――右左で違うが
「スライダーが武器のピッチャーで、僕自身がすごく勉強させてもらったので」

――タイガースの先輩で話を聞いてみたいのは
青柳晃洋)投手に聞いてみたい。タイプが少し似ているので、変化球だったりとか、バッターとの駆け引きだとかを聞いてみたいなと思います」

――1年目の目標は
「支配下登録を前提に、1軍で登板することが目標です」

――将来はどんな選手に
「『ブルペンには松原快がいる』という存在になっていきたい」

――タイガースファンに
「阪神タイガースの勝利に少しでも貢献できるように頑張ります!これから応援よろしくお願いします!」

 順位的に岡田彰布監督からもっとも遠い上手の席だったが、しっかりと自分の言葉でアピールしていた。

緊張しつつも、しっかり話していた
緊張しつつも、しっかり話していた

■ジェフ・ウィリアムス投手について

 お堅い金屏風の前での共同会見が終わると、フランクな個別の囲み取材に移った。すると一転、いつもの饒舌さが発揮され、報道陣に笑いを提供する。

 「“こっち”(囲み取材)は大丈夫なんですけど、“あっち”(壇上の共同会見)はねぇ(笑)。人生で一番緊張しました。社会人の入社試験と同じくらい…いや、それ以上でした。言うことはもちろん考えてあったんですけど、飛びました、全部(笑)。指名順なので自分の番まで何回も練習したんですけど…震えが止まんないっすね、今も」。

 ステージから降りると、途端に“絶口調”だ。

テレビインタビューにもハキハキと答える
テレビインタビューにもハキハキと答える

 壇上で発した「ジェフ・ウィリアムス投手」に話題が集中した。社会人チームのロキテクノ富山(前ロキテクノベースボールクラブ)時代、投手コーチとして監督として指導を受けた藤田太陽氏(元タイガース)からサイドスロー転向を勧められ、そのときに動画をいろいろ送ってもらった。

 斎藤雅樹氏(元読売ジャイアンツ)や藤田氏自身のものの中にウィリアムス投手のものもあり、松原投手はそのピッチングに惹かれたという。

(*スリークォーター転向の参照記事⇒150キロのスリークォーター・松原快は元阪神・藤田太陽の愛弟子

 「あのスライダーが特徴で、僕もまっすぐとスライダーが武器なので、本当に勉強させてもらいました。何回も見ましたね、動画は。いやもう、投球スタイルがかっこいいなと思って」。

 学んだのはおもにフォームよりも、ストレートとスライダーのコンビネーションによる配球だという。また、ウイリアムス投手の最大の特徴である闘志をむき出しにするスタイルにも感銘を受けた。

背番号は123
背番号は123

 現在、タイガースの駐米スカウトを務めるウィリアムス氏は、春季キャンプにたびたび顔を出している。それを聞くと松原投手は「来年のキャンプに来られたら、自分から聞きにいきたい」と意欲を見せ、すぐに「英語、話せないんですけど大丈夫ですか?」と笑わせた。どうやら、すっかり緊張は解けているようだ。

 「スライダーの意識だとか、勝負にいくときにどういった気持ちの入り方をしているのかとか、そういったところを聞いてみたい」。

 今から楽しみにしている。

さまざまなリクエストにも笑顔で対応
さまざまなリクエストにも笑顔で対応

■将来は勝利の方程式を独立リーガーで担いたい

 恩師の藤田氏からもJFKの話は聞いていたそうで、「太陽さんも『自分もそこに入りたかった。でも、当時の自分じゃ無理だった』って言ってたんで、僕がそういったピッチャーになれるように。『令和のJFK』に」と、自身が勝利の方程式入りすることで恩返ししたいと意気込む。

 ただ、『K』は『快』の自分が名乗りを上げるが、『J』と『F』は誰になるのか?

 「『J』と『F』は募集します(笑)。まぁ『Y』かな。湯浅京己)がいるので。石井大智)さんも椎葉)もいる。そこ(ネーミング)はお任せします。なんかそういったニックネームを考えていただけたら嬉しいです」。

 最後は報道陣に丸投げしてきた。かねてから望んでいた『独立リーガーリレー』を完成させたいとの意向だ。順番は別として、語呂がいいのは『SIKYシッキ―)』か。

モデルばりにポージングを決める
モデルばりにポージングを決める

 しかしタイガースのブルペン陣は鉄壁だ。石井投手や湯浅投手だけでなく岩崎優岩貞祐太加治屋蓮島本浩也浜地真澄桐敷拓馬及川雅貴…その顔ぶれは多士済々である。

 「ほんとに12球団の中でも層が厚い」と、松原投手も重々承知だ。さらに、「まずは支配下に上がることが大前提」と、支配下登録されなければ話にならないという、自身の立ち位置ももわかっている。

 「自分の特徴を生かしながらやらないと、埋もれてしまう。しっかり自分の特徴を生かしたピッチングや内容を突き詰めてやっていきたい」。

 自覚をもって取り組んでいく。

ガッツポーズやダブルピースの中、指ハートで個性を出す
ガッツポーズやダブルピースの中、指ハートで個性を出す

■愛されキャラ

 壇上で大谷選手と対戦したいと口にしたのが気になった。これまでメジャー志向なんて耳にしたことはなかったが…。

 「いや、それはまったくないです(笑)。大谷選手が日本に帰ってくるのを待つしかないですね(笑)」。

 たとえば今春に行われたWBCの壮行試合のような機会があれば、対戦の可能性もある。そういうチャンスを狙っているのだという。こういったやや天然なところが、おっとりしていてかわいらしい。

左から母・雅美さん、松原快、弟・拓さん、妹・凪さん
左から母・雅美さん、松原快、弟・拓さん、妹・凪さん

 会見後のファンミーティングのステージでは座右の銘を披露したが、事前に色紙に『辛いは一瞬、悔いは一生』と書いたつもりが、『』を『』と書いてしまい、スタッフから指摘されて顔を赤くしていた。これまでも書いてきた文字だが、共同会見直前の緊張がピークの中で書いたため、頭が回っていなかったのだ。

 「『うめい』って書いちゃってました」。照れくさそうに口にする姿がまた、愛嬌にあふれていた。ちなみに、この座右の銘には「辛いのは一瞬で終わるけど、悔いは一生残るので、つらいときはこの言葉を思い出して挑む」との思いが込められているという。

 岡田監督からは新人たちに「愛される選手に」との金言が贈られたが、松原投手が“愛されキャラ”であることは間違いない。

色紙にしたためた座右の銘は「辛いは一瞬、悔いは一生」
色紙にしたためた座右の銘は「辛いは一瞬、悔いは一生」

■勝利に貢献できる投手になる

 富山GRNサンダーバーズからNPBに行った選手では、地元の富山出身者は松原投手が初めてで、これは球団としてもずっと待ち望んでいたことだった。

 ファンミーティングで司会の金山泉アナウンサー(MBS毎日放送)から「宇奈月温泉の観光大使を狙ってますか?」と振られ、「ちょっと狙ってます」と本人もノリノリだったが、それくらいの活躍をしてほしいとの富山球団からの期待も背負っている。

常に笑顔
常に笑顔

 まずは地道に頑張る覚悟だ。すでに椎葉投手とともに虎風荘に入寮し、翌日からさっそく鳴尾浜球場で汗を流した。寮ではかつて湯浅投手が暮らしていた部屋があてがわれ、「出世部屋ですね」とテンションも上がって、さらにやる気がみなぎっている。

 支配下登録、1軍登板、結果の積み重ね…勝利の方程式に入るまでにいくつもの壁が立ちはだかっているが、これまでもそうしてきたように松原投手は一つ一つ乗り越え、きっと思いをかなえる。

 将来的にはタイトルも手にしたいと望むが、「それよりも」と掲げる目標がある。

 「チームが困ったときに『松原』と言ってもらえる選手になること。勝利に貢献できる投手になりたい」。

 チームにとってかけがえのない選手になることが、松原快の最大の目標だ。

頼もしい8人の新トラ戦士たちが岡田監督を囲む
頼もしい8人の新トラ戦士たちが岡田監督を囲む

(撮影はすべて筆者)

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フリーアナウンサー、フリーライター

CS放送「GAORA」「スカイA」の阪神タイガース野球中継番組「Tigersーai」で、ベンチリポーターとして携わったゲームは1000試合近く。2005年の阪神優勝時にはビールかけインタビューも!イベントやパーティーでのプロ野球選手、OBとのトークショーは数100本。サンケイスポーツで阪神タイガース関連のコラム「SMILE♡TIGERS」を連載中。かつては阪神タイガースの公式ホームページや公式携帯サイト、阪神電鉄の機関紙でも執筆。マイクでペンで、硬軟織り交ぜた熱い熱い情報を伝えています!!

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