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ドラフト2位が2人!史上最多23人の指名! NPBを目指す鍛錬の場として独立リーグへの注目度が高まる

土井麻由実フリーアナウンサー、フリーライター
右から永森茂社長、松原快、大谷輝龍、髙野光海、吉岡雄二監督(写真提供:富山球団)

■2023年プロ野球ドラフト会議

 毎年、野球ファンが注目するプロ野球ドラフト会議。今年のドラフト会議も話題性が高かった。

 中でも独立リーグから2位指名が2人、そして23人(支配下6人・育成17人)という過去最多の選手が指名されたことに、各地で驚きの声が上がった。(ポジション別、リーグ別の内訳は本稿末に記載)

 その2位指名を受けたうちの1人、大谷輝龍投手が所属する富山GRNサンダーバーズ永森茂社長は、今年のドラフト会議を「エポックメイキングというか、特別な年だったような気がする」と振り返り、独立リーグが転換期にきていると感じたという。

 サンダーバーズではこれまで8人のドラフト指名選手を輩出し、その中からは盗塁王(2021年)の和田康士朗選手(千葉ロッテマリーンズ)や最優秀中継ぎ投手(2022年)の湯浅京己投手(阪神タイガース)らタイトルホルダーも誕生している。

 そして今年は大谷投手がマリーンズ2位という球団史上最高位で指名され、投手がタイガース育成1位、髙野光海選手がマリーンズ育成3位と、球団史上最多の指名を受けた。

大谷輝龍を中央に右が松原快、左が髙野光海(写真提供:富山GRNサンダーバーズ)
大谷輝龍を中央に右が松原快、左が髙野光海(写真提供:富山GRNサンダーバーズ)

 大谷投手と快投手はともに高校を卒業後、社会人野球に進むも登板機会に恵まれず、それでもどうしてもNPBに行きたいという夢をかなえるために独立リーグにやってきた。

 大谷投手は1年で最速が159キロまで上がり、変化球の精度も格段にアップした。2年目の快投手も最速156キロに鋭い変化球で、防御率0点台と安定したピッチングを見せた。

 社会人チームでは伸び悩んだ彼らが、なぜその才能を開花させ、ドラフト指名を得るまでに成長できたのか。

 そこには独立リーグならではの利点や意義があると、永森社長は力説する。では、永森社長の考える独立リーグのメリット、そしてサンダーバーズの実情などを語ってもらおう。

大谷輝龍を中央に右が松原快、左が髙野光海(写真提供:富山GRNサンダーバーズ)
大谷輝龍を中央に右が松原快、左が髙野光海(写真提供:富山GRNサンダーバーズ)

■出場試合数の確保

 永森社長が第一に挙げるのが出場試合数だ。

 「試合に出られるんですよ、独立では。社会人は負けると終わりのトーナメントの世界なので、ボールに力があっても、ある程度ゲームメイクできないピッチャーは使われづらい」。

 大谷投手も快投手も、高校から社会人野球に進んでいる。昨今、社会人では高校生の獲得が減少傾向にあるが、2人はポテンシャルの評価がかなり高かったということだ。しかし当時はともに制球が安定せず、なかなか登板機会に恵まれなかった。

 「シーズンを通して試合をし、2連戦、3連戦もあります。しかも25人くらいで回している小さな規模の球団が多く、投手の数もだいたい10人前後だと思いますね、どこの球団も。だから自ずと出場機会も多い。そんな中で実戦を積みながら、自分の才能を伸ばしていく」。

 負傷で出遅れながらも大谷投手は18試合、快投手は33試合に投げた。(いずれもリーグ戦、NPB戦、グランドチャンピオンシップのシーズン合計)

大谷輝龍(撮影:筆者)
大谷輝龍(撮影:筆者)

 永森社長は続ける。

 「独立はリーグ戦だから、失敗しても取り返しがつく。もちろん勝つためにやってるんですけど、たとえ打たれても失点しても、それで終わりじゃない。すぐに次の試合でやり返すことができる」。

 試合で見つかった課題に取り組み、修正し、またすぐにやってくる次の試合で試すことができる。トライ&エラーを繰り返しながら成長できるのだ。

 とくに印象深かったのが湯浅投手だという。

 「巨人(3軍)戦だったかな(2018年7月15日)、かなり点を取られたとき(3回9安打5四球12失点)も、智さん(当時の伊藤智仁監督)は3回を投げきらせましたからね」。

 この試合を糧に湯浅投手は大きく飛躍し、一躍スカウト注目の選手になった。

松原快(撮影:筆者)
松原快(撮影:筆者)

 野手の髙野選手も同じだ。池田高校を卒業して1年目だが、リーグ戦で164打席(リーグ戦以外も入れると合計186打席)に立った。

 欠場はわずか1試合で39試合(同45試合)に出場し、リーグワーストの62三振と粗削りではあるが、持ち前の長打力を発揮してリーグ最多タイの5本塁打をマークした。

 「やはり彼の長打力というのは魅力があります。それを伸ばすために、吉岡雄二)監督ものびのびやらせていたと思いますよ。あれだけ圧倒的に三振しても、合わせるようなバッティングはしなかったですよね」。

 小さくまとまらせず、長所を伸ばすことに特化した取り組みは、試合数が多くリーグ戦のスタイルだからこそできる。

 投手も野手も失敗から学ぶことは多々ある。いや、失敗してこそ、次なるステップに進めるのだ。それにはまずは試合に出ないことには話にならない。

 それが実現できるのが独立リーグであり、指名された選手たちも実戦を重ねることで格段にレベルアップした。

髙野光海(撮影:筆者)
髙野光海(撮影:筆者)

■元NPBの指導者と練習環境

 独立リーグの指導者は元NPB選手が多い。「人数は少ないながらも、監督と投手、野手それぞれのコーチとバランスよく配しているチームが多い。専任のトレーナーもついています」と永森社長も自軍の指導者に全幅の信頼をおいている。

 独立球団によっては、NPB球団から指導者の派遣があったりもする。NPB球団側にとっては指導者養成の場になり、独立球団側にとっては指導が享受できることに加え、経済的な援助にもなる。

 「双方にとってメリットがある。今後もこういう交流は増えてほしい」と永森社長も望んでいる。

 また、練習環境については「グラウンドの確保などは社会人と比べて恵まれているとは言い難いけど、ちゃんとやれる最低限の環境は整っています」と言い、高岡市の協力を得て公共ジムを選手が無料で使えるようにするなど、工面している。

 「ジムに来る近所のおばさんたちが、作った野菜を選手に持たせてくれたりとか、そういうコミュニティもできていたりするんですよ(笑)」。

 地元の人々との交流も盛んに行われ、選手たちを熱心に応援してくれているという。

大谷輝龍(撮影:筆者)
大谷輝龍(撮影:筆者)

■食事や住居

 地元の協力は、なくてはならないものだ。とくに食に関してはありがたい。

 「応援してくれるお店もあって、たとえば500円で腹いっぱい食べさせてくれたりね」。

 さらに住まいも永森社長が手を尽くし、市営住宅に格安の家賃で入居させてもらっている。古いその市営住宅はエレベーターがなく4階や5階が空いていたこと、さらには震災後の特例を利用して選手が災害ボランティア登録することなどで、単身の選手でも入居できるよう掛け合ったのだ。

 「選手は実際に豪雪地域で除雪活動もしたりしたんですよ。足腰のトレーニングにもなりました。日々の階段の昇り降りにしてもね(笑)」。

 一石何鳥にもなっている。お給料を少しでも体づくりの食費や野球関連に回し、なるべくほかの経費がかからないよう、永森社長は常に考えている。

かつて和田康士朗、湯浅京己が暮らした部屋。現在の住人は飯田英樹(写真提供:飯田英樹)
かつて和田康士朗、湯浅京己が暮らした部屋。現在の住人は飯田英樹(写真提供:飯田英樹)

■NPBファームとの試合

 通常のリーグ戦のほか、NPBのファームとの交流試合も実施する。それによってスカウトに見てもらう機会も増え、選手も自分の力の“現在地”を知ることができる。

 今季は10試合(1試合は雨天中止)が組まれ、大谷投手も快投手もそこで大いにアピールしたことが指名につながった。

 「ファームがウエスタンもイースタンも球団数が奇数だったので、試合ができず空いている日程がわりとあったんです」。

 急にオファーが来ることもあったが、喜んで引き受けた。柔軟に対応できるのも、独立リーグならではかもしれない。NPB各球団と密な関係が築けている。

 ただ、来年はファームの各リーグが偶数になる予定で、交流試合が組めるか未定だ。だが試合数を確保するため、永森社長の頭の中では大学生や社会人との試合など、さまざまなアイディアがあるという。

 「地域が盛り上がるようにということも含めて、今、いろいろ計画中です」。

 選手も地域もウィンウィンになるようなプランを進めていると笑顔を見せる。これは楽しみである。

松原快(撮影:筆者)
松原快(撮影:筆者)

■野球だけに集中できる

 独立リーグはお給料をもらって野球ができる。原則的にシーズン中はアルバイト禁止だ。つまり野球だけに没頭できる環境ということだ。

 「社会人は社業もありますからね。社によって違いはあるのでしょうけど、厳しいところだと普通にフルタイムで社業をして、練習は夜だけというところもありますね。24時間、野球に没頭できる世界というのは、独立の特徴なんですよ」。

 まさに、それを求めてやって来たのが大谷投手だった。JFE東日本では芽が出ず、次の伏木海陸運送で徐々に戦力になりつつあったが、ストイックに野球だけに集中したいとサンダーバーズに入団したのだ。

大谷輝龍(撮影:筆者)
大谷輝龍(撮影:筆者)

■育成指名オッケー

 ドラフトにおいて、ほとんどの社会人チームは育成指名を拒否している。

 「中途半端な形では行かせられないというのがあるんじゃないですかね。やはり企業人、社員ですから。大きな会社なんか、組合の問題もあると思いますね」。

 それもあって、「育成でも、とにかく指名されたい」と、社会人チームを辞めて独立リーグに入団する選手も少なくない。入ってから支配下を勝ち取ってやろうという気概のある選手にとっては、独立リーグは夢を目指せる場所になる。

 さらに高卒社会人は3年、大卒社会人は2年と、社会人は指名解禁年の縛りがあるが、独立リーグは入団1年目から指名可能だ。和田選手や湯浅投手、そして今年の髙野選手も高卒1年で指名を受けた。

 「本当にNPBに行きたいという子たちには、独立が一番近道になると思いますね」。

 高校、大学で指名漏れをして悔し涙を流した選手たちに、回り道をしない方法もあるんだよと説く。

髙野光海(撮影:筆者)
髙野光海(撮影:筆者)

■今年が独立リーグの転機になると期待

 指導者が卒業後に大学や社会人へと送り出したいのは、引退後のことも考えての親心なのだろう。しかし本気でNPBに行きたい選手にとって、独立リーグに進むのは決して悪い選択肢ではない。

 独立リーグの存在は、今年のドラフトで注目度がぐっと上がった。大谷投手や快投手のように独立リーグで花開いた選手たちは、もちろん彼らの並々ならぬ努力や強い思いがあったからこそではあるが、独立リーグがなければ夢はかなわなかった。

 ただ、過去最多人数が指名されたことは、また別の話だ。他のカテゴリーの人材との兼ね合いもあり、今年のドラフトは独立リーガーにとってラッキーな側面もあったといえる。

 だが、実際にこれだけの選手が指名を受けたことで、独立リーグに対する目や考え方も変わってくるのではないだろうか。

 「今年が大きな転機となってくれるんじゃないかという期待はありますね」と永森社長はうなずき、独立リーグにとって追い風となることを期待する。

ドラフト指名会見(写真提供:富山GRNサンダーバーズ)
ドラフト指名会見(写真提供:富山GRNサンダーバーズ)

■選ばれる球団になる

 だからこそ、「ただNPBに出すだけではなく、NPBで長く活躍し続けられる選手を一人でも多く輩出したい」と力を込める。そのためにはいい素材の確保が必須だ。

 「そこが我々の競争。数ある中から“選ばれる球団”になるということが大事で、それが球団の価値だと思います。その価値を高める努力をしていかないと」。

 現在、全国に30を超える独立球団がある。その中から選ばれなければならない。これまでの指名実績と環境面、そしてなんといっても今年の球団史上最高位と最多の指名は、この上ない訴求ポイントになるだろう。

 独立リーグからNPBを目指そうという選手たちに「入りたい球団」として挙げられることは間違いない。

 「サンダーバーズからNPBへ」―。

 今後に向けて「さらに育成に力を入れていきたい」と誓う永森社長は、後輩たちがどんどん続いてくれることをせつに願っている。

 我こそはという選手はぜひ挑戦を!

(*日本海リーグのトライアウト⇒こちらを参照

富山GRNサンダーバーズ・永森茂社長(写真提供:富山GRNサンダーバーズ)
富山GRNサンダーバーズ・永森茂社長(写真提供:富山GRNサンダーバーズ)

【ドラフト指名*内訳】

 独立リーグからのドラフト指名…総数23(支配下6・育成17)

 《ポジション別》

 投手  10(4・6)

 捕手   1(0・1)

 内野手  5(1・4)

 外野手  7(1・6)

 《リーグ別》

 北海道フロンティアリーグ 0

 北海道ベースボールリーグ 0

 BCリーグ         8(2・6)

 ベイサイドリーグ     1(0・1)

 日本海リーグ        3(1・2)

 関西独立リーグ      0

 四国アイランドリーグ   9(3・6)

 九州アジアリーグ     2(0・2)

【ドラフト指名選手*関連記事】

大谷輝龍・富山のオオタニサーン

松原快・「旬の男」

松原快・NPB戦で無類の強さ

松原快・藤田太陽の弟子

松原快・アラカルト

フリーアナウンサー、フリーライター

CS放送「GAORA」「スカイA」の阪神タイガース野球中継番組「Tigersーai」で、ベンチリポーターとして携わったゲームは1000試合近く。2005年の阪神優勝時にはビールかけインタビューも!イベントやパーティーでのプロ野球選手、OBとのトークショーは数100本。サンケイスポーツで阪神タイガース関連のコラム「SMILE♡TIGERS」を連載中。かつては阪神タイガースの公式ホームページや公式携帯サイト、阪神電鉄の機関紙でも執筆。マイクでペンで、硬軟織り交ぜた熱い熱い情報を伝えています!!

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