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夏ドラマ後半、最後まで見続けたい7本+Netflixの1本 “味が濃すぎる”ドラマも【1/2】

武井保之ライター, 編集者
『あの子の子ども』(関西テレビ・フジテレビ)公式サイトより

後半に入った夏ドラマ。オリンピックの話題に隠れがちだった今夏は飛び抜けた人気ドラマがない一方、ドラマファンの間でじわじわと盛り上がっているドラマもある。ここからの最終話へ向けた展開が、SNSやネットニュースの話題をさらっていくかもしれない。

そんななか、最後まで見続けたい注目作には、『あの子の子ども』(関西テレビ・フジテレビ)、『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』(NHK総合)、『錦糸町パラダイス~渋谷から一本~』(テレビ東京)、『飯を喰らひて華と告ぐ』(TOKYO MX)、『海のはじまり』(フジテレビ)、『しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~』(テレビ東京系)が挙げられる。

加えて、配信ドラマでは、Netflixで国内ドラマTOP10に先週までランクインしていた『0.5の男』(WOWOW)が飛び抜けておもしろい。

(後編「不作ではなかった?夏ドラマ後半の注目作 『新宿野戦病院』急展開のクドカン節へ高まる期待【2/2】」へ続く)

『あの子の子ども』が寄り添う女子高生の選択

後半に入ってグッとおもしろくなっているのが『あの子の子ども』だ。16歳の高校生カップルの女子高生が妊娠してしまう物語だが、2人と家族に起こるさまざまなリアルが繊細に映し出される。

現実的な問題を踏まえて最良と思える選択肢を、当事者の立場から真剣に見つめる。ひとつの道はそれまでの自由な生活や将来の夢から切り離される。生涯消えない心の傷を追うかもしれない女子高生が未来を決めなければいけない難しさを、彼女を中心に切々と描く。

2人の親たちの対応にも共感や気づきがある。テレビドラマっぽいドラマチックな言動などは一切なく、相手の男子高生もその親たちも、2人のこれからの人生に真摯に向き合う。そんな姿から、親子それぞれの気持ちに感情移入し、心を揺さぶられる。

どの道を選んでも女子高生が納得できるのなら間違いではない。しかし、心の揺れがある未成熟な年頃でもある。その決断には、親や周囲の大人の関わりが必要になるだろう。ドラマはそんなすべてを映している。彼女の思いに寄り添うラストが期待される。

尖り方が異彩を放つグルメドラマ『飯を喰らひて華と告ぐ』

中盤から気になっているのが、仲村トオルの怪演が凄まじい『飯を喰らひて華と告ぐ』。1話12分のグルメドラマだが、登場人物のキャラクターと物語性がとにかく尖っている。大まじめにふざけているようなコメディタッチのヒューマンドラマであり、そこにグルメをかけている。

毎話のフリとオチがSNSで話題になっており、主人公の店主は仲村トオルのハマり役。グルメドラマの新たな名物キャラクターが誕生している。彼の再評価にもつながっているようだ。

スタートから安定しておもしろいのは『錦糸町パラダイス』。錦糸町という街の温度感を、自虐も内包しながら、丁寧にすくいあげるコミカルなドラマだが、同時にさまざまな登場人物それぞれの人生の痛みを巧みに映し出し、リアルな社会問題にも鋭く切り込む。

そして、ドラマファン好みのキャストが集結している。メインの掃除屋3人(賀来賢人、柄本時生、落合モトキ)と物語のカギを握る“過去の過ち”を暴くルポライター(岡田将生)の人生が交錯するのはこれから。3人の過去に何があったのか、気になっている視聴者は多いだろう。

愛らしい家族の姿をおもしろおかしく、切なく描く『かぞかぞ』

そのほか、『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』は、後半に入っていよいよ主人公の岸本七実(河合優実)が作家への道を歩み出す。

これまでは、父の急逝の後、ダウン症の弟と車いす生活の母を大切に思いながら、明るく健気に生きてきた七実の紆余曲折が、おもしろおかしく、ときに切なく描かれてきた。とくに、父との家族の思い出や、ときおり召還させる父と、娘および息子との会話は視聴者を涙させた。

第7話からは物語が新しい章に入るが、愛らしい家族のドタバタも引き続き映されるだろう。一方、七実と家族の間に新たな問題が起こる予感もある。ますます彼らの生き様に引き込まれて生きそうだ。

■後編「不作ではなかった?夏ドラマ後半の注目作 『新宿野戦病院』急展開のクドカン節へ高まる期待【2/2】」へ続く

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ライター, 編集者

音楽ビジネス週刊誌、芸能ニュースWEBメディア、米映画専門紙日本版WEBメディア、通信ネットワーク専門誌などの編集者を経てフリーランスの編集者、ライターとして活動中。映画、テレビ、音楽、お笑い、エンタメビジネスを中心にエンタテインメントシーンのトレンドを取材、分析、執筆する。takeiy@ymail.ne.jp

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