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不作ではなかった?夏ドラマ後半の注目作 『新宿野戦病院』急展開のクドカン節へ高まる期待【2/2】

武井保之ライター, 編集者
『新宿野戦病院』(フジテレビ系)公式サイトより

後半に入った夏ドラマ。今夏は飛び抜けた人気ドラマがない一方、ドラマファンの間でじわじわと盛り上がっているドラマもある。ここからの最終話へ向けた展開がSNSやネットニュースの話題をさらっていくかもしれない。配信ドラマでも気になる作品がある。

(前編「夏ドラマ後半、最後まで見続けたい7本+Netflixの1本 “味が濃すぎる”ドラマも【1/2】」より続く)

引きこもりが主人公の家族ドラマの傑作『0.5の男』

配信ドラマでは、Netflixの国内ドラマTOP10に先週までランクインしていた『0.5の男』(WOWOW)がすばらしい。まさに日本のドラマらしい、ほのぼのとした心温まる家族の物語だ。そこにしっかりと時代性と社会問題を入れ込んでいる。

本作は、松田龍平演じる、家族と同居する40歳の引きこもり男性が主人公。家の建て替えをきっかけに、両親と妹家族との“2.5世帯”住宅に住むことになり、思春期の姪と幼い甥と“0.5の男”の衝突や他愛のないやりとりから、彼の人生が前向きに動き出す様を映し出す。

主演の松田龍平と姪を演じる白鳥玉季の好演が光っている。お互いに相容れない2人の距離が次第に近づき、少しずつ心を通わせていくなかで、それぞれの心のなかの何かが崩れる。2人はお互いに対しても周囲に対しても変わっていく。

沖田修一氏が脚本と監督で参加するオリジナルドラマ。近年稀に見る傑作家族ドラマに仕上がっている。

WOWOW制作の近年のオリジナルドラマは、事件をシリアスに取り上げる社会性の高いドラマや、家族の物語を丁寧に描く心温まるドラマなど、ドラマファン好みの良作が多く、民放の連続ドラマのような当たり外れが少ない。

また、Netflixオリジナル日本ドラマがエンターテインメント大作に寄っているのとは、作品性が対照的。人気原作を実写化する大手映画会社のエンターテインメント大作より、インディペンデント系の作家性の高い小規模な単館系映画が好きな人なら、WOWOWドラマは良作が多いと感じるに違いない。逆であれば、Netflixドラマのほうが合っている。視聴者それぞれの好みによって支持は分かれるところだろう。

WOWOWドラマの一部は、Netflixやアマゾンプライムでも配信されているが、幅広い層に届いてほしいと感じる良作が多い。

おもしろいだけではないラストに期待がかかる『新宿野戦病院』

見続けたい夏ドラマ最後の1本は『新宿野戦病院』(フジテレビ系)。毎話のストーリーは、ワンシチュエーションのコント的なおもしろさに溢れているが、第10話からはこれまでと物語の流れが変わりそうだ。

とりとめない感のあるこのままでは終わらないだろう。最後をどうまとめて、どういうメッセージを送るのか。宮藤官九郎氏の脚本だけにラストがどうなるのか気になる。

『離婚しようよ』(Netflix)では、それまでの物語の“終わり”のその後まで描いて、心温まる余韻を残した。『新宿野戦病院』は、これまでの流れを受けた何かを最終話で視聴者に残すだろう。おもしろいだけでは終わらないはず。そんな予測不可能な期待値は、夏ドラマのなかでもっとも高いかもしれない。ラストへ向けた展開に注目したい。

この夏ドラマのなかで群を抜いてすばらしい『あの子の子ども』『かぞかぞ』『0.5の男』とともに注目したい。

■前編「夏ドラマ後半、最後まで見続けたい7本+Netflixの1本 “味が濃すぎる”ドラマも【1/2】」へ

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ライター, 編集者

音楽ビジネス週刊誌、芸能ニュースWEBメディア、米映画専門紙日本版WEBメディア、通信ネットワーク専門誌などの編集者を経てフリーランスの編集者、ライターとして活動中。映画、テレビ、音楽、お笑い、エンタメビジネスを中心にエンタテインメントシーンのトレンドを取材、分析、執筆する。takeiy@ymail.ne.jp

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