前半苦戦の夏ドラマ、ちょっと気になる2本+8月必見の配信ドラマ1本【2/2】
出足が鈍く、世の中的な話題作がほぼない今年の夏ドラマ前半戦。そんななかだが、作品力の高いドラマやこの先が気になるドラマもある。
今期ダントツでおもしろいのは『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』(NHK総合)だ。ほか気になるドラマは4本ほど。さらに、配信ドラマでは、見逃せない8月配信開始のNetflixオリジナルドラマがある。
(前編「話題作ない夏ドラマ前半、見続けるべき作品力の高い3本【1/2】」より続く)
キャラクターのインパクトで見続けてしまうドラマ
おもしろいかどうかはさておき、気になってつい見続けてしまうのが、『ビリオン×スクール』(フジテレビ系)と『しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~』(テレビ東京系)。
『ビリオン×スクール』は、“億万長者=ビリオネア”の主人公・加賀美零(山田涼介)が、超高精度の教育用AIプログラム開発のために身分を隠して高校教師になる、テレビドラマらしいコテコテの学園ドラマ。
放送回ごとに「いじめ」「スクールカースト」「引きこもり」など学校を取り巻く社会問題をテーマにするが、そこで起きる事件や出来事にリアリティがなく、いかにも作りものっぽいストーリー。それでも見てしまうのは、山田涼介演じる加賀美零のキャラクターの強さだろう。
IQは高いが傲慢で自信過剰。言いたいことをすべて上から目線で口にするなどクセのあり過ぎる性格のインパクトの強さでキャラ立ちさせ、あの整い過ぎたビジュアルを滑稽な役どころで十分に活かしている。完璧な人間のはずなのに、何かが欠けていて、どこか抜けている。そんなキャラが愛らしく見え、つい引き込まれてしまう。
巧みなキャラクター設定と演出、さらに山田涼介のまとうオーラと演技力が重なり合って化学反応を起こした名キャラクターと言えるだろう。彼を見るだけで価値があるドラマになっている。
安易なネットやSNSでの匿名発信に対しての警鐘
『しょせん他人事ですから』は、匿名のネット社会の炎上やSNSトラブル案件を解決していく弁護士・保田理(中島健人)が主人公のリーガルドラマ。
ネットの誹謗中傷や、悪意のあるデマなど、誰もが気軽に発信するSNSで実際に起こっている被害者から加害者への訴訟手続きをリアルに描き、安易な匿名発信に対する警鐘を鳴らしている。
ドラマタイトルは、主人公・保田理の仕事への信条を表しているが、匿名のSNS社会で無意識に他人へ悪意を向けるネット民の思考も指すダブルミーニングだろう。彼らに自分が他人にしていることの悪質さと、同時に自身の生活をも危険にさらしていることに気づかせようとする狙いがある。
第1話、第2話では、他人を匿名で誹謗中傷していた主婦が社会的制裁を受けるまでがリアルに映し出された。ニュースで事実の一部だけを知るのと、その詳細な経緯をドラマとして見るのではまったく伝わってくるものが違う。
ライトでコミカルなタッチで描かれているが、実は社会性の高いドラマだ。Xをはじめ、誰もが無意識に容易く他人を傷つけるSNSの存在意義を問いかける、意義のあるドラマだ。
世界的人気のNetflixオリジナルドラマのシーズンファイナル
配信ドラマで8月に見逃せないのが、Netflixオリジナルドラマ『アンブレラ・アカデミー』シーズン4(8月8日配信)。
『アンブレラ・アカデミー』は、アメリカン・コミックスを原作にし、2019年にシーズン1が配信された特殊能力を持つスーパーヒーローたちのドラマ。
1989年に妊娠していない43人の女性が同日同時刻に突然出産するという事件が世界で発生。そこで生まれた特殊な能力を持つ子どもたちを、億万長者の実業家レジナルド・ハーグリーヴズ卿が養子として引き取り、世界を救うスーパーヒーローに育てる“アンブレラ・アカデミー”を創設するところから物語ははじまる。
これまでにシーズン3まで配信され、地球が8日後に滅亡することを知ったアカデミーの生徒たちが、時空を超えて絡み合った謎を追いながら地球を救うために戦う壮大な物語が、彼らそれぞれが抱える複雑な人間ドラマとともに描かれてきた。
いよいよファイナルとなるシーズン4では、ホテル・オブリビオンでの最終対決の末に主要メンバーのタイムラインがリセットされ、それぞれの特殊能力が剥奪されたあとの物語が描かれる。
Netflix最大の人気シリーズのひとつが迎える結末に、世界中の注目が集まりそうだ。
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