阪神・淡路大震災から29年 いざというとき賞味期限を気にせず飲食できる備蓄食品とは #専門家のまとめ
2024年1月17日。1995年1月17日に発生した阪神淡路大震災から29年を迎えた(1)。
2024年1月1日には石川県の能登半島で最大震度7を計測する地震が発生した。この揺れは、阪神淡路大震災の揺れに匹敵すると専門家は指摘している(2)。
いざ地震発生、被災してしまったとき、まず命綱となるのが水だ。水道が通っていればいいが、今回の能登半島地震では発生から2週間経った1月16日にも石川県内で約5万戸が断水している(3)。水道管の耐震性が脆弱だったことが原因だ。阪神淡路大震災でも水道の復旧に時間がかかり、最も遅かった神戸市では1995年4月17日に全戸の水道が復旧した(4)。発災から実に3ヶ月かかっている。
いざというとき、手元にあるペットボトル水の期限が切れていたとしても、その期限は「飲めなくなる期限」ではない。ガラス瓶と違って、ペットボトルは容器を介して水が蒸発していくため、内容量が減っていく。そこで、明記してある内容量が担保できる期限が印字してあるのだ。ある程度の誤差範囲までは認められるが、その誤差範囲を超えてまで減ってしまうと、「計量法」という法律に抵触することになり、販売ができなくなる。だから、期限が印字してあるのだ。
▼ペットボトル入りミネラルウォーターの賞味期限は内容量が担保される日付。たとえ賞味期限が切れていても飲める場合が多い
缶詰は真空調理されているので3年間が賞味期限とされている。東京農業大学で長年、食品保存の研究をしていた徳江千代子先生は「味の濃いものやフルーツのシロップ漬けなら15年は保存できた」という趣旨を話している。
▼缶詰の賞味期限は3年。直射日光や高温高湿の場所を避けて保管してあれば、印字してある期限を超えても食べられる場合が多い
ツナ缶会社の社員は、賞味期限が切れる寸前や切れたものを好んで食べるそうだ。その方が味がしみているという。支援食料は炭水化物に偏り、タンパク質が不足し、避難所の階段を昇るのが大変になったという声を東日本大震災で伺った。
▼缶詰は製造から日数が経ったものの方が味がしみている
栃木県那須塩原市のパン・アキモトが製造する「アキモトのパンのかんづめ」は、賞味期限が5年間(5)。製造から数年経ってもふわふわのまま。再度購入する場合、それまで保管していたものをパン・アキモトが引き取ることも可能で、国内外の被災地や海外の戦闘地へと寄付してくれる(6)。
▼パンの缶詰は、開けてすぐ食べられるし、咀嚼力が低い幼児から高齢者まで幅広い世代で食べることができる。備蓄食品の一つとしておすすめ
また、非常時に役立つのがアルファ米だ。水、またはお湯をそそぐだけでご飯になる。
▼アルファ米は水かお湯を注ぐだけでご飯になる。多少、賞味期限が過ぎていても水分含有量が非常に低いので日持ちする。備蓄食品の一つとしておすすめ
乾麺やそうめん、乾燥蕎麦など、乾麺も年単位で賞味期限がある。多少過ぎたとしても、適切な場所(直射日光や高温高湿を避けて)に保管されていれば日持ちすることが多い。乾麺は、ゆでずに、水で戻すことも可能だ。
▼パスタやそうめん、蕎麦など、乾麺類は多少賞味期限が過ぎても適切に保管してあれば食べられることが多い。水戻しも可能
賞味期限は「おいしさのめやす」
以上、いざというとき、賞味期限を気にせず飲食可能な備蓄として
- ペットボトル入りミネラルウォーター
- 缶詰(魚、豆類など)
- パンの缶詰
- アルファ米
- 乾麺(パスタ、そうめん、蕎麦など)
を挙げてみた。
このほか、レトルト食品でも、5年保存が可能なもの、お湯や電子レンジを使わずに開けるだけで食べられるものも出ている。多少過ぎても大丈夫。
いずれの食品も、直射日光や高温高湿を避けて保存してあることが条件だ。
これから新たに支援する物資は、賞味期限にゆとりのあるものが適切である。だが、いざというとき、手元に期限が過ぎたものしかなければ、非常時にはあるものを有効活用するしかない。
コロナ禍で食料品の資源が枯渇してきたとき、英国では、政府が設立した非営利組織であるWRAP(ラップ)が、「賞味期限が過ぎてもここまでは飲食可能」というガイドラインを示した(7)。2020年4月のことだ。対応は非常に早かった。
一方で、日本では、備蓄食品が廃棄されている現状もこれまで多く見てきた。たとえば国の行政機関のうち、42%で備蓄食品の入れ替え時に全部廃棄するという現状が総務省の調査でわかった(8)。2010年から2014年までの5年間で、総額3億円相当の176万食の備蓄が廃棄されたという毎日新聞の調査結果もあった(9)。
前述の通り、府省庁では備蓄食品を捨てずに寄付する動きがここ数年で広がってきている。次にすべきことは、非常時に、業界ルールである「3分の1ルール」などの販売期限に固執することなく、臨機応変に対応することだ。
▼食品業界は食品ロス削減のために非常時のルール緩和を
なお、被災していない家庭では、ローリングストック法(10)を用いて、使っては買い足す循環させる備蓄法をおすすめしたい。
▼使った分だけ買い足して循環させる「ローリングストック法」で普段から備蓄を
参考情報
1)繰り返される災害、被災地に向け「ともに」 阪神・淡路大震災、発生から29年迎える神戸に灯籠文字浮かび上がる(神戸新聞、2024/1/16)
2)能登半島地震の特徴と原因は?最大震度7の揺れと津波(随時更新)(NHK、2024/1/15)
3)断水が長く続くのはなぜ?復旧を阻む地方の課題「水道管の“耐震化”が急務」能登半島地震【Nスタ解説】(TBS NEWS DIG、2024/1/16)
4)阪神・淡路大震災教訓情報資料集【01】上水道の復旧(内閣府、防災情報のページ)
5)【那須塩原市】長期保存できて備蓄に最適な缶詰パン。「アキモトのパンのかんづめ」を購入してみました。(なすがすきー、Yahoo!ニュースエキスパート、2024/1/9)
6)「9・9・9」(スリーナイン)に始めた 9(救)缶鳥プロジェクト(井出留美、Yahoo!ニュースエキスパート、2017/9/9)
7)巣ごもり消費で疑問「賞味期限切れは捨てた方がいい?」英では賞味期限過ぎても捨てないガイドラインを推奨(井出留美、Yahoo!ニュースエキスパート、2020/4/27)
8)【4.14を前に】国の行政機関42%が災害備蓄食を全廃棄「食品ロス削減」と言いながら食品を捨てている(井出留美、Yahoo!ニュースエキスパート、2019/4/11)
9)3.11を迎え防災を考える 日本の食品ロスにカウントされない備蓄食品の廃棄、5年で176万食、3億円(井出留美、Yahoo!ニュースエキスパート、2017/3/11)