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「政府目標を8年前倒しで目標達成」の食品ロス、本当に減ったと言えるのか? #専門家のまとめ

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
食品ロス(提供:イメージマート)

2022年度の食品ロス推計値が農林水産省・環境省により発表された。農林水産省は「令和4年度の事業系食品ロス量が削減目標を達成!」と公式サイトに載せている。読売新聞は、政府が新たな推計値を発表する3日前の2024年6月18日、「政府目標を8年前倒しで達成していた」と報じた。

家庭系にはまだ課題が残されているというものの、事業系食品ロスに関しては、もう目標達成して十分に削減できたといえるのだろうか。

ココがポイント

2022年度食品ロス量(472万トン)を基に推計した結果、食品ロスによる経済損失の合計は4.0兆円
出典:消費者庁 2024/6/21(金)

加盟店(1店舗)の年間廃棄ロス額は468万円(中央値)であった
出典:公正取引委員会 2020/9/2(水)

食品ロス量の減少が見られた。特に外食産業では、2019年比で2021年に22%、2022年に42%と大幅に減少した
出典:朝日新聞SDGsACTION! 2024/7/2(火)

家庭系及び事業系の食品ロスを2030年度までに2000年度比で半減するとの目標が定められています
出典:環境省 2024/6/21(金)

エキスパートの補足・見解

日本は食品ロスの発生により、年間4兆円相当の金額損失を出している。

また、公正取引委員会の調査によれば、大手コンビニエンスストアでは1店舗年間468万円(中央値)相当の食品を廃棄している。国内のコンビニ店舗数は55,000を超えている。この状況で、はたして「8年前倒しで食品ロス削減目標達成!」と喜べるか疑問である。

最新の食品ロス推計値は、コロナで外食産業が落ち込んだ影響がゼロではない。2019年と比べて2022年には外食産業の食品ロスが42%と大幅に減少している。

日本の「2030年までに半減」目標は、食品ロスが年間980万トンと、今より非常に多かった2000年を基準年においている。

環境省・農林水産省のデータをもとに株式会社office 3.11で作成した食品ロス量の推移
環境省・農林水産省のデータをもとに株式会社office 3.11で作成した食品ロス量の推移

デンマークで取材した際「それで効果あるの?」と言われた。欧州はSDGsが採択された2015年を基準年に置く国も複数ある。英国は2000年に政府がWRAPという専門機関を立ち上げロス削減に取り組み続けているが、英国ですら2007年を基準に置いている。欧州やSDGsの目標設定はバックキャスティングだが、日本の目標の立て方はフォーキャスティング。

結論として、4兆円の食品ロスは、まだ減らす余地があるといえるだろう。

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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