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「分ければ資源 混ぜればごみ」生ごみ処理機1800回使った 年2兆1,519億円のごみ処理費を減らせ

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
韓国・スンチョン市での昼の会食後、食べ残った食べ物(筆者撮影)

2024年9月から10月にかけて、米国へ出張した。カリフォルニア州では、ごみは、たった3分類のみだった(1)。

カリフォルニア空港に設置されたごみ箱。青がリサイクルできるもの、緑が食品ロスを含む生ごみなどコンポストにできるもの、黒は埋め立てせざるを得ないもの(筆者撮影)
カリフォルニア空港に設置されたごみ箱。青がリサイクルできるもの、緑が食品ロスを含む生ごみなどコンポストにできるもの、黒は埋め立てせざるを得ないもの(筆者撮影)

だが、肝心なのは、食品ロスを含む生ごみを分別回収している点だ(2)。

緑色のごみ箱には、食品ロスを含む生ごみや、落ち葉・剪定枝など、コンポスト(堆肥)になるものを入れる。

青色のごみ箱には、リサイクルできるものを入れる。たとえばプラスチック類や缶、ビン、紙類など。

黒色のごみ箱にはリサイクルできず、埋め立てせざるを得ないものを入れる。汚れた容器包装や使用済みのゴム手袋など。

カリフォルニア州のごみの3分類。緑がコンポスト、青がリサイクル可能なもの、黒が埋め立てせざるを得ないもの。カリフォルニア州Recologyにて(筆者撮影)
カリフォルニア州のごみの3分類。緑がコンポスト、青がリサイクル可能なもの、黒が埋め立てせざるを得ないもの。カリフォルニア州Recologyにて(筆者撮影)

日本は生ごみを燃やし年2兆1,519億円の税金をごみ処理に費やす

一方、日本では、ごみを10種類以上に分類することが多い。だが、食品ロスを含む生ごみは、「燃やすごみ」や「燃えるごみ」として一緒くたにし、焼却処分する自治体がほとんどだ。

食品ロスを含む生ごみは、その重さの80%以上が水分である。燃えにくく、燃やすには大量のエネルギーとコストがかかる。

2024年3月28日、環境省が発表した一般廃棄物の処理費は、年間2兆1,519億円に及ぶ(3)。これは、われわれ消費者が納めた税金の結集だ。

筆者が食品ロスの講演で使用しているパワーポイント資料の一部(筆者提供)
筆者が食品ロスの講演で使用しているパワーポイント資料の一部(筆者提供)

捨てられる恵方巻(日本フードエコロジーセンター提供写真)
捨てられる恵方巻(日本フードエコロジーセンター提供写真)

食品ロスを含む生ごみを乾燥させるとどれくらい重量が減るか

筆者は2017年6月から、家庭用生ごみ処理機で乾燥前後の重量を測定している。処理機のエネルギーとしては、自然電力100%の電力会社と契約して自然電力を使っており、石油系は使っていない。処理機の大きさは、縦横とも、A4サイズぐらい。

これまで1,800回計測した結果を、100回ごとの平均値として以下に示す。

2017年6月16日から2024年10月27日まで計測した結果をもとに表にまとめたもの(Hitomi Kawafuchi制作)
2017年6月16日から2024年10月27日まで計測した結果をもとに表にまとめたもの(Hitomi Kawafuchi制作)

以下のグラフのうち、水色で示した部分が、乾燥によって減らすことができた部分である。

2017年6月16日から2024年10月27日まで計測した結果をもとに表にまとめたもの(Hitomi Kawafuchi制作)
2017年6月16日から2024年10月27日まで計測した結果をもとに表にまとめたもの(Hitomi Kawafuchi制作)

減らすことのできたごみ重量は累計470kg。体重60kgの大人およそ8人分だ。減らすことのできた重量の平均割合は70.7%。乾かすだけで、7割以上もの重量を減らすことができるのだ。

筆者はマンションに住んでおり、乾かした後のものはコンポストに入れるか、ごみとして処分している。庭や畑のある人なら、乾かさないでそのままコンポストにできる。

コンポストはベランダでもできる(筆者撮影)
コンポストはベランダでもできる(筆者撮影)

世界の潮流は「分ければ資源」

世界の潮流は、食品ロスを含む生ごみや、落ち葉・剪定枝などの有機性廃棄物を「ごみ」ではなく「資源」として活用することだ。

韓国は、1996年にはたった2.6%しかなかった生ごみリサイクル率を今では98%まで上昇させ、世界の注目を浴びている(4)(5)。

その韓国のごみ政策を長年、研究してきたニューヨーク市では、2024年10月から、有機廃棄物のリサイクルを義務付けた(6)。街中にはスマホで操作でき、生ごみを投入できるスマートコンポストが登場している(7)。

スウェーデンの第三の都市マルメ市では、生ごみなど、食料廃棄物をバイオガスにして走るバスが走っている(8)。

スウェーデン・マルメ市内を走るバス。バナナの皮やコーヒーのかすなど、食料廃棄物をバイオガスにしたエネルギーで走っている(筆者撮影)
スウェーデン・マルメ市内を走るバス。バナナの皮やコーヒーのかすなど、食料廃棄物をバイオガスにしたエネルギーで走っている(筆者撮影)

もちろん、すべてが理想どおりではない。2024年11月4日〜7日、筆者が韓国へ渡航したところ、南部のスンチョン市で出された会食の料理は、多くが食べ残され、誰も持ち帰らなかった(この記事のトップ画像の写真)。

2024年9月23日〜25日、ニューヨーク市の行政に聞いたところ、生ごみ回収のコンポスト化はコストがかさむため、なかなかうまく事が運んでいないとのことだった。

だが、少なくとも、生ごみを資源としてみなし、資源として活用しようと努力している姿勢がうかがえる。

日本には、次の標語がある。

分ければ資源 混ぜればごみ

今こそ、食品ロスを含む生ごみを「資源」として活用すべきときだ。それが、人々の意識や行動を変え、食品ロスを減らすことにもつながる。

参考情報

1)食品ロス削減先進地へ カリフォルニア州の試み 井出留美の「食品ロスの処方箋」【38】(井出留美、朝日新聞SDGsACTION!、2024/11/6)

2)小学生のための環境リサイクル学習ホームページ(資源・リサイクル促進センター)

3)一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和4年度)について(環境省、2024/3/28)

4)「韓国の生ゴミ処理」に驚いた海外メディア…WP「世界に教訓与える」(ハンギョレ新聞、2024/8/13)

5)South Korea recycles 98% of its food waste. What can it teach the world?(The Washington Post, 2024/8/9)

6)Mayor Adams Announces Completion of Roll-out of First-Ever No-Cost, Pain-Free Citywide Curbside Composting Program(The Official Website of the City of New York, 2024/10/7)

7)ニューヨーク市で進行中 日本が学ぶべき生ごみ・有機ごみの資源化政策 井出留美の「食品ロスの処方箋」【26】(井出留美、朝日新聞SDGsACTION!、2023/11/9)

8)まるで映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のデロリアン?バナナとコーヒーで走るスウェーデンのバス(Yahoo!ニュースエキスパート井出留美、2019/11/25)

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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