関西中学硬式野球「タイガースカップ」に出場する阪神タイガースジュニア 中島大誠(忠岡ボーイズ)
■タイガースカップとは
18年ぶりのリーグ優勝、38年ぶりの日本一に輝いた阪神タイガースだが、次代の野球選手を育て、野球の楽しさを伝える振興活動にも力を入れている。幼児から中学生までを対象としたタイガースアカデミーは6年目、女子野球の阪神タイガースWomenは3年目となる。
そして毎年11月から12月にかけて開催しているのが、中学硬式野球の関西ナンバー1決定戦である「タイガースカップ」だ。
これはシニアリーグ、ボーイズリーグ、ヤングリーグの各予選大会を勝ち抜いた12チームが、リーグの垣根を越えてトーナメント方式で戦って優勝を目指す大会だが、今年で19回目を迎えた。
各リーグの予選を勝ち抜いてきただけあって出場選手のレベルは高く、ネット裏には強豪高校野球部の指導者の姿も多く見られる。
■「阪神タイガースジュニア2021」から5人が出場
今年の大会には、2021年の阪神タイガースジュニアのメンバーだった5人が出場している。関西の小学生のトップ選手として「NPB12球団ジュニアトーナメント」でともに戦った彼らが2年の時を経て、今度は対戦相手として相まみえる。(「阪神タイガースジュニア2021」については本稿末を参照)
お互いにどんな意識で戦うのか、またかつてのチームメイトの姿はどのように映るのか、非常に興味深い。
ではまずは1日目、11月23日に阪神甲子園球場で行われた第1試合を振り返ろう。
■ヤング兵庫但馬VS忠岡ボーイズ
但馬 000 100 110 1 =4 H5、E1
忠岡 001 010 010 2× =5 H11、E1
《バッテリー》
但馬:杉本、岡本、田中煌―田村
忠岡:中島、二村―二村、本村、酒井
【得点経過】
三回裏…ヒットと盗塁で1死二塁から、2番・中村の中前タイムリーで1点。(0-1)
四回表…失策とヒットで無死一、三塁から、併殺打の間に1点。(1-1)
五回裏…2死から三塁打の3番・杉野を4番・中島が左前打で還して1点。(1-2)
七回表…2死一、三塁から7番・浅田がライトへタイムリーを放って1点。(2-2)
《タイブレークで1死満塁から》
八回表…代打・古家の左犠飛で1点。(3-2)
八回裏…4番・中島の中犠飛で1点。(3-3)
十回表…押し出し四球で1点。(4-3)
十回裏…2連打で2点。忠岡ボーイズのサヨナラ勝利(4-5×)
■#5 中島大誠
忠岡ボーイズのキャプテンを務めるのが、「タイガースジュニア2021」の中島大誠選手だ。
「4番・ピッチャー」でマウンドに上がると最初のバッターを空振り三振に斬り、三者凡退で立ち上がった。その後もスイスイとアウトを重ねていくが、最大のピンチが四回に訪れる。
先頭を味方の失策で出塁させると、次打者のヒットで一、三塁となった。しかし中島選手は落ち着いており、併殺打に打ち取って最少の1失点のみで切り抜けた。
球数制限により六回までで降板となったが、その後はサードに就いてゴロをしっかりさばくなど、安定した守備を見せた。
打っても五回に勝ち越し打、八回に同点犠飛を放って、投打で勝利に大きく貢献した。
■投打ともに大活躍
試合後、「緊張は全然なかった」と振り返った中島選手。いつもどおりの平常心で臨めたと胸を張る。
「いつも立ち上がりが全然ダメだけど、今日はしっかり3人で切れたのでよかったです。自信のあるまっすぐでどんどん押していった。最近は変化球もストライクが入るようになってカウントが作れるようになった。スタイルはまっすぐで押しきるという感じです」。
キレのあるストレートは相手も打ちあぐねており、許したヒットは6回でわずかに2本だった。制球を乱すこともなく、非常にまとまっていた。
ここ最近は打撃の調子があまりよくなかったというが、それだけに「こういう大舞台なので、しっかり楽しもうと思った」という強心臓ぶりだ。
実際、「笑顔でニヤけながら打席に入った」と言い、「力まず楽に打てたのでよかったです」と、いい笑顔を見せてくれた。
■頼もしいキャプテン
このところの試合ではサヨナラ勝ちが多いそうで、この日も2度追いつかれ2度勝ち越されたが、「どれだけ点差が開いても、絶対にいけるっていうのがあります」と、チームとしても勝利への執念と自信があるから、あきらめることはないという。
「こういう緊迫した場面にも徐々に慣れてきて、いい感じでやれています」。
充実感が漂う表情で答える。
中島選手もキャプテンとして、攻撃前の円陣では毎回さまざまな声出しをしている。この日はたとえば「俺らのほうが相手より余裕で努力してるから、絶対にいける!」などの言葉でチームメイトを奮い立たせていた。
ネット裏では相手の応援団の声が非常に大きかったが、「僕が気にしてたら試合にならないんで、ピッチャーにも『バッターに集中して、周りのことは気にすんなよ』と言いました」と声をかけて鼓舞するなど、非常に頼もしいキャプテンだ。
ジュニアのころは、どちらかというとおとなしい印象だったが、今は発する言葉も力強く、チームメイトからも頼りにされているのが窺える。
「次の相手もレベルが高いと思うので、今日みたいに初回から全員で集中して、絶対に勝ちきります!」
中島キャプテンを中心に士気を高める忠岡ボーイズは、次戦では北摂リトルシニアと対戦する。
(撮影はすべて筆者)
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