Yahoo!ニュース

5~6月に大量発生!赤くて小さいあの虫の正体と対処法

有吉立アース製薬(株)研究部で害虫飼育を担当
(写真:イメージマート)

5~6月にかけて出現する小さくて赤い虫がいます。その赤い色から人の血を吸っているのではないかと思う方が多いようですが、実際には人を襲うことはありません。でも、なぜこの時期だけ現れるのでしょうか。赤い虫の正体をお教えします。

赤い虫の正体は?

この虫の名前は「カベアナタカラダニ」と言います。名前の由来は、カベアナ(壁穴)に入り込むというわけではなく「壁」に居て、眼の後ろに「穴」があることから付いたものとなります。タカラという名前は、子どもたちが捕まえるセミやバッタなどの虫にこのダニの幼虫が寄生していて、まるで赤いアクセサリー(宝:タカラ)のように見えることから名付けられたそうです。

カベアナタカラダニの好物は「花粉」

赤い色をしているため血を吸って生きていると想像されがちですが、カベアナタカラダニの成虫は実際には花粉を食べて生きています。このダニが発生する今の時期、コンクリートなどに落ちている、人の目では見えないような微細な花粉を食べているのです。カベアナタカラダニは、自身の体をポンプのように機能させることができ、体の横の排気口を使って体を膨らませたり縮めたりしながら花粉を吸い込んで食べています。

コンクリートを食べていると勘違いされるくらいブロック塀やベランダなどのコンクリートに居るところを見かけることが多いです。

なぜ赤いの?

カベアナタカラダニの体が赤いのは、強い紫外線から自身を守るために体内に抗酸化物質を大量に蓄積しているからと言われています。この抗酸化作用を持つカロテノイドの一種が体色を赤く見せています。鮮やかな赤色は敵に目立ちそうですが、カベアナタカラダニの天敵であるアリなどの昆虫の多くは赤色光を認識できないため、特に目立つわけではないようです。

1年に1回しか見ないのはなぜ? 

カベアナタカラダニは5~6月くらいの時期にしか見ることがありません。これは、ライフサイクルによるものです。春先に幼虫が出てきて、5~6月に成虫になります。この時期が一生の中で最も大きく、約1mmになります。小さいながらも大量に発生するため、目立ちやすいのです。

見かけたときの正しい対処法

屋外で見つけた場合

ベランダや庭先など屋外で大量に見かけ、不快に感じるときは、ホースの水で洗い流すか、不快害虫用のスプレー剤を噴霧するとよいでしょう。

また、カベアナタカラダニが発生するこの時期に、ベランダなどの壁などに洗濯物や布団を直接干すと、ダニが付着して、潰れると干したものが汚れてしまうため、避けた方が賢明です。

写真:イメージマート

屋内で見つけた場合

家の中に入ってきた場合は、潰さないことが重要です。誤って潰してしまうと、体液が皮膚に付着し皮疹ができることがあります。また、赤い色が衣服に付着するとなかなか取れないので注意が必要です。家の中では、スプレー剤を直接噴霧するか、1匹2匹であれば、体液が出ないよう潰さず粘着テープにそっと貼り付け、虫に触らずにテープをたたんで処理するのもおすすめです。待ち伏せ効果があるスプレー剤を網戸やサッシに噴霧しておくと室内への侵入を防ぐことができます。

最後に…

期間限定でしか姿を見せず、刺すこともなく、人には何もしてこない虫ですが、赤いということから、「血を吸うの?」「危険なのでは?」という問い合わせが自治体や保健所に多く寄せられているようです。見た目が特徴的で、苦手と感じる人も多いのですが、人に危害を加えることはないので、安心してください。年に1回しか発生しないので、家の中で繁殖して増えることはありません。共存していくのがいいとは思うのですが、不快に感じる場合は、上記の駆除方法を試すことをお勧めします。

アース製薬(株)研究部で害虫飼育を担当

兵庫県出身。都内の美術学校卒業後、 家具店店員、陶芸教室講師など虫とは全く関係のない職業に就いていたが、1998年に地元・赤穂のアース製薬に入社以来、害虫の飼育を担当している。しかし、現在も虫は好きではない。著書に「きらいになれない害虫図鑑」(幻冬舎)※記事は個人としての発信です。

有吉立の最近の記事