北朝鮮の女囚たちが落ちた「緩慢な処刑」の残酷な日々
「脱北者は、経済目的の不法入国者で難民ではない」
中国政府は、脱北者を難民とはみなさず、摘発し次第、原則として北朝鮮に強制送還する措置を取っている。これと関連して、中国の外交官は今年3月、スイス・ジュネーブの国連本部で行われた国連人権理事会の付属の会議で、脱北者は難民ではないため、難民条約のノン・ルフールマン原則は適用されない、北朝鮮で拷問または大規模な人権侵害が行われているという証拠はない、などと主張した。
ノン・ルフールマン原則とは、送還後に自由や生命が脅かされかねない人々の送還を禁止する難民条約の条項だ。ちなみに日本も、主要各国が保護すべき難民としている難民申請者を、極めて杜撰な難民審査で不認定にし、収容施設に閉じ込めたり、強制送還したりしていると、国際社会から批判されている。
(参考記事:若い女性を「ニオイ拷問」で死なせる北朝鮮刑務所の実態)
さて、上述の中国の外交官の発言を覆す証言が山のようにあることは言うまでもないが、最近送り返された脱北者に対する人権侵害の状況も徐々に明らかになりつつある。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
4月に中国・遼寧省の丹東から北朝鮮に数十人の脱北者が送り返されたが、教化所(刑務所)の炭鉱で非常にきつい労働に追いやられている。
家族の一人が价川(ケチョン)教化所で服役している平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋は、面会に行った際に聞いた話として、数十人の元脱北者が送り込まれ、1日12時間、坑道から30キロもある石炭を背負って数キロ歩いて運び出す重労働を強いられていると述べた。
倒れたとしても、看守に「仮病を使うな」と殴りつけられ、無理やり働かされ続ける。
(参考記事:北朝鮮の15歳少女「見せしめ強制体験」の生々しい場面)
別の情報筋によると、元脱北者は最短で5年、韓国にいる家族と連絡を取って脱北した女性は最も長く10年の刑に服している。
彼女らは強制退去命令を出されても、北朝鮮がコロナを理由に受け入れを拒否していたため、1年以上中国の刑務所に勾留され、派遣された北朝鮮の保衛員(秘密警察)から取り調べを受けた。そのため、北朝鮮に送り返された後の取り調べは簡単なもので済まされ、すぐに教化所送りとなった。国際社会から隠蔽する意図がある意図もあったと言われている。
この施設には3千人の受刑者がいて、うち2000人が女性だ。彼女らは最初の1カ月だけ炭鉱労働、その後はアパレル、つけまつげ、靴工場に配属されるが、元脱北者は祖国(北朝鮮)を裏切ったとして、3カ月に延長される。また、家族の面会が制限されている。
北朝鮮の教化所で提供される食事は極めて貧弱で、受刑者は家族から差し入れられた食べ物でなんとか延命するが、彼女らはその機会も奪われている。つまり、すぐには殺さないが、栄養失調に追いやって死に至らしめるという「緩慢な処刑」が行われているわけだ。著しい人権侵害であることに疑いの余地はない。