雷鳥軍団を率いて通算8年目! 帝京魂ならぬ雷鳥魂でチームの連覇とNPB輩出に尽力する吉岡雄二監督
■通算8年目の指揮官・吉岡雄二監督
2014年から2017年まで富山GRNサンダーバーズ(2014年まで富山サンダーバーズ)で監督を務めたあと、翌年から3年間は北海道日本ハムファイターズで二軍打撃コーチとして腕を振るい、2021年からは“古巣“に舞い戻って再び雷鳥軍団で指揮を執る吉岡雄二監督。
穏やかな人柄で、選手をじっくりと温かく見守る。教え子たちからの人望も篤く、現役20年間と指導者歴13年の実績にもとづく指導には定評がある。
昨年のNPBドラフト会議では、球団史上最高位である2位指名(千葉ロッテマリーンズ・大谷輝龍)ほか、同最多の3名の指名(阪神タイガース育成1位・松原快、千葉ロッテマリーンズ育成3位・髙野光)、同初の地元出身選手の指名(松原)と、サンダーバーズとして数々の金字塔を打ち立てた。
彼らを育成し、起用してきた吉岡監督にとっても、喜びはひとしおだった。
さらに昨年は所属する日本海リーグで初代王者に輝き、独立リーグ日本一決定戦であるグランドチャンピオンシップでも健闘した。
リーグ連覇、そして日本一を目指す2024年は、どのような戦いを見せてくれるのか。
■5月11日 富山GRNサンダーバーズvs石川ミリオンスターズ(ボールパーク高岡)
◆ランニングスコア
石川 000 000 504=9(H14、E1)
富山 110 001 000=3(H9、E1)
勝…室峰
負…渡邊
◆バッテリー
石川…黒野、室峰、村上、上田楽―岡村
富山…林、渡邊、瀧川、日渡―東田
◆試合経過
サンダーバーズのホーム開幕戦は林悠太に託された。その期待に応えた林は、六回まで被安打5で0を並べる。
雷鳥打線も一回裏に三好辰弥、二回裏に松重亘輝、六回裏に墳下大輔がそれぞれタイムリーを放って小刻みに加点し、3点を挙げる。
ところが七回表、渡邊蒼が代打・川﨑俊哲と吉田龍生にタイムリーを、そして4番・上田大誠に3ランを被弾して5点を失い、逆転される。
さらに九回表、2点ビハインドながら登板した日渡柊太が、森路真の2点タイムリーにエラーも絡み、岡村柚貴にもタイムリーを浴びて4失点。
その裏、ミリオンスターズのクローザー・上田楽に3人で抑えられ、3-9で敗れた。
■吉岡雄二監督の総括
5月5日の開幕戦は敵地で勝利した。迎えた同11日はホーム開幕戦。楽しみに集まってくれたファンのみなさんに白星を贈りたかった吉岡監督は試合後、地元メディアの取材に真摯に応えた。
「ホーム開幕戦というところでファンの方たちに勝ちを届けたい思いがあったので、すごく残念ですね」と切りだし、「先取点を取ってリードする形で運んではいたんですけど、点が取れるところで最少の点数で終わったり」と流れを手放してしまったことを悔いた。
先発の林投手については本調子ではなかったと明かしたが、しかしその中で好投したことを評価した。とくに今年から導入されたピッチクロック(注:後述)やボークなどでリズムを崩しがちな中、「粘り強く0に抑えた。少し違う力がついてきたのかな」と目を細めていた。
失点したリリーフ陣には「まだまだ能力はある。渡邊はオープン戦からバッターに投げ込む感じはよくなってきている。今日は点を取られたけど、中身に関しては変わってきている」と庇い、「まだまだボール自体もレベルアップさせていきたい。そういうのが見えてくれば、しっかり抑えられる」と期待をかける。
日渡投手に関しても「試行錯誤している途中。レベルアップするためにいろいろ変えている部分もある」と、成長の過程であると強調した。
■全員の力、総合力で勝つ
今年の雷鳥軍団について、吉岡監督はこう語る。
「まだいろいろ伸びていく中で、変化はしていくとは思う。去年のように投手力が抜けているという感じではないけど、かといって個々の力がないわけではない」。
昨年と同じ戦い方が不可能なのは重々承知だ。昨年のサンダーバーズは、独立リーグでも稀有な150キロ超投手が4人そろい、五回までにリードすればほぼ勝利を手中に収めることができていた。
その4投手のうち大谷投手、松原投手は前述したとおりNPBへ、クローザーの山川晃司投手は社会人のロキテクノ富山へ、そしてもうひとり…。富山で2年目を迎えた日渡投手は悲願を成就すべく、今季に懸けている。
吉岡監督は「今年はどちらかというと全員の力で作っていくっていう感じですかね」と言い、「だから打者も、去年より得点力を上げられる可能性は全然ある。そういう部分も、ピッチャーと力を合わせてっていうところなのかなと思います」と、投打ともに総合力でチーム力を上げていくと力を込める。
■盗塁、走塁への意識
得点力を上げるために、「選手個々のいろんな特徴なりを見ながら、考えていきたいと思っています。それを打線としてうまく機能するように」とコンビネーションに頭をひねる。
開幕から、出塁するとどんどん足も仕掛けてきた。2試合で盗塁は4つ。
「オープン戦から走る意識は高めてきました。ただ、石川の阿部(大樹)のように誰かが飛び抜けて速いというのはなくて、隙があれば次の塁を狙うっていう、足の速さでなくというところですね」。
そのためには観察眼を磨き、状況を読むなど野球脳を高めなければならない。「そういうものはまだまだなので、練習では補えない部分を試合の中で経験して学習していく。試合の中で勇気が出ないこともあると思うので、根拠なりを持って」。盗塁だけでなく、走塁も得点力アップにつなげていく。
■NPBにもっとも近い2人の投手
投手陣の役割分担も「今の段階っていうところ」だが、決まった。昨年は開幕投手を務めるなど先発からスタートし、途中から中継ぎに転向した瀧川優祐投手には、ステップアップした役割を任せる。
「タッキーはもちろん後ろのほうで。成長していけるようにっていうところですね。去年はあの4人がいたので、そこ以外のところで投げることが多かったけど、今年はメインっていうところで。上にいく可能性を、どれだけ成長させられるかっていうところにトライですね」。
悔しい指名漏れを経験したが、それをバネにどれだけ上昇できるか。
日渡投手も同様である。
「日渡は今、いろいろともがいている。すぐに答えが出るということではないですね。やはり去年のままではいけないというところで、もう一つ可能性にチャレンジしているところ。夏場、それ以降に向けて球速を上げて、変化球の精度も違うものになるために、いろいろ考えている。やろうとしてもまだうまくいかないことのほうが多いけど、その段階。勉強中っていうところですかね。今やっていることを根気強く、辛抱強くやっていきたいですね」。
よりバージョンアップするための、産みの苦しみといったところか。吉岡監督としても彼らを夢の舞台に押し上げるべく、精いっぱいの手助けをする。
「そうすることで、ちゃんと勝つゲームっていうのもできるようになっていくので」。
今年もチームの勝利とNPB輩出、どちらも追い求めて辣腕を振るう。
(*注)
日本海リーグでは、今季からピッチクロックのルールが適用されている。
キャッチャーからの返球を捕球後、もしくはボール交換後に球審がプレーをかけたあと、投手は12秒以内に投球動作に入らなければボールカウントが1つ加算される。ただし無走者の場合に限る。
球場内に時計の表示はなく、時間の計測は塁審が行う。
(表記のない写真の撮影は筆者)