阪神タイガース・湯浅京己、連投テストクリアで1軍シート登板へ「バッターに投げられていることが楽しい」
■連投テストをクリアした
「今、こうやって問題なく投げられていること自体が嬉しいし、バッターに投げられていることがやっぱ楽しいんで、そこが一番」。
ニコニコ笑顔でそう語るのは、阪神タイガース・湯浅京己投手だ。
左脇腹の肉離れからリハビリを終えて実戦復帰し、また一歩前進した。
10月5日の練習試合、オリックス・バファローズ戦(杉本商事BS舞洲)で1回を投げ、翌6日に鳴尾浜球場でのシート打撃に登板し、連投テストをクリアした。
これで今日7日の状態が問題なければ、“リハビリ組”から外れる見込みだ。
シート打撃に登板した昨日の帰り際、湯浅投手は心境を語った。
「ここまでは再発しないのが一番だった。パフォーマンス的にここに合わせてやってきているわけではないし、しっかり出力が出た上で再発しないことが一番と思いながら投げていたので」。
これまでも「再発しないこと」というのを繰り返してきたが、本当にじっくりと焦ることなく時間をかけてリハビリしてきた。前腕を痛めたときに“見切り発車”で1軍に上がった苦い経験があるからだ。
しかし、今回はもう大丈夫だと確信が持てている。
「リハビリ組から外れたら、パフォーマンスをしっかり出した上で結果も求めていきたい」。
そう力を込めた。
■データが示すボールの質
順調だ。現在は脇腹も、以前痛めた前腕も「問題なく投げられている」と言い、「ここからは出力も自然に上がってくると思うし、バッターに投げるっていうだけで心の持ち方とかモチベーション的にも変わってくる。しっかり自分の力を出したいし、いつもどおりの自分のボールが投げたい」と今後の自分のピッチングを、湯浅投手自身が一番楽しみにしている。
楽しみにできる要因があるのだ。トラックマンによるデータで確認したボールの質が、前腕の負傷から復帰したときと比べても「今のほうが全然いい」からだ。
「ホップ成分も戻ってきているし、元々のまっスラ成分のボールも戻ってきている。前腕を痛めてからシュート成分が多くなっていたんで、質がよくなかった」。
「ホップ成分」「まっスラ成分」。それこそが、湯浅投手のボールを構成している重要な要素である。いいときの状態に近づいてきていることを、データが証明している。
「今はそういったデータとかも見ながらやっています。状態的にもよくなってきているし、投げている感覚も指にしっかりかかって悪くない。あとはゲーム勘とか、ゲームで投げる中での精度だと思う」。
その手にしている感覚のよさが、口元をほころばせる。もう前に進むだけだ。状態のベクトルは上だけを向いている。
では、この2日間の連投を振り返ろう。
■10月5日 オリックス・バファローズとの練習試合
5-3とタイガース2点リードの五回裏に登板。
元 謙太 …全球ストレートでフルカウントからの6球目、147キロで空振り三振。
大里昂生…フォークで見逃しのあと、150キロでファウル、151キロで空を切らせて3球三振に。
来田涼斗…初球の縦スライダーはボール、2球目147キロのストレートを左前に落とされる。
中川拓真…ストレート、フォークの空振り2球で追い込むも、3球目が暴投となって得点圏に進まれ、なおもボールが2球。しかし最後は首を振ってフォークを選択し、ショートフライに打ち取る。
1回 4人 17球 被安打1 失点0
(内訳…直球12球 フォーク4球 縦スラ1球 最速151キロ)
■和田豊ファーム監督のコメント
「投げるたびによくなっている。何球か、本当にいいときの球があったよね。その数を増やしていったらいいかな。
明日のシートにもう一回投げて。抑える打たれるは別として、思いどおりに球がいくかどうか。投げるたびにその数は増えてきているからね。まだ本調子まではいってないだろうけど」。
■湯浅京己のコメント
「問題なく投げられていますし、感覚も全然悪くない。空振りもしっかり取れてたんで、まずまずかなと思います。
この前(10月1日の広島東洋カープ戦)よりは力感なく投げられていた。全然違います。
クイックとかもいろいろ試しながら投げられたんで、よかった。
(大里の空振り三振は)力を入れました。普通に空振り三振を狙って投げにいった。でも、そこだけ力を入れたとかじゃなくて、いろいろ試しながら投げていく上で噛み合った、みたいな感じ。
変化球も、最後のバッターを(カウント)3-2から首振ってフォークを投げて打たせて取ったり、フォークで空振りも取れていたし、スラも1球投げて感覚的には悪くなかった。投げていけばもっとよくなってくると思う。
やっぱまっすぐで終わりたかったけど、首振ってフォークを投げたのもいろいろ考えて、1軍だったらそうやって打ち取ったほうが確率が高いから。
マウンドでクイックとかもタイミング変えたり、いろいろ試しながらできたのでよかったかなと思います」。
■10月6日 シート打撃での登板
植田 海 …ボール2球のあと、3球目の144キロをファーストゴロ
豊田 寛 …カウント2-2からの5球目、148キロをショートライナー
井坪陽生…ファウル4球とボール3球。8球目のフォークで空振り三振
植田 海 …フォークで空振りのあと、2球目のストレートをファーストゴロ
豊田 寛 …初球の147キロをピッチャーゴロ
打者のべ5人 19球 安打性0
(内訳…直球13球 フォーク5球 縦スラ1球 最速148キロ)
■和田豊ファーム監督のコメント
「昨日とほぼ同じくらいの状態で投げられているんで、極端に落ちることもない。もう患部に関しては心配ないだろうし、これからもう少しまっすぐの力が出てくると本来の湯浅に戻るんじゃないかな。
連投したあとの状態を見て、来週、甲子園で1軍の選手がシートをやるので、そこで岡田監督に見てもらって。
まずは余計なことを考えずに自分の状態を取り戻す。その上で見てもらって、というところなんで。
もちろん本人にしたら、そこ(ポストシーズン)にしっかりと合わせてっていう気持ちではいると思う。だからって極端に焦ってるわけでもないし、やるべきことをやって順調に仕上がっていく段階、過程なんでね。
本当の湯浅の一番いいときからしたら、まだまだ上がっていくところなんで、あと何回か投げるとそういう状態に近づくと思う。
昨日もそういう球が2~3球あったからね。それがいかに数多く投げられるか。投げるたびに増えていけばいいんじゃないかな」。
■江草仁貴ファーム投手コーチのコメント
「本人もしっかり投げられたって言ってたんで、あとは実戦になったらもう少し力が入ってくるんじゃないかな。とにかく何も問題なく連投できたっていうのが一番じゃないですか。
球速はこれから上がってくるんじゃないですかね」。
■湯浅京己のコメント
「連投なんで多少は張ってはいますけど、問題なく。大丈夫かなと思っています。
感覚的にも悪くないですけど、もっと精度を高めたボールを投げたいなと思うので、ゲームとかで投げていけばもっともっとよくなってくると思う。
フェニックスとかでしっかり思ったボールをコンスタントに投げられるようになりたいなと思います。
出力的には問題なく投げられていると思いますし、やっぱゲームだったらもっと球速的にも出ていたと思う。そこは問題ないんじゃないかと思います。
今は問題なく投げられてるっていうことが一番だと思っていたんで、リハビリ組を抜けるまではしっかりバッターが立ったところで投げられるっていうことが一番。
ここからリハビリ組を外れたら、徐々にですけど投げていくうちにゲーム勘とかも戻ってくると思いますし、そこらへんは1試合1試合、たいせつにしながら投げられればなと思います。
開幕してすぐ前腕の肉離れをして、思ったボールが投げられてないまま上に戻って、状態もずっと上がらずにまた脇腹やってとか、本当にいろいろケガがありましたけど、その中でも交流戦で打たれたこととか、無駄なことは絶対にないと思います。
ケガしたことでも、自分が成長できたことってたくさんあると思うんで、この1年、本当に自分自身はチームに貢献できなくて悔しいですけど、その中でも成長できたことはたくさんあるので、この悔しかった1年は無駄にしないようにしたいなとは思っています」。
■1軍のシート打撃での登板へ
和田ファーム監督が明言したように来週9日もしくは10日、1軍選手相手のシート打撃で登板する予定だ。湯浅投手は、今の思いを吐露する。
「岡田監督やコーチ陣の判断だと思うんですけど、ポストシーズンがあるとかどうとかじゃなくて、そこは意識することなく自分のピッチングをしたい。このリハビリで過ごした時間を無駄にしないようにというか、来年につながるピッチングもしたい。そりゃ、CSは出たい。でも、そこはチームの兼ね合いとかもあるから。そこに合わせてやるというより、パフォーマンス的にもっともっと上げていきたい」。
決めるのは自分ではない。自分にできることは今持てるすべての力を出すこと、そしてさらに状態を上げること、それだけだとわかっている。
ただ、悔しい思いをしてきたし、チームには“借り”がある。大事なところでしっかりと返したいという気持ちは強い。
「チームに少しでも貢献したい…」。
そう言って、鳴尾浜球場を後にした。
マイナスに思えるできごとも、ポジティブにとらえてプラスに変えてきた湯浅京己。来週のシート登板で、どんなピッチングを見せてくれるだろうか。
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(撮影:筆者)