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2022年に注目すべき 福岡の豚骨ラーメン「新店」3軒

山路力也フードジャーナリスト
豚骨ラーメンの聖地、福岡で生まれた豚骨ラーメンの新店から厳選。

今福岡で食べておくべき豚骨ラーメンの新店とは?

 毎年数千もの新店が誕生し、同じ数だけの店が廃業するラーメン業界。飲食業界の中でもライバルが多い厳しい世界だが、長引くコロナ禍の中でありながら、2021年にも数え切れないほどたくさんのラーメン店がオープンした。

 その中で、2022年にますます人気が上がっていくであろう、注目すべき新進気鋭のニューカマーのラーメン店を実食した上で厳選。今回は豚骨ラーメンの聖地、福岡に2021年オープンした新店をご紹介する。どの店もフレッシュで気合に満ちた店ばかりだ。

郷愁誘うノスタルジック豚骨『らぁめん39番地』(2021年6月開業)

下呉服町の住宅街にひっそりと佇む『らぁめん39番地』。
下呉服町の住宅街にひっそりと佇む『らぁめん39番地』。

 博多旧市街の中心地でもあった、下呉服町の住宅街に馴染むような佇まいで、2021年6月にオープンしたのが『らぁめん39番地』(福岡県福岡市博多区下呉服町6-7-1)。こちらは2007年に福岡市南区大橋で創業した店が移転リニューアルした店。自分が生まれ育った地元でいつかは店をやりたいという、店主の渡邊賢司さんの想いが14年を経てようやく実現した。

 ラーメン作りは教わったことがなくすべてが独学。錯誤の繰り返しからたどり着いたラーメンは、昔懐かしいノスタルジックな博多ラーメン。価格も一杯550円とリーズナブル。サラリとしつつもコクのあるスープは、豚の頭骨、豚足に鶏ガラを入れて炊き上げたもので、臭みがなくマイルドな味わい。創業当時から変わらぬ細ストレート麺はしなやかで歯応えもある食感。味の決め手となる醤油ダレは今も日々改良を重ねている。野菜の甘味が生きた一口餃子ももちろん手包みだ。

 職人気質で無口な店主と、にこやかな笑顔で出迎えてくれる奥様。夫婦ならではの連携プレーで作り出される優しい空間。大橋時代の常連客はもちろん、早くも下呉服町の人たちにも愛されており、新店でありながらもすっかりこの町に溶け込んでいる。

なめらかでクリーミーな豚骨『ICHIYU RAMEN & GYOZA』(2021年6月創業)

まるでカフェのような可愛らしい雰囲気の『ICHIYU RAMEN & GYOZA』。
まるでカフェのような可愛らしい雰囲気の『ICHIYU RAMEN & GYOZA』。

 博多旧市街、奈良屋町の路地裏に佇む、ジャズの流れるスタイリッシュな雰囲気の新店が、2021年6月に創業した『ICHIYU RAMEN & GYOZA』(福岡県福岡市博多区奈良屋町4-1)。店主の中村美樹雄さんは、居酒屋勤務などを経て人気ラーメン店『らーめん二男坊』(福岡市)で経験を積み独立した。

 ラーメンは豚骨と醤油の二枚看板。自分の原点でもある豚骨ラーメンは、博多ラーメンをベースにしつつも臭みがないクリーミーな味わいを目指した。豚の頭骨、ゲンコツ、背ガラを12時間かけて丁寧に取ったスープは、程よい濃度と粘度があり骨の旨味が凝縮された味わい。しなやかな平打ち麺としっとり仕上げた大きなチャーシューがスープに寄り添う。地元福岡の人気製麺所『製麺屋慶史』に特注したオリジナルの平打ち麺は筑豊のラーメンをイメージした。

 大病なども患った経験があり、紆余曲折を経て五十歳で念願の独立開業。奥様と二人で営む小さな店だが、いずれは地元である佐賀にも店を出し、いつかは海外にも出てみたいと、その夢は止まることがない。

20年の想いが詰まった豚骨『ヤキニクラーメンフタバ』(2021年9月開始)

焼肉とラーメンの二枚看板を掲げる『ヤキニクラーメンフタバ』。
焼肉とラーメンの二枚看板を掲げる『ヤキニクラーメンフタバ』。

 福岡市中央区警固。市内を横断する「国体道路」沿いに2017年オープンした『ヤキニクラーメンフタバ』(福岡市中央区警固1-14-3)。店主の栄浩司さんは福岡生まれの福岡育ち。大学進学と共に上京し、当時東京で大人気を誇った『なんでんかんでん』でラーメンを学んだ後、人気焼肉店での経験を経て、1997年に独立。今も千葉で豚骨ラーメン店『まるえいラーメン』と焼肉店『栄や』を営んでいる。

 いつかは故郷にも店を持ちたいと、焼肉とラーメンが二枚看板の店を2017年にオープン。焼肉は厳選した伊万里牛を使った本格派で、ラーメンも今まで福岡にはなかった関東スタイルのラーメンを提供し、一躍人気店となった。しかし長引くコロナ禍で夜の客足が激減したことから、ランチ営業を強化する必要に迫られた。

 そこで、2021年9月に『まるえいラーメン』という暖簾を掲げてラーメンを一新。20年間の経験から生まれる豚骨ラーメンは、前日のスープをベースに新たなスープを合わせていく「呼び戻し」製法で作られている。程よい豚骨臭と深みのある味わいの豚骨ラーメンは、豚骨にはうるさい福岡人にも受け入れられている。

 福岡には数多くの豚骨ラーメン店がひしめき合っており、半世紀以上愛されるような老舗も少なくない。今回ご紹介した3軒はいずれも2021年にオープン、ラーメンの提供を始めた店ばかり。そして新店とは思えない実力派ばかりだ。同じ豚骨ラーメンでありながらも個性は全く違うので、ぜひ3軒とも食べて自分好みの味を見つけて欲しい。

※写真は筆者によるものです。

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フードジャーナリスト

フードジャーナリスト/ラーメン評論家/かき氷評論家 著書『トーキョーノスタルジックラーメン』『ラーメンマップ千葉』他/連載『シティ情報Fukuoka』/テレビ『郷愁の街角ラーメン』(BS-TBS)『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日)『ABEMA Prime』(ABEMA TV)他/オンラインサロン『山路力也の飲食店戦略ゼミ』(DMM.com)/音声メディア『美味しいラジオ』(Voicy)/ウェブ『トーキョーラーメン会議』『千葉拉麺通信』『福岡ラーメン通信』他/飲食店プロデュース・コンサルティング/「作り手の顔が見える料理」を愛し「その料理が美味しい理由」を考えながら様々な媒体で活動中。

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