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河合優実『ふてほど』純子役はキャリア転機「すごくいい風が吹いた」 過酷な境遇の少女の痛みを感じた新作

武井保之ライター, 編集者
『あんのこと』公式Xより(C)2023 『あんのこと』製作委員会

『不適切にもほどがある!』(TBS系)の小川純子役で一躍その名を世間に響かせた新鋭女優・河合優実。似合いすぎていた同役の80年代・不良少女姿の印象が鮮明ななか、最新主演映画『あんのこと』(6月7日公開)が公開される。

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実話をもとにする本作で河合優実は、母親に12歳から売春を強要され、いつしかシャブ中になる壮絶な人生を送った主人公・杏を身を挺して演じる。もともと多くの映画賞を受賞してきた実力派として知られる彼女にとっても、新たな挑戦となる作品になった。

(関連記事:『ふてほど』不良少女役・河合優実、売春を12歳から毒親に強いられる悲痛な少女役の『あんのこと』

そんな河合優実に、話題になった『ふてほど』と本作について聞いた。

女優キャリアの転機になった『ふてほど』

今年No.1のブレイク女優と呼ばれるようになった『ふてほど』の純子役。阿部サダヲ演じる父親との暴言連発しながらの微笑ましい父娘ゲンカはネットでバズり、一躍ときの人となった。

そんな河合優実にとって同作は、女優デビュー5年目のキャリアのひとつの転機になったという。

「転機になったと思います。いままで以上にたくさんの人に知ってもらえたのは間違いないですし、どこに行っても声をかけていただけるようになったのは嬉しい変化です。

すごくいい風が吹いたのはキャリアのうえでもよかったこと。『ふてほど』がきっかけで今回の映画を見てくれる人がいるかもしれない。それがまた次の作品にもつながっていくとうれしいです」

過酷な境遇の少女の痛みを感じた『あんのこと』

『ふてほど』に続いて劇場公開される『あんのこと』は、家庭内暴力や子どもの貧困、少女売春など、誰もの身にある社会問題に真正面から切り込む社会派映画。

主人公の杏は、DVにさらされる過酷な境遇に育ち、ウリやクスリが日常の壮絶な生活を送るが、ある刑事との出会いから人生にわずかな光を見出し、失った時間を取り戻そうとするかのように前向きに生きる。

そんな少女を身を挺して演じた河合優実は、杏の境遇や人生をどう感じて、どう受け止めたのか。

「あまりにも育った環境が違うので、私には想像するしかない。彼女はいろいろな痛みを受けてきました。それをいまの自分が経験することはできません。でも、共有できる感情もあります。

劇中ではコロナがきっかけで杏の生活が大きく変わります。そこでみんなが負った痛みやストレスは人ごとではなく、私自身も映画を見る人も、自分の痛みとして感じることができると思いました」

幸せを感じていた瞬間はたくさんあった

杏の人生は苦難に満ちている。佐藤二朗演じる刑事や稲垣吾郎演じる記者との出会いから、新たな人生を歩み出そうとするが、ある出来事によって再び残酷な社会の波に飲み込まれる。

杏の人生とは苦痛でしかなかったのか。幸せを感じた瞬間はあるのか。彼女の人生を物語のなかで生きた河合優実に聞くと「たくさんあったと思います」と断言する。

「杏は人と関わることで世界が広がりました。自助サークルで初めて自分の話ができて褒められたときも、DV被害者のシェルターマンションで新しい生活をはじめたときも、突然子どもを預けられて奮闘するなかでその子がご飯を食べてくれたときもそうです。

DVに苦しむ生活のなかでも、おばあちゃんと一緒にいたり、話をしたりするだけで心が安らいでいたはずだし、天気がいいだけで幸せを感じていたかもしれない。彼女の人生のなかで、幸せや喜びを感じる瞬間はたくさんありました」

衝撃のラストへ込める願い

本作の制作には、杏の人生に向き合い、大事に寄り添うキャスト、スタッフのチームワークが欠かせなかっただろう。河合優実は、共演の佐藤二朗、稲垣吾郎とコミュニケーションを取り合って意識を共有していたとする。

「作品や役柄についてあまり深い話をした記憶はなくて。2人とも劇中の役柄そのままで私を見守ってくれていました。おおらかな大人として接してくれて、私から見ると、劇中で杏に光をくれた2人と重なりますね。

入江悠監督をはじめ、みんなが杏を見守る映画にしようと思っていることを感じていました。そういう空気を誰もが共有していた撮影現場だったと思います」

そんな本作のラストは、リアルな社会問題をそのまま真っ直ぐに観客に突きつけてくる。見る人それぞれに感じること、考えることが異なるだろう。その余韻から逃れられない人もいるかもしれない。それほどまでに衝撃があり、意義がある作品になっている。

河合優実は「この映画を見た人が現実社会に持ち返るものが必ずあると思います」と語っている。まさにそんな力のあるエンターテインメントだ。これからより広い世界へ羽ばたこうとする彼女の代表作のひとつになることは間違いないだろう。

その姿を見届けるのと同時に、この作品が社会に訴えることを感じてほしい。

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ライター, 編集者

音楽ビジネス週刊誌、芸能ニュースWEBメディア、米映画専門紙日本版WEBメディア、通信ネットワーク専門誌などの編集者を経てフリーランスの編集者、ライターとして活動中。映画、テレビ、音楽、お笑い、エンタメビジネスを中心にエンタテインメントシーンのトレンドを取材、分析、執筆する。takeiy@ymail.ne.jp

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