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「より圧力が増す」1番・大谷翔平の恐怖を上原浩治が分析

上原浩治元メジャーリーガー
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 メジャーリーグ、ドジャースの大谷翔平選手が7月に行われるオールスターゲームのファン投票の中間結果で100万を超える票を得て、ナ・リーグの指名打者部門のトップに立った。その大谷選手は、ムーキー・ベッツ選手の負傷によって、17日(日本時間18日)のロッキーズ戦から1番打者で起用されている。いきなり3安打1打点、1盗塁で勝利に貢献。翌18日(同19日)には4年連続5度目のシーズン20号本塁打を放つなど、攻撃的オーダーのリードオフマンとして躍動を続ける。投手心理から「1番・大谷選手」の圧力を解き明かしたい。

 大谷選手が加入した今季のドジャース打線は、1番・ベッツ選手、2番・大谷選手、3番・フレディ・フリーマン選手の「MVPトリオ」が大きな特徴だ。

 私の経験では、先発投手の一番の不安は立ち上がりにある。ブルペンと実際のマウンドの感覚の違いを修正し、その日の調子を見極めながら投げていく。立ち上がりはうまくアジャストできるか、不安を抱えながらの投球になってしまう。そこで制球が定まらないと四死球を出したり、甘い球を痛打されたりする。相手打者と対戦しながら、自分のリズムをつかんでいく必要がある状況で、攻撃型オーダーを迎えるのは、投手心理からするとかなり嫌な状況にある。

 ベッツ選手が抜けたドジャースは、1番に大谷選手を起用し、2番にやはり強打のウィル・スミス選手をあて、3番・フリーマン選手を置いた。

 大谷選手は2番でも、1番でもスタイルは変わらず「好球必打」の積極的なバッティングを貫いてくるだろう。大谷選手は初球からでも、打てるボールは果敢にスイングをしてくる。以前のコラムでも書いたが、投手からすると、こういうタイプの打者には、最初から「勝負球」を投げないといけないという心理的な負担がある。

 「1番・大谷選手」になると、2打席目からは、下位打線から打席が巡ってくる。投手は8、9番を抑えないと、走者を置いた状況で大谷選手を迎えることになる。上位打線に回るタイミングで、一発の怖さもある大谷選手の走者を置いた状況は避けたい。ただ、これは投手の心理であって、大谷選手にとっては、2番でも1番でも打撃スタイルは変わらず、打てるボールを確実にとらえるということになるだろう。打順が1つ上がるだけとはいえ、トータルでの打席数が増えれば、本塁打を打つ確率もアップするだろう。

 野球の主軸は「4番」という定説があり、一部のチームでは「3番最強説」もあったが、ドジャースの打順は特異だ。かつてのセオリーなら、1番は俊足で選球眼が良くて出塁率を重視したタイプが入り、2番は犠打や小技でつなげ、3番からの中軸で得点するということになるだろうが、現在のドジャースを見ていれば、強打者に1回から確実に回るという脅威のオーダーで、実際に高い得点力を発揮している。

 その一角に組み込まれている大谷選手は例年、6月によく打つ傾向にある。投手陣にもやや疲れが出始めるこの時期は、強打者にとって有利といえる。今季の大谷選手は打者に専念しているということもあり、例年よりも疲労の蓄積も少ないのではないだろうか。そう考えると、量産を始めた本塁打のペースは、まだまだ上がっていきそうだ。

元メジャーリーガー

1975年4月3日生まれ。大阪府出身。98年、ドラフト1位で読売ジャイアンツに入団。1年目に20勝4敗で最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率の投手4冠、新人王と沢村賞も受賞。06年にはWBC日本代表に選ばれ初代王者に貢献。08年にボルチモア・オリオールズでメジャー挑戦。ボストン・レッドソックス時代の13年にはクローザーとしてワールドシリーズ制覇、リーグチャンピオンシップMVP。18年、10年ぶりに日本球界に復帰するも翌19年5月に現役引退。YouTube「上原浩治の雑談魂」https://www.youtube.com/channel/UCGynN2H7DcNjpN7Qng4dZmg

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