【光る君へ】ドラマでは描かれない貴族たちの「残念エピソード」道長と同僚たち編(家系図/相関図)
NHK大河ドラマ『光る君へ』。世界最古の小説『源氏物語』の作者・紫式部(まひろ)(演:吉高由里子)と、平安時代に藤原氏全盛を築いた藤原道長(演:柄本佑)との愛の軌跡を描く。
『光る君へ』も折り返しを過ぎました。
若干わかりにくいのが登場人物のキャラの区別ではないでしょうか。
なにしろ登場人物のほとんどが「藤原さん」で、下の名前もイマイチ読みづらい…。たとえば、三浦翔平さんの伊周(これちか)、町田啓太さんの公任(きんとう)、はんにゃ金田さんの斉信(ただのぶ)、高杉真宙さんの惟規(のぶのり)など。
装束もほぼ全員同じ(真っ黒)だし。(装束の解説はこちら→【光る君へ】なぜ黒尽くし?赤と緑との違い、平安装束のなぜ?を解説!(図解付)3/30(土))
というわけで、今回は主要登場人物をわかりやすく一覧にしようと考えました。ついでに、史実に伝わる各キャラと、ドラマでの描かれ方の違いなどもまとめたい。
でもそれだけじゃおもしろくない。
そこで思いついたのが、イケメンたちの「残念度」です。
◆残念度チェック注意事項
このアカウントで密かな人気なのが「残念なイケメン」シリーズ(といってもまだ2人しか書いていませんが)。
誰でも大なり小なり、どこかしら「残念な部分」はあるものです。それを中心に、登場人物たちをまとめてみたら、おもしろいかも、と考えました。
◆6名のイケメンたちラインナップ
『光る君へ』の多くの登場人物から選んだのは12名。
しかし、結構な分量になってしまったので、今回は道長と同僚5名をセレクト。
それでは、スタート!!
①藤原道長(演:柄本佑)
強運度ならno.1。ドラマでは無欲だが、史実では冷酷な部分も持つ権力者
史実の人物像
摂関家の五男に生まれながら、棚ぼた式に藤原長者となる強運の持ち主。娘たちを次々と天皇に入内させ、前代未聞の「一家三后」を成し遂げ、藤原氏の絶頂期を築く。日記『御堂関白記』は彼の貴重な直筆で国宝に指定。
残念な部分
自分の娘のライバルにはえげつない嫌がらせをして徹底的に痛めつける冷酷さを持つ。(皇后の行啓に合わせて自邸で祝宴を開催し、多くの公卿を招待して行啓に参加できないようにした)
『光る君へ』の道長
強運の持ち主で無欲な人物。よき世を作るために権力を持つことを決め、高貴な女性を妻にして娘を入内(じゅだい:天皇妃にすること)させる。少年時代からまひろを一途に愛し続ける。二人の妻を負担に思い逃げ出すことも。
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関連記事:【光る君へ】藤原道長の大出世の陰で彼を支えた「4人の女性」とは?(家系図・相関図)
②藤原公任(きんとう・演:町田啓太)
血筋と才能の完璧さはno.1だが、失言の多さでもNo.1。
史実の人物像
藤原北家嫡流に生まれた超エリートで道長のはとこ。多くの才能に恵まれながら、時世の流れに乗り切れず、太政大臣の父のようには出世できなかった。
残念な部分
斉信や源俊賢(演:本田大輔)に出世で先を越されると辞表を出して抵抗するなど、割とめんどくさい。また、多くの失言で東三条院(演:吉田羊)を怒らせたり、紫式部を閉口させたりと、いろいろ残念な人物。
『光る君へ』の公任
高貴な血筋と才能を生かしきれずにいるのは同じだが、潔く負けを認め、道長のサポートに徹する男気ある人物として描かれる。史実の残念発言は今のところ全カット。残るはまひろへの発言だが、今後描かれるのか?
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関連記事:【光る君へ】超イケメンなのになぜか「残念」な藤原氏随一の超エリートとは?(相関図・家系図)
③藤原斉信(ただのぶ・演:金田哲)
欲望への忠実さならno.1。出世と女性へのこだわりが際立つ
史実の人物像
道長のいとこ。出世欲が強く、それを隠さない人物。非常なイケメンで所作も美しいと清少納言も『枕草子』に記している
残念な部分
アイドル的人気でモテモテだったはずなのに、清少納言に異様な執着を示すなど、欲しいものは手に入れないと気が済まない。花山院闘乱事件もちゃっかり道長に告げ口。自分の出世のためなら、妹や花山院の不名誉など気にもしない。
『光る君へ』の斉信
道長に昇進をおねだりするなど、出世欲も女性への下心もあけっぴろげ。史実に伝わる斉信像にかなり近い。公任が史実よりかなり美化されているので、彼が悪目立ちしてお気の毒。
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関連記事:【光る君へ】花山天皇の実像にせまる~歴史を変えた「女好き」(藤原氏 家系図・相関図)
④藤原行成(演:渡辺大知)
文字の美しさならno.1、有能でバランスのよい人物
史実の人物像
平安時代の能書家「三蹟」の一人。藤原北家の嫡流筋だが父が早世した苦労人。従兄の花山天皇の外戚となるが、たった2年でその地位を失う。不遇ののち、一条帝の蔵人頭に抜擢。のち道長の政策をサポートする。
残念な部分
彼に関しては、ザンネンな部分がほとんどないといっていいかもしれない。蔵人頭として一条天皇への弁明は道長へのおもねりが強いともいわれるが、その論拠はまっとうでもある
『光る君へ』の行成
ドラマ初期から、道長らに混じり華やかなエリート集団の一員として描かれている。自身の叔父で花山帝の外戚である義懐(演:高橋光臣)の策略を道長に告げ口するなど、早くから道長の才能を見抜き一心に仕える「道長推し」。
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関連記事: 【光る君へ】平安最大の謎?紫式部と藤原道長、イケメンたち(公任・斉信・行成)はどんな関係?(家系図)3/10(日)
⑤藤原実資(さねすけ・演:秋山竜次)
日記の連続記録ならno.1、ザンネンさとは無縁の清廉潔白な人柄
史実の人物像
道長のはとこで、公任のいとこ。藤原氏北家嫡流の自尊心を持ち、一本筋の通った気概のある人物。道長が権勢をふるう一番の障害だが、実務能力に優れ、頼りになる同僚。非常に長寿で90歳没。20代から60年以上つけた膨大な日記『小右記』を遺した。
残念な部分
立派な人物で残念さとは無縁。意外な面としては、かなりの好色だったと伝わる
『光る君へ』の実資
朝廷での愚痴を日記に書く姿が頻繁に登場。宣孝にまひろとの見合いをすすめられると日記に「鼻くそのような女との見合い話が来た」と記す。大恋愛で結ばれた婉子女王(つやこ・演:真凛)とイチャイチャするなど、好色な面も描かれる
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関連記事: 【光る君へ】「わしが公卿だったら・・・」藤原実資の数奇な人生!道長・紫式部との関係は?(家系図)3/4(月)
⑥藤原伊周(これちか・演:三浦翔平)
呪詛のしつこさならno.1、愚かさと傲慢さが際立つ人物
史実の人物像
道長の長兄・道隆の嫡男。美貌と才能を兼ね備えた貴公子。将来の藤原長者と目されていたが、父の急死ですべてが狂う。長徳の変(花山院闘乱事件)により流罪で大宰府へ。恩赦で帰京後も、もとの地位に戻ることはかなわず。
残念な部分
父の存命中から尊大な行動が目立ったとされる。流罪決定後も妹の定子のもとへ逃げ込むなど往生際が悪く、定子出家のきっかけとさらなる没落の原因となる。
『光る君へ』の伊周
史実通りの愚かなボンボンとして描かれる。中関白家(道隆の家)が没落したのは自身の軽はずみな行動や普段のおこないのせいだが、すべてを道長のせいにして呪詛し続ける、非常に残念、いや哀しい人物。
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関連記事:【光る君へ】道隆の子・伊周は絶世のイケメンなのに「残念」な理由(家系図/相関図)3/25(月)
最後に全員を網羅する家系図を掲示。
◆次回はまひろの身内のあのイケメンが登場!
この次の記事では、道長やまひろの身内について同様にチェックしていきたいと思います。
関連記事:【光る君へ】ドラマでは描かれない貴族たちの「残念エピソード」紫式部と道長の身内編(家系図/相関図)8/25(日)
(イラスト・文 / 陽菜ひよ子)
◆主要参考文献
紫式部日記(山本淳子編)(角川文庫)
枕草子(角川文庫)
ワケあり式部とおつかれ道長(奥山景布子)(中央公論新社)
フェミニスト紫式部の生活と意見 ~現代用語で読み解く「源氏物語」~(奥山景布子)(集英社)