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【光る君へ】ドラマでは描かれない貴族たちの「残念エピソード」紫式部と道長の身内編(家系図/相関図)

陽菜ひよ子歴史コラムニスト・イラストレーター

NHK大河ドラマ『光る君へ』。世界最古の小説『源氏物語』の作者・紫式部(まひろ)(演:吉高由里子)と、平安時代に藤原氏全盛を築いた藤原道長(演:柄本佑)との愛の軌跡を描く。

今回は、前回に引き続き登場人物たちの「残念度」です。

関連記事:【光る君へ】ドラマでは描かれない貴族たちの「残念エピソード」道長と同僚たち編(家系図)

前回の同僚編に引き続き、今回はまひろと道長の身内編です。ちょっと懐かしいあの人や意外なあの人が登場!

◆6名のイケメンたちラインナップ

『光る君へ』の多くの登場人物から選んだのは12名。

前回に引き続き、今回は道長とまひろの身内編

(前回の伊周は本来身内編の人なのだけど、6人で割った都合で同僚編へ)

それでは、いざ、結果発表!

◆イケメン貴族たちの残念度・道長とまひろの身内編

⑦藤原隆家(演:竜星涼)

武士の心意気ならno.1。海賊を撃退した荒くれ者だが男気ある人物

史実の人物像
伊周の弟で道長の甥。流罪となるも帰京後は改心。道長の娘のライバルの皇后宮大夫を引き受けるなど、その気概は道長や実資も一目置いた。眼病治療のため自ら希望して大宰府へ。九州を襲った海賊相手に指揮官として戦い見事撃退。「武士の魂」を持つ。

残念な部分

長徳の変(花山院闘乱事件)で花山院に矢を射かけたのは彼だとされること。

『光る君へ』の隆家
兄の伊周とは異なり、スッパリと過去の栄華をあきらめ、心を切り替える。政敵である道長の懐にもするりと入り込む愛嬌を持ちながら、物事を俯瞰して見られる賢さもある

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関連記事: 【光る君へ】陰陽師・安倍晴明の言葉通りに!イケメン兄弟の運命の明暗をわけた悲劇とは(家系図/相関図)6/8(土)

⑧藤原道隆(演:井浦新)

豪快な酒豪no.1だが、飲みすぎて命を落とす

史実の人物像
道長の長兄。イケメンで立ち居振る舞いも美しかったとされる。ほがらかな性格で気遣いもあったため、多くの飲み仲間を持ち、人に愛された。

残念な部分

権力を手にしたとたんに豹変し、息子たちを強引に出世させた。その強引なやり方が、のちの没落の遠因となった。

『光る君へ』の道隆
妻である高内侍(演:板谷由夏)と一緒にいつもお酒を手にしていたイメージ(そりゃ糖尿病になるよね)。ドラマ序盤は強烈な弟・道兼に隠れてあまり目立たなかったが、その分の豹変ぶりが際立った。

⑨藤原道兼(演:玉置玲央)

悪役・憎まれ役no.1だが、実は風雅な歌人

史実の人物像
道長の次兄。蔵人として側近くに仕えた花山天皇を騙して出家・退位させた(寛和の変)。風雅を好み、自邸や栗山山荘に歌人を集めて歌詠みを楽しんだという。

残念な部分

権力への執着が凄まじく、兄が父の後継になると恨みに思い、父の喪中にも酒色にふけったと伝わる。

『光る君へ』の道兼
初回にまひろの母・ちやは(演:国仲涼子)を殺害。父・兼家の指示で多くの悪事に手を染めるも、後継ぎに選ばれないことで絶望。荒れた生活を送るが、道長と心を通わせて静かな最期を迎えた。

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関連記事: 【光る君へ】藤原道兼や花山天皇は本当にあんなにヤバい人たちだったのか?古代の情報操作とは(相関図)2/20(火)

⑩藤原宣孝(のぶたか・演:佐々木蔵之介)

派手な振舞いならno.1、豪快さがウリで年を重ねてもモテモテ

史実の人物像
紫式部の夫(はとこ同士)。通常粗末な浄衣姿で参拝する御嶽(大和国金峯山)へ、派手な装束で参った結果、出世したという逸話で知られる。式部とは一人娘の賢子(かたこ・演:南沙良)を授かるが、結婚3年後に急死。

残念な部分

紫式部への熱烈な愛を綴る和歌が残るが、式部の手紙を勝手に人に見せたことで大げんかとなったことも。ややデリカシーが足りない?

『光る君へ』の宣孝
遠縁であり、まひろの父・為時の友人として不遇時代の為時一家を支える頼もしい存在。道長との関係を知りつつまひろと結婚。賢子の父が道長であると知るもおおらかな愛でまひろと賢子を愛し続ける。史実同様に急死。

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関連記事: 【光る君へ】正反対だから惹かれあった?陰キャな紫式部の結婚生活とは?(相関図・家系図)5/19(日)

⑪藤原惟規(のぶのり・演:高杉真宙)

憎めないキャラクターno.1だが、ややザンネンな面も

史実の人物像
紫式部の兄弟。幼少時に父・為時に漢籍を学ぶも、惟規は紫式部のように暗唱できず、為時は「式部が男であれば」と嘆いたと伝わる。為時の二度目の越前赴任に同行し、現地で若くして死去

残念な部分

ある大晦日、紫式部の同僚女房の装束が盗まれる事件が起こり、式部がここぞとばかりに蔵人(天皇の秘書)の惟規を呼びだすが、肝心な時に弟(兄)はすでに退出したという。なんという間の悪さ!

『光る君へ』の惟規
漢籍にも政治にも出世にも興味は薄め(半分あきらめか)。乳母のいと(演:信川清順)に溺愛されて育ち、まひろの賢さをディスりながらも憎めない愛嬌を持つ

⑫藤原為時(演:岸谷五朗)

学識ならno.1だが、不器用さで家族を貧乏生活に巻き込む

史実の人物像
紫式部の父。博学で和歌や漢籍への造詣が深くまじめだが、世渡り下手で官職に恵まれない。彼が娘に漢籍を授けなかったら世界最古の長編小説『源氏物語』は生まれなかったかもしれないのだから、その功績は大きい。

残念な部分

花山天皇の式部丞蔵人ののち10年間散位(無官職)に甘んじた結果、娘の紫式部は婚期を逃す。

『光る君へ』の為時
史実同様に不器用で学者肌な人物。まひろと道長の関係を察するも、事情を深く聞こうとはしない理解と配慮のある良き父親でもある。若い頃には宋への密航を企てたことがあることが宣孝の口から明かされる。

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関連記事: 【光る君へ】正反対だから惹かれあった?陰キャな紫式部の結婚生活とは?(相関図・家系図)5/19(日)

最後に全員を網羅する家系図を掲示。

◆残念って奥深い?

◎人生いろいろ、残念もいろいろ

主要人物について、「残念」を軸にまとめてみたら、いろいろ感じるところがありました。

「残念」にもいろいろなタイプがあります。

・権力欲が強い…道長・斉信・道隆・道兼・伊周

・失言…公任
・不器用すぎて職を失う…為時
・タイミングが悪すぎる…惟規
・派手好き…宣孝

一番上の5人に比べれば、真ん中の4人などかわいいものかもしれません。とはいえ、どう感じるかは人それぞれですね。

「残念」は意外と奥深い。

奥深く味わいのある人々の生きた記録を読み解くことは楽しいものです。歴史はやっぱりおもしろいのです。

(イラスト・文 / 陽菜ひよ子)

◆主要参考文献

紫式部日記(山本淳子編)(角川文庫)

枕草子(角川文庫)

ワケあり式部とおつかれ道長(奥山景布子)(中央公論新社)

フェミニスト紫式部の生活と意見 ~現代用語で読み解く「源氏物語」~(奥山景布子)(集英社)

歴史コラムニスト・イラストレーター

名古屋出身・在住。博物館ポータルサイトやビジネス系メディアで歴史ライターとして執筆。歴史上の人物や事件を現代に置き換えてわかりやすく解説します。学生時代より歴史や寺社巡りが好きで、京都や鎌倉などを中心に100以上の寺社を訪問。仏像ぬり絵本『やさしい写仏ぬり絵帖』出版、埼玉県の寺院の御朱印にイラストが採用されました。新刊『ナゴヤ愛』では、ナゴヤ(=ナゴヤ圏=愛知県)を歴史・経済など多方面から分析。現在は主に新聞やテレビ系媒体で取材やコラムを担当。ひよことネコとプリンが好き。

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