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「トランプは独裁者になれる頭ではない。バイデンは中露に平手打ちされた」超タカ派ボルトン元大統領補佐官

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 独裁者との批判がよくされるトランプ氏。3月には、トランプ氏がフロリダ州で所有している高級リゾート「マール・ア・ラーゴ」で、西側諸国にウクライナへの資金援助を打ち切るよう求めたり、中国でロシアのプーチン大統領と会談したりなどしてバイデン政権に批判されている、強権的なハンガリーのオルバン首相と会談、「彼は偉大な指導者であり、素晴らしい指導者だ」と賞賛した。

 そんなトランプ氏について、超タカ派で知られるジョン・ボルトン元米大統領補佐官が「彼は独裁者になれる頭ではない。冗談じゃない、彼は不動産開発業者だよ」とフランスのル・フォガロ紙のインタビュー(3月28日掲載)で断罪したことを米メディアが報じている。

 今回の大統領選では、トランプ氏の元側近たちの多くがトランプ氏を支持していない状況があるが、トランプ政権下で国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めた、超タカ派として知られるボルトン氏もその一人で、同氏はどの大統領候補を支持するかまだ表明しておらず、バイデン氏が常々展開している“トランプ氏は民主主義にとって脅威になる”という主張にも、同紙のインタビューで、異を唱えている。

「人々は(バイデン氏を)信じていない。私も信じていない、彼の主張は真実ではないからだ。まず、トランプ氏がアメリカを転覆させる可能性についてだが、はっきりさせておきたいのは、トランプ氏はジュリアス・シーザーではないということだ。アメリカの憲法とその制度は強力なのだ。トランプ氏は選挙結果に疑問を投げかけようとしたが、失敗した。彼は大統領の時に選挙を盗むことができなかったのだから、11月にマール・ア・ラーゴで選挙を盗むことはできないだろう。 憲法は非常に明確だ。彼の3期目はない」

 つまり、米国の憲法や制度は強固で、トランプ氏はアメリカを転覆させることなどできない、民主主義の脅威ではないというのだ。

 ボルトン氏は、トランプ氏が再選されればNATO離脱の可能性が高いことも懸念している。トランプ氏は、かねて、NATO加盟国がGDPの2%の軍事費を負担できていないことを批判してきたが、2月には、軍事費を相応に負担しないNATO加盟国に対して「(アメリカは)守らない。ロシアにやりたいことは何でもさせる」と発言し、大きな波紋を呼んだ。

「トランプはアイデアを思いつくと何度もそれを思い出し、その後は気が散って忘れてしまうが、最終的にはそのアイデアを実行するところがある。だから、現実的に、NATOを離脱する可能性がある。多くの人はNATO離脱については単なる交渉のツールだと考えているようだが、私はそうは思わない」

 ボルトン氏はまた、国連安全保障理事会でアメリカが提案した、ガザ地区での即時停戦を求める停戦決議案について、ハマス寄りのスタンスだと批判、「国連安全保障理事会でほとんど想像もできないような出来事を目にした。バイデン政権は、ハマスのテロリストを打倒するイスラエルの取り組みにとって、非常に有害な決議案を提案した。決議案は中国とロシアによって拒否権を発動されたが、これはまさにバイデン政権に対する平手打ちだ」と述べた。

 バイデン政権は、3月25日には、ラマダン期間中の停戦を求める決議案については拒否権を行使せず、棄権の立場を示したが、これは「容認」との捉え方もされた。4月2日は、カービー大統領補佐官が、イスラエル軍がガザで食料支援団体の車両を攻撃して7名の団体メンバーが死亡した件について「激しく憤っている」と公然と非難。民間人の犠牲者が増える中、イスラエルの軍事作戦を支持しない米国民が増えており、イスラエル寄りの姿勢を示してきたバイデン政権は、大統領選を見据えて、確実に世論を無視できなくなっているようだ。

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在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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