再び自殺を図る人を半分に──救急から引き継いで支援する精神科チーム #今つらいあなたへ
支援に携わる精神保健福祉士の声「気持ちは私と一緒に」
「患者さんは、死にたいという思いを誰にも言えず、実行にまで至っている方が多くいます。『本当に困っていて、つらかったですよね、でも、こうするしかなかったんですよね』と心を込めて話すと、早い段階で心を開いてくれると感じます」 そう語るのは、山梨県立中央病院で精神保健福祉士として勤務する佐々木由里香さんだ。 「体は救急の先生たちが診てくれる。だから、気持ちは私と一緒に考えていきましょうってお話しするんです」
精神保健福祉士は、精神科の長期入院が問題になり、患者の社会復帰が進められるようになった1997年に生まれた国家資格だ。精神疾患の知識をもって、患者の相談を受け、社会生活を営むために必要な支援をする「ソーシャルワーク」の専門家である。 佐々木さんは10年ほど精神科病院に勤務したのち、2016年に高度救命救急センターをもつ山梨県立中央病院に移った。入って驚いたのは、自殺を図った重篤な患者が次々と運ばれてくることだった。 「精神科病院での勤務で、自殺の危機にある患者さんをソーシャルワークで支援する経験を積んでいました。救急の現場で、この経験が求められていると強く感じました」 そこで佐々木さんは、入職直後から中央病院での救急科と精神科をつなぎ、退院後の生活を見通して福祉サービスを活用する調整を独自に始めていった。そんな中で知ったのが「救急患者精神科継続支援」の仕組みだ。必要な研修を受けるなど準備を進め、2019年に病院に導入することができた。 「独自に行っていた支援に、学術的な裏づけと診療報酬が得られるようになり、とてもやりやすくなりました。病院の各部署に理解を求めるのは手間がかかりましたが、どう扱えばいいかわからなかった自殺未遂の患者さんを治せるという見通しができたことで、救急現場の医師や看護師の安心にもつながったと思います」
面談で必ず聞く「死にたい気持ちがあるか」
支援を導入して多くの患者に向き合ってきたが、佐々木さんは患者との面談では「死にたい気持ちがあるか」という質問も必ず毎回ストレートに聞くという。