「盗んだ子の親、出てこいや!」当事者不在で大荒れの「保護者説明会」。47歳ママが見た「日本人のイヤなところ」とは
昨今、企業、地方自治体、スポーツ団体等の謝罪会見をテレビやネットで見聞きしない日はない。コンプライアンスが強化されている所以であろう。 危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏はこう語る。 「何かトラブルが起こった際、隠蔽したり対応を先延ばしにすることは絶対に許されません。また、意見を唱えている人物にも耳を傾けることも大切です。異物が混入された食品を購入した消費者からクレームが出た場合も、いかに迅速に食品メーカーが対応するかが重要です。 ただ、その謝罪会見の内容によっては、好感をもたれる場合もあれば、さらなる批判を浴びることもあります。事前にきちんと精査して臨む必要がありますね」 今回は、あるトラブルが起きた学校の保護者説明会について感想をお持ちの女性に取材を試みた。谷本真菜さん(仮名・47歳)は、子どもを地元の小学校に通わせる専業主婦である。 ……………………………………………………………………………………………………………………
「うちの地域では、子どもの数が少なくなっていて、1クラスが25人の2クラス編成です。6年間ほとんど変わらないメンバーなので、みんなのことをよく知っています。ただ、それが少しネックというか…」。 仲の良し悪しもいわゆるスクールカーストも決まりきっているのだという。 「うちの娘は比較的おとなしい方なんです。だからいつもボス的な女の子にいいようにされていて…。その子は親も地元の名士的な存在で、それこそ PTA会長とかやっちゃうタイプ。どうやったって、勝てないと言いますか。嫌なことは嫌と断るように話していますが、どこまで娘ができているのかはかなり疑問ですね」。 そんな真菜さんの娘がある事件に巻き込まれることになる。 「きっかけは、半年くらい前かな。学校でモノがなくなる事件が多発しているとママ友から聞きました。娘に聞いても娘は口を閉ざすだけ。明らかにおかしいと思い、かなり粘り強く聞いたんです。そうしたら、シャーペンが1本と新しく買ったキャラクターのメモ帳がなくなったというんです」。 ほかのママ友たちとも会えば、その話で持ちきり。聞くところによるとクラスのほとんどの女子が何かしらなくしている状況になっていたという。 「これはきっと誰か、モノを盗る子がいるんだなと思いました。失礼ですが私が真っ先に思い浮かべたのは例のボスの女の子です。むしろ、その子以外に犯人は考えられないと思いました。彼女はとにかくわがままで有名でした。自分の思い通りにならないと癇癪を起こすのが常で、みんなそれが面倒臭いからこそ、言いなりになっているそんな構図だったんです」。 これは真菜さんだけの読みではなかったようで徐々に、犯人は彼女じゃないか…そんな噂が広がっていったという。そして彼女は案外、早く自白をすることになる。 「モノを盗む瞬間を先生に見られてしまったそうなんです。現行犯逮捕ということだったみたいです。なんらかの理由があるんだろうなとは思いましたが、正直私はそんなに興味がありませんでした。うちは私立の中学校への受験を決めていて、準備も進めてきました。あと半年我慢すれば、彼女とはお別れ。そう思えば、蒸し返すのも面倒と言いますか…。先生からは、相手側に何か求めるかと問われたので、娘への謝罪、それからモノを返してもらえればいいと答えました」。 しかし、真菜さんのような意見は少数派だったらしい。説明会を開いて欲しいという声が多数だったというのだ。 「というのも加害者のお母さんからは、LINEで軽い謝罪があっただけだったんです。その対応に批判が集中。人のものを盗んだのなら、直接謝りに来るのが当然だろうと学校に数人のお母さんが乗り込んだみたいで、結局、学校で『保護者説明会』が開かれることになりました。 私は勝手に、女の子の保護者だけだと思っていたんですが、中には男の子の保護者もいて総勢15人。クラスの半数以上の保護者が集まることになりました」 まずは校長先生が一言、今回のような事態を招いてしまったことを詫びた。その後、担任が経緯を説明したという。 「会場内はずっとざわついていました。なぜなら、加害者の保護者が出席していなかったんです! 1人の保護者がそのことについて、声をあげると、担任が申し訳なさそうに、体調不良で欠席ですと言いました。 そもそも直接謝罪を求めて集まったのに、本人不在では埓が明きません。さらにほんの10分程度で終わってしまったこともあり、会場の空気は最悪でしたね」 質疑応答に入ったとたん、加害者の保護者が参加しないことに反発する親からヤジが飛んだ。 ー加害者の親からの直接謝罪を求めているんですけど! 「怒号とまではいかないけれど、かなり怒りの気持ちがこもった発言でした。これは雲行きが怪しいと思いましたね」。 【後編】では、保護者説明会で起こった顛末についてさらに詳しく話を聞いていこう。 取材・文/悠木 律