再び自殺を図る人を半分に──救急から引き継いで支援する精神科チーム #今つらいあなたへ
「たとえば内科や外科の一般病棟では、患者さんが一言『死にたい』とつぶやいただけで医療者がすごく慌ててしまうことがある。不安や焦りから、『すぐ精神科に受診してもらわないと困る』と、患者さんの話を十分に聞かないまま精神科に依頼が来てしまうこともあるんです」 人見さんによれば、医療者を養成する教育課程でも、自殺についてはほとんど扱われないという。そこで、不適切な対応をして患者の状態を悪くしてしまうくらいなら……と考え、自殺念慮をもつ患者の危機対応を避けてしまうことが多いというのだ。 最大の課題は、自殺再企図を防ぐための考え方や手法が医療者に浸透していないことだと河西教授は言う。
「丁寧な精神科医療を救急医療の現場に導入して、それを起点に自殺未遂者への支援を進めることが重要です」「患者さんの困りごとに対してまっすぐ向き合い、真に患者さんに役立つ支援を導入することが大切なんです」 救急医療と精神科医療、そしてソーシャルワークによる生活支援を、研究成果を基に確立された手法でつなぐことは、成果が見えにくい自殺対策の中で確かな光明だ。この光明をさらに強めていけるかは、医療機関が患者を決して取り残さないという意思を持って、一つ一つの段階をおろそかにせず連携を強めていけるかにかかっている。 平尾小径(ひらお・こみち) 編集者・ライター。1976年、岡山県生まれ。出版社にて児童向け学習雑誌、百科事典、図鑑、ノンフィクションなどの編集に携わる。2020年よりフリーランス --- 「#今つらいあなたへ」は、Yahoo!ニュースがユーザーと考えたい社会課題「ホットイシュー」の一つです。つらい気持ちを抱えた人の「生きるための支援」につながるコンテンツを発信しています。