「息子の学費は返済義務のある奨学金なので、申し訳なくて…」子ども2人の教育費に頭を抱える50歳女性。塾代や学費が“生活苦”を招く現実
物価高によって家計支出が増加する一方、所得は伸び悩み、国民は苦しんでいる。だが、果たして原因はそれだけなのか?暮らしのそこかしこに潜む「生活苦の正体」に迫った。 ⇒【写真】9月、東大が授業料を約11万円引き上げることを決定。学生有志は署名を募るなど、反対運動を展開した
学習塾費用は13年前から4割も上昇
「小学6年の娘は公立なので授業料とかはタダですが、給食費や修学旅行の積み立て、それに塾代もお兄ちゃんのときより値上がりしているし、海外へホームステイする費用は1週間で30万円……。中学受験も控えており、一人暮らしをする大学生の息子への仕送りを2万円減らしました。学費は返済義務のある奨学金なので、申し訳なくて……」 子供2人を育てる伊東澄子さん(仮名・50歳)は、申し訳なさそうにこう実情を話す。 文科省の「子供の学習費調査」によると、’23年度の公立小学校の学習塾費用は平均で年8万1158円。’10年度の5万7176円に比べると実に4割も上がっている。
国公立大学の学費も値上げは避けられない?
それだけではない。教育にかかる費用が一気に膨れ上がるのは、親が40~50代に差しかかる頃。生活苦がピークを迎えるのは、言うまでもなく子供が大学に入学するときだ。 学費は自宅通学で国公立文系の場合、4年間で約433万円(生活費込み)。私立文系では691万円に達する。しかも、長年据え置かれてきた国公立大学の学費も値上げは避けられそうにない。教育社会学者の中澤渉氏が話す。 「一部の大学を除き、ほとんどの大学の財政は厳しい。設備の維持管理費や教育研究費などが、近年の光熱費や人件費の高騰により膨張している。また、国からの運営費交付金が毎年減額され、退職教員の後任を埋められない国立大学もあるほどです」
大学の自助努力や個人の負担に甘えてきたせいで…
日本の公的支出に占める教育費は約8%と、先進国の中で低水準にとどまる。 「日本の大学運営は、学費で賄う私学の経営モデルに依存してきました。親も『教育にお金をかけることは美徳』と、それを受け入れてきたのです。つまり、大学の自助努力や個人の負担に甘えてきたのが、日本の高等教育システムということ。その裏に潜む政策の矛盾は温存されてきた」(同)