「朝起き上がれない」中学生の10人に1人――起立性調節障害、不登校の要因に #今つらいあなたへ
「起立性調節障害」という病気がある。自律神経の不調が原因で、頭痛や立ちくらみ、動悸などの症状が出る。思春期に発症しやすく、中学生の10人に1人がかかるとされ、不登校の子の3~4割にあると言われる。まだ認知度が低いだけに、「サボり」や「なまけ」といった誤解も生みやすい。そうした中、この病気を知ってもらいたいと医師や自治体、当事者である子どもたちや保護者が発信を始めている。どのような病気で、どう取り組むべきなのか。当事者や保護者、教育現場、専門医を取材した。(文・写真:ジャーナリスト・国分瑠衣子/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
当たり前だったことができなくなる不安
異変のはじまりは、小学6年生のゴールデンウィーク明けだった。 神奈川県横浜市の中学3年生、中山知佳穂さん(14)は3年前の朝、登校中に、おなかが痛くなった。 6月ごろから体調は悪化した。朝、ベッドから起き上がると頭痛や腹痛がひどくなり、トイレにこもるようになった。日に日に倦怠感がひどくなり、母の知映さんが40分ほどかけて車で学校まで送るようになった。 「座った体勢だと吐きそうになるので、助手席を思い切り後ろに倒し、横になった体勢で行きました」(知佳穂さん)
知映さんが当時をこう振り返る。「学校が大好きだったので、最初はお友達とのトラブルかなと思いました。夏休み中には同級生をたくさん家に呼んで、遊ぶ時間をつくりました」 だが、症状は改善しなかった。 かかりつけの内科を受診し、血液検査も受けたが異常なし。不安を抱えながら病院を転々とした。心療内科の受診を勧められたこともある。中1の4月、大学病院で検査を受けて初めて「起立性調節障害」という診断が出た。 中1の夏から中2はほとんど学校に行けなかった。朝、体を起こすと吐き気がして、ふらついて倒れ込む。起き上がれたのが午後2時ごろだった日も。「学校に行って、友達と話して授業を受け、部活でトランペットを吹く……当たり前のことができなくなっていくことに焦りました」 知映さんは、知佳穂さんが眠くなるまでリビングで一緒に過ごし、朝8時ごろまで話した日もある。体調不良で家ですごす時間が増えたことで、落ちてしまった体力を取り戻そうと、柴犬を迎え入れた。 知佳穂さんは水分を多くとるなど、起立性調節障害の対症療法を続ける。中3になった今、少しずつ体調が上向いてきている。1学期はほぼ学校に通い、夏休みには器楽部の合宿にも参加できた。クラスに起立性調節障害の子が何人かいて、学校に行きやすくなったことも大きい。ただ、今も朝すぐに起きられるようになったわけではない。朝7時に家を出る日は、午前4時ぐらいから知映さんが声をかけて起こし始める。季節の変わり目などには頭痛や腹痛がある。