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12月6〜8日 第20回「エコプロ2018」開催 テーマは「SDGs時代の環境と社会、そして未来へ」

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
12月6〜8日まで東京ビッグサイトで開催されたエコプロ2018の看板(筆者撮影)

2018年12月6日から8日まで、東京ビッグサイトでエコプロ2018が開催された。第20回を迎える今回のテーマは「SDGs(エスディージーズ)時代の環境と社会、そして未来へ」。

主催者発表によれば、20回目となるエコプロ2018の合計来場者数は、3日間で162,217人。初日は雨天だったにもかかわらず、前年の2017年(160,091人)を上回る結果となった。 

洗って何度でも使える竹製ストロー(BALIISM Japanの展示)(筆者撮影)
洗って何度でも使える竹製ストロー(BALIISM Japanの展示)(筆者撮影)

洗って何度でも使える竹製ストロー

今回筆者が注目したのは、洗って乾かせば何度でも使える竹製ストローだ。2018年7月13日に書いた記事「竹、パスタで代用?プラストローをなくしたらどうなるか」で取り上げた、BALIISM Japanが展示していた、インドネシア・バリ島の竹を使って作られた竹製ストロー

洗って乾かせば何度でも使える竹製ストローの展示(筆者撮影)
洗って乾かせば何度でも使える竹製ストローの展示(筆者撮影)

多くの企業が「使い捨てプラスティック製ストローの使用禁止」を発表する中、プラに替わる素材が注目されている。

小売価格は2本セットで600円(税別)。

BALIISM Japanの竹製ストロー(筆者撮影)
BALIISM Japanの竹製ストロー(筆者撮影)

食品ロス削減!もったいないチャレンジ

筆者がテーマとして取り組んでいる「食品ロス」に関しては、エコプロの中での取り組みが年々大きくなっている。2018の今回は「食品ロス削減!もったいないチャレンジ」と題し、下記の通り、行政や企業、大学など6つのブースが出展し、複数の企業が食品を提供した。

食品ロスコーナーのパネル展示「食品ロスとSDGs」(筆者撮影)
食品ロスコーナーのパネル展示「食品ロスとSDGs」(筆者撮影)

「食品ロス削減!もったいないチャレンジ」コーナーの概要

◆会場:東3ホールSDGs EXPO内【3-046】

◆出展:NEC、社会貢献型フードシェアリングプラットフォーム「KURADASHI.jp」、創価大学、東京都環境局(食品ロス削減PR)、獨協大学高安ゼミナール、野菜長持ち ツイスターロック

◆協力:極洋、食品ロス・リボーンセンター、ニコニコのり、防災バンク、ヤマサ醤油

「食品ロスを減らすために行動している人」は71.8%、目標まであと8.2%

食品ロスの展示コーナーでは、来場者にわかりやすいパネルがたくさん作られていた。これだけの数を準備するのは本当に大変だったと思う。

農林水産省が定めた「第3次食育推進基本計画」では、2020年までに「食品ロス削減のために何らかの行動をしている国民」を80%以上にすることを目指している。そのことを、パネルでわかりやすく説明していた。

会場の展示(筆者撮影)
会場の展示(筆者撮影)

ドギーバッグの推進

この展示に関わった方から事前に連絡があり、2018年11月19日に配信した記事「ビュッフェの残りをなぜ寄付できるか イタリア食品ロス削減の最前線」の写真をパネルに使いたいとのことだった。そのパネルも会場にあった。

筆者の記事「ビュッフェの残りをなぜ寄付できるか イタリア食品ロス削減の最前線」から取った写真を使ったパネル(筆者撮影)
筆者の記事「ビュッフェの残りをなぜ寄付できるか イタリア食品ロス削減の最前線」から取った写真を使ったパネル(筆者撮影)

子どもにはクイズ、大人にはアンケート回答でプレゼントなど参加型の工夫

会場では、子どもにはクイズ、大人にはアンケートに回答することでプレゼントをするなど、来場者が、ただ見て回るだけでなく、参加できる仕組みが作られていた。

家庭からの食品ロスが年間60,000円分、それを処理するのに5,000円、合わせて65,000円もの無駄が出ていると説明するパネル(筆者撮影)
家庭からの食品ロスが年間60,000円分、それを処理するのに5,000円、合わせて65,000円もの無駄が出ていると説明するパネル(筆者撮影)

事前にご連絡を頂いたNECや、ゼミで作った冊子を送って下さった獨協大学高安ゼミナールの方、出展についてメールでご連絡頂いた創価大学など、いずれも来場者に懸命に説明される姿を拝見した。

環境をテーマにした展示会としての環境配慮

エコプロは、その名の通り、「環境問題」をテーマにしている。持続可能な社会のための展示会だ。だからこそ、公式サイトでは「エコプロ2018 展示会としての環境配慮」で紹介している通り、環境配慮の取り組みがなされている。

「エコプロ2019」では、この取り組みが、さらに深く広く進むとよいと感じた。たとえば、会場の明るさは、もう少しだけ落としてもいいのではないだろうか。天井に電灯があり、さらに各展示ブースにもたくさんの電灯がついていた。「エコプロ」は、毎年、子どもたちの来場者が多いので、もちろん安全上、必要な明るさは担保されなければならない。が、東日本大震災後、数ヶ月続いた節電の時の明るさと比べると、かなり明るかった。

味の素株式会社の展示(筆者撮影)
味の素株式会社の展示(筆者撮影)

最終日の午後にリーフレットの在庫

また、リーフレットの印刷部数も、もう少し減らしてもいいのではと感じた。筆者が来場したのは開催最終日の午後。あと数時間で閉幕、という時だった。今回、6つの会場それぞれにリーフレットが設置されていたが、その時点で、まだ在庫が余っていた。余ったものはリサイクルされるとは思う。食料品の販売と同じで「足りなくなったらいけないから」ということで、多めに印刷されるのだろう。

各会場入り口に設置されたリーフレット(開催最終日の午後、筆者撮影)
各会場入り口に設置されたリーフレット(開催最終日の午後、筆者撮影)

だが、大規模イベントでも、紙の印刷資料を少なくする取り組みも国内にはある。

たとえば、2018年10月30日に開催された食品ロス削減全国大会 in 京都では、配布された紙の資料は必要最小限のものだった。

その前日10月29日から京都大学で2日間開催された国際シンポジウム「食と持続可能性」でも、来場者のみ、パスワードがメール送信され、それで事前に資料をダウンロードする方式で、紙の資料は一切配布されなかった。

このような取り組みはヨーロッパや米国などで既に何年も前から見られており、筆者が2012年に参加した米国でのシンポジウムでも、その方式だった。

「環境配慮」と「持続可能性」をテーマにするなら、もう少し、紙の資料を少なくしてもよいのではないだろうか。たとえばインターネットにアクセスできない人に限定するなど。

食品ロスの一因となる食品業界の商慣習「3分の1ルール」を説明するパネル。下の図では筆者の記事を参考にして頂いた(筆者撮影)
食品ロスの一因となる食品業界の商慣習「3分の1ルール」を説明するパネル。下の図では筆者の記事を参考にして頂いた(筆者撮影)

来場者が首から下げるプラスティック製のイベント用名札

全ての来場者に配られる、首から下げる、紐のついたプラスティック製のイベント用名札。素材としてリサイクル素材を使っているのかもしれないし、使用後に回収しているのでリサイクルなどはされるのだろうが、エコプロ公式サイトには、この名札に関する環境配慮の説明がなかったため、気になった。

エコプロ2018で配布された、首から下げるタイプの名札(筆者撮影)
エコプロ2018で配布された、首から下げるタイプの名札(筆者撮影)

たとえば、ヤフー株式会社のオープンコラボレーションスペース「LODGE(ロッジ)」では、来場者は、プラスティック製の名札ではなく、シールにフェルトペンで名前を書いて着衣に貼る形式を取っている。

配布食品を来場者がわしづかみ

食品ロスのコーナーで気になったのは、あるブースで配布されていた、ガム(の試供品)の配布方法だった。アンケートに回答した人へのお礼のコーナーでは「1人1つお持ちください」といった注意表示が書かれていた。が、あるブースでは、ブースの裏手で、段ボール箱へとガサッと大量に入れ、それをスタッフが来場者へと配り、来場者が何十袋とわしづかみにし、「え?こんなにもらっちゃっていいんですか?」と来場者が問うと、「いいです」とスタッフが答える姿を(たまたま目の前でそれが起こったため)目にした。

消費期限や賞味期限が近づいている食品なら、最終日の午後、急いで配布し切らなければならないのは理解できる。でもガムには賞味期限表示の義務はない。筆者がアンケート回答のお礼で受けとったそのガムには、賞味期限表示はなかった。大量に配布しなければならない、何か事情があったのかもしれないが・・・。

食品ロス(フードロス)を減らすためには、製造者は「適量」作り、販売者は「適量」売り、消費者は「適量」買う。そのような行動や習慣に変えていくことは容易ではない。が、少しずつの変化こそが「変革」につながる。

筆者は食品メーカー時代からこのような大規模な展示会に出展しており、当時は、展示会で発生する無駄など意識したこともなかった。

2011年秋に退職して独立し、フードバンクの広報を担当するようになった。大規模展示会によってはフードバンクが待機し、展示で余った試供品やサンプルを引き取って活用する現状を知った。

食品展示会で大量に余った食品を、最終日にフードバンクが引き取る。このような仕組みは、全国で、毎回行われるわけではない(筆者撮影)
食品展示会で大量に余った食品を、最終日にフードバンクが引き取る。このような仕組みは、全国で、毎回行われるわけではない(筆者撮影)

独立してからは、大規模展示会主催者からの食品ロス削減の講演依頼も複数あり、主催者も、展示で出る食品ロス(フードロス)に困っている現状を知った。だからこそ、このような大規模展示会では、大量配布や大量廃棄は少しずつ無くなっていって欲しいと願っている。環境配慮や持続可能性を追求し、さらに進化した「エコプロ2019」を楽しみにしている。

エコプロ2018 来場者数(「エコプロ2018」公式サイトより引用)

12月6日(木) 雨のち曇り    54,071人 (2017年: 晴れ    53,034人)

12月7日(金) 曇りのち晴れ   61,014人 (2017年: 晴れ    60,949人)

12月8日(土) 晴れ       47,132人 (2017年: 晴れ    46,108人)

合計   162,217人  (2017年 160,091人)

開催概要(「エコプロ2018」公式サイトより引用)

●名 称:

エコプロ2018 [第20回] SDGs時代の環境と社会、そして未来へ

●会 期:

2018年12月6日(木)~8日(土) 10:00~17:00

●会 場:

東京ビッグサイト 東ホール

●入場料:

無料(登録制)

●主 催:

(一社)産業環境管理協会、日本経済新聞社

●後 援:

内閣府、外務省、経済産業省、環境省、文部科学省、国土交通省、農林水産省、厚生労働省、消費者庁、(一社)日本経済団体連合会、(公社)経済同友会、日本商工会議所、東京商工会議所、(国研)新エネルギー・産業技術総合開発機構、日本貿易振興機構(ジェトロ)、東京都、埼玉県、神奈川県、千葉県、埼玉県教育委員会、神奈川県教育委員会、千葉県教育委員会 [順不同]

●協 力:

(公社)日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会、グリーン購入ネットワーク、(公財)日本環境協会、全国連合小学校長会、日本私立小学校連合会、全日本中学校長会、全国高等学校長協会、全国国立大学附属学校連盟、全国小中学校環境教育研究会、私立大学環境保全協議会、(公社)全国工業高等学校長協会、全国商業高等学校長協会、全国農業高等学校長協会、(公財)日本適合性認定協会、(一社)情報通信技術委員会、グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン、関西SDGsプラットフォーム 、日本健康会議[順不同]

●メディア協力:

日経ESG経営フォーラム、日経ビジネス、日経ESG、ecomom、教育新聞、日本教育新聞[ 順不同]

●出展規模:

650社・団体/1,450小間(見込み)[ 2017年出展実績:616社・団体/1,414小間]

●来場者数:

162,217人[ 2017年来場実績:160,091人]

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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