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「新たな時代の到来だ」バイデン勝利に祝賀ムードのNY 星条旗なびかせ喜ぶ人々

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
(c) Kasumi Abe

「パァン、パァ〜ン、パァ〜〜〜ン!」

土曜日の午前中、いつものように自宅でゆっくりした時間を過ごしていると、突然車のクラクションが表で鳴り始めた。

ここは日ごろから交通渋滞が激しく、週末は苛立ったドライバーから耳障りなクラクション音が聞こえてくることがある。「今日は特に騒々しいなぁ」と思っていると、そのうち「ヒュ〜!ヒュ〜!」という歓声も混じってきた。

「あ!」私はすぐにツイッターを開く。タイムラインにはバイデン氏の勝利を知らせるニュースが並んでいた。

私はすぐに外に飛び出した。

この後人々はBLMのデモ行進で消えて行った。(c) Kasumi Abe
この後人々はBLMのデモ行進で消えて行った。(c) Kasumi Abe

外ではすでに「お祭り」が始まっていた。人々はじっと辛抱し待っていたこの数日間(および4年間)の蓄積された鬱憤を晴らすかのごとく、思い思いに喜びを分かち合っていた。

ある人は手作りのメッセージボードを持って、またある人は星条旗をなびかせて。

Celebration after Biden named winner

「この4年間、争いごとが多く、国が分割されていてヴィジョンも見えてこなかった。今こそ時代の変わり目だ」と喜びを表すのは、娘2人を連れて、手作りのメッセージボードを見せながら歩いていたマイク&レイチェルファミリー。道ゆく人や車からも彼らに声が次々とかかる。

大きな星条旗を頭上に掲げたまま、静かに勝利を噛み締めていたのは、エロル・デイヴィスさん。「今、とにかく幸せです。差別がはびこった4年間だった。元に戻して、共に団結する時だ」。

「悪夢の終わり」とマイク&レイチェル一家。(c) Kasumi Abe
「悪夢の終わり」とマイク&レイチェル一家。(c) Kasumi Abe
「差別の4年でした」とエロルさん。(c) Kasumi Abe
「差別の4年でした」とエロルさん。(c) Kasumi Abe

「この4年は長すぎた。これ以上の喜びはない」と言うのは、ケヴィンさんとホイットニーさん。「レイシズムで、ヘルスケアも十分ではなく、環境問題への対策、パリ協定の離脱や国立公園への対応など、現政権のヴィジョンには馴染めなかった」とケヴィンさんは語った。

「これからパーティーの準備をします」とケヴィン&ホイットニーさん。(c) Kasumi Abe
「これからパーティーの準備をします」とケヴィン&ホイットニーさん。(c) Kasumi Abe

全身コスチュームで配偶者と踊って喜びを表していたベンさん。「これこそ民主主義だ。そして今日はそれが証明された。今日は1日祝賀だ。明日からまた一生懸命に働きます」。

「今日だけは仕事を忘れます」とベンさん。(c) Kasumi Abe
「今日だけは仕事を忘れます」とベンさん。(c) Kasumi Abe
建築会社の同僚同士、サム&イベンソンさん。(c) Kasumi Abe
建築会社の同僚同士、サム&イベンソンさん。(c) Kasumi Abe

「新型コロナの対策を失敗し、金持ちにしか恩恵のない政権だった」と言うのは、同僚と共に大きな旗を掲げ歩いていたサム・サイダースカイさん。「悪い時代がこれで終わろうとしている。時間はかかるかもしれないが、共に力を合わせて元に戻す時です」。

同僚で日本人のイベンソン・アンダース泉さんは、「この4年でますます分断が進みました。国民より自分の利益しか考えられない大統領だったというのが、今回の選挙で露わになったと思います」。

すっかり日がくれたが、筆者の自宅外では、祝い酒を浴びたのだろうと思われる若い女性グループが「レッツゴーアメリカ、レッツゴー!」「レッツゴーデモクラシー、レッツゴー!」と楽しそうに歌っている。

これを書きながら、そういえば勝敗を知らせてくれたクラクションや歓声は、いつかどこかで聴いた懐かしさだなと思ったら、よく考えると今年の4月、毎晩7時に自発的に行われていたクラップ・フォー・ケアラーズと同じ音だった!自宅待機中の自室から皆それぞれが、医療従事者に感謝の気持ちを伝えるため、そして互いの安否を喜び合いより団結するために、しばらく続けられたものだった。

民主党寄りのニューヨーク市内はこのような1日だったが、赤い州ではまた状況が異なるのだろう。

ちなみに敗北したトランプ氏は今も負けを認めていない。複数の州で開票を巡る訴えを起こすなど、徹底抗戦の構えを見せているため、まだ「確定」とは言えないのかもしれないが、米メディアはこぞって「Biden will be the 46th president of the United States」(バイデンが時期大統領になる)と発表している。

バイデン氏もこのような声明を出した。

  • アメリカよ、あなたが私たちの偉大な国のリーダーとして私を選んだことを光栄に思う。我々に課せられた仕事は大変だが、私はあなたにこれを約束する:私はアメリカの全国民の大統領になります。あなたが私に投票したか否かにかかわらず。あなたが私に寄せた信念を私は守ります。

今日筆者のもとに、民主党から届いたショートメッセージの内容:

  • Joe & Kamala couldn't have done it without you. We won the battle for the soul of our nation. But our fight is not over. More soon.-DNC(ジョーとカマラは、皆さんなしではこれを成し遂げることができなかった。我々は国の魂のための闘いに勝った。しかし我々の闘いは終わっていない。続く。-DNC)

大統領選の行方から、しばらく目が離せそうにない。どのような最終結果が出ようと、分断されたこの国がどのように前進していくのか、アメリカの片隅からしっかり見届けていきたい。

(c) Kasumi Abe
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(Text, photo and video by Kasumi Abe) 無断転載禁止 

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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