今からでも遅くはない。野党は選挙協力に努力すべし
フーテン老人世直し録(332)
神無月某日
総選挙が公示された時点の世論調査で、安倍内閣は不支持が支持を上回っていた。不支持の理由は「安倍総理の人柄が信用できない」がダントツである。国民の多くは安倍総理を信用できず支持していない。その安倍総理が妻と友人を守るため衆議院議員全員の首を切ったことて総選挙が行われている。
ところが公示直後の情勢調査で自民党と公明党で300議席を超える勢いと報道された。そのままなら安倍総理は続投になる。国民は安倍総理にNOを突きつけていながら、一方で自公の候補者に投票し安倍総理を続投させようとしている。
なぜこんなことが起こるのか。一つは安倍総理に代わる顔が見えないため「安倍総理を代える選挙」という意識が国民に生まれていない。その意味で小池百合子希望の党代表の「首班指名をあいまいにする戦略」にフーテンは疑問を感じている。秘策が別にあるのだろうか。
しかしそれ以上に致命的なのは小選挙区制の選挙で最も大事な「1対1」の選挙構図に持ち込めなかったことだ。顔など示さなくとも「1対1」の構図になれば野党は安倍総理を退陣に追い込むことが出来る。
なぜ「1対1」にならなかったか。そこにフーテンはリベラルを自称する野党勢力の政治的勘違いと幼児性を感じる。勘違いの第一は正義を主張することと正義を実現することを同一視することである。正義はどれほど主張してもそれで実現するものではない。実現するには権力を握る必要がある。ところが日本の野党は主張することに力を入れるが権力を握ることに力を入れない。
例えば2年前の安倍政権による安保法制強行採決は許しがたい暴挙である。安保法制廃止の野党共闘が生まれたのも当然である。しかし野党の選挙協力を徹底し政権交代を実現した後、その政権は安保法制を直ちに廃止することができるだろうか。廃止すればおそらく米国は黙っていない。
安保法制は違憲で不正義だと日本が主張しても、米国には米国の考えがあり安保法制を正義だと主張する可能性がある。国家が正反対の意見をぶつけて対立すれば、究極は戦争で決着をつけるしかなくなる。そして勝った方の主張が通る。
第二次大戦の戦勝国である米国は「米国に文句があるなら戦争で勝ってから言え」と言う国である。米国議会を取材してきたフーテンはその言葉を米国議員から何回か聞かされた。日本の外務大臣がそう言われたことも知っている。
米国と再び戦争などできない日本はどうするか。安保法制を直ちに廃止ではなく運用を限定して米国の言いなりにならない歯止めをかける事から始めるしかない。安倍政権のままだと自衛隊を丸ごと米国に差し出す恐れがあり危うい。だから安倍政権を代え、新政権は安保法制に歯止めをかけて事実上の廃止に近づける。
そのためには民進党を安倍政権に代わり現実的に政権運営するグループと、あくまでも安保法制反対を叫ぶグループとに分け、国民を巻き込んで反対の声を高めながらしかし米国との協調を壊さずに政権運営することが必要になる。二つのグループは対立しているように見せながら水面下で手を握れば良い。それが今回の希望の党誕生のシナリオだと思う。
安倍政権が希望の党の誕生に肝を冷やしたのは現実に政権交代が可能な構図が生まれたからである。民進党や共産党がそのままであればいくら正義を主張しても国民が騒いでも安倍政権は何の脅威も感じない。主張するだけで権力を奪い取る構えがないからだ。
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