「自公圧勝」も「立民躍進」も「野党混迷」も政治の現状を伝えていない
フーテン老人世直し録(334)
神無月某日
総選挙からほぼ1週間経った。選挙結果を巡るメディアの見出しはもっぱら「自公圧勝」と「立民躍進」で、選挙後はもっぱら「野党混迷」に目が向けられている。しかし「自公圧勝」も「立民躍進」も「野党混迷」も政治の現状を伝えているとは思えない。
「自公圧勝」も「立民躍進」も議席数はその通りだ。しかしそれが自公や立民にとって喜ぶ話かと言えば内実は単純でない。自民現状維持は想定外の勝利だと思うが公明議席減が安倍政権の今後に影を落とす。また安倍続投は自民党にとって必ずしも喜ぶ話にならない。
希望の党や民進党の現状を「野党混迷」と呼ぶのなら、「安倍一強」を許し増強させた時代の野党を何と呼ぶべきか。それこそが「野党混迷」の時代で、今の希望の党や民進党の混乱は「混迷」から抜け出るための「生みの何とか」である。
一昨年、安倍総理が日本の国会審議より先に米国議会で「集団的自衛権行使容認」を約束した時、フーテンは「ネギ背負った鴨が米国に這いつくばった」とブログに書いた。そして「地雷原に入った安倍政権が地雷に触れずに通り抜けられるかどうかが見どころになる」とも書いた。
すると安倍政権は通常国会を延長し9月に安保法制の強行採決を行った後、野党が要求する臨時国会を開かずに押し通した。年明け通常国会まで3か月以上も時間的余裕があるのに臨時国会を開かなかったのは政治史に汚点を残す。汚点であっても安倍総理は国会を開いて地雷に触れることを恐れた。
この異常な国会運営は一方で安倍総理を地雷原に引きずり込めない野党第一党民主党の非力さも浮き彫りにした。旧自民党と旧社会党が混在する民主党は野党第一党と言っても国民の不信感を拭いきれておらず選挙は連戦連敗である。それが昨年3月に維新の党と合流して民進党と看板を変えた。
しかし7月の参議院選挙に敗北し、直後の東京都知事選挙でも4野党統一候補の鳥越俊太郎氏が自民党に反旗を翻した小池百合子氏にダブルスコアで敗れた。看板を変えただけでは駄目だったのである。
その一方、安保法制強行採決は共産党に画期的な変化をもたらした。野党共闘に前向きになったのである。「安倍一強」を支えるのは公明党の選挙協力だが、これに対抗する野党が候補者の一本化をできないところに問題があった。その構図に変化の兆しが現れた。
とはいえ自公の選挙協力には18年にわたる積み上げがある。一方の野党共闘は始まったばかりだ。昨年10月の新潟県知事選挙では成果を上げたが国政選挙での実績はない。しかも国政選挙となれば安保政策が重視され、水と油の共産党との共闘に異議を唱える保守系議員も多い。
安倍政権と公明党の安保政策も水と油なのだが、こちらにはそれを乗り越える政治的な調整機能が働く。つまり大人の対応がある。それが共産党と民進党の間で可能かが不透明だった。そうした状況で安倍総理にもう一つの地雷原「森友・加計問題」が現れた。
地雷に触れることを恐れる安倍総理は、審議予定になかった共謀罪を持ち出して国民の目をそらすと同時に都議会議員選挙を口実に通常国会を閉じ、再び野党が要求する臨時国会を開かせないため、大義名分のない臨時国会冒頭解散に打って出た。
選挙後、年内2か月もあるのに安倍政権は臨時国会を開かないつもりである。閉会中審査でお茶を濁し、野党の質問時間を減らそうと画策している。どれほど国会を恐れているかが分かる。「自公圧勝」と言っても安倍総理は地雷に触れないよう逃げ回るしかないのである。
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