『海に眠るダイヤ』重厚な物語の構造を立体的にした第2話 いづみの正体も匂わせた
第1話から今期No.1の圧倒的な作品力を見せつけたTBS日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』。戦後の活気づく端島の人々の生活と、現代人の虚無的な日常をホストに映して対比した第1話は、重厚感のある映像とともに骨太な社会派ドラマが綴られていくことを思わせるスタートだった。
そして、第2話。猛烈な台風に襲われた端島を舞台に、当時の若者たちの複雑に入り組んだ恋愛模様を映し出し、社会派ドラマに加えて、登場人物たちの恋心の葛藤や嫉妬、苦悩が入り交じる愛憎劇の人間ドラマが交わることを示し、物語の構造を立体的にした。
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「戦後の端島」と「現代の東京」の恋愛の共通点
1955年9月の端島。猛烈な台風が接近するなか、若者たちの恋愛模様が描かれた。鉄平(神木隆之介)はリナ(池田エライザ)のことを気にかける。その様子を複雑な思いで見つめる朝子(杉咲花)は、鉄平への思いがある。
端島出身の大学同級生3人の関係性も複雑だ。賢将(清水尋也)と百合子(土屋太鳳)は付き合っているが、賢将は朝子への密かな思いを抱いている。一方、大学時代に鉄平が自分を好きだったことに気づいていた百合子も、鉄平への密かな気持ちがあるようだ。だから百合子は、朝子を困らせようとする。
また、妻をかつての台風で失っている鉄平の兄・進平(斎藤工)は、リナに妻の姿を重ねる。鉄平とリナを中心に、思う人に気持ちを向けられない複雑な恋愛関係が均衡を保っていた。
そんな端島の人間関係を、現代のホスト・玲央(神木隆之介:一人二役)のお金の関係をベースにした幻想のような恋愛と重ねた。そこには心のない愛の形がある。異なる時代のまったく異なる恋愛を通して、人間模様の不思議な共通点を映した。
こうした「戦後の端島」と「現代の東京」のさまざまな対比が毎話あるに違いない。そこには相違点があれば共通点もある。それらが収束していき、東京または日本の未来につながるメッセージがラストで示されるに違いない。
センチメンタルなロマンチストとリアリストの対比
本作の大きな謎になっているのは、現代のいづみ(宮本信子)が、端島の誰なのかだ。第2話のラストでは、台風が去った端島で、ようやく島に運ばれた貴重な水を柄杓で飲む百合子(土屋太鳳)と、現代でコップの水を飲むいづみの姿が重ねられた。
いづみと百合子が同一人物とすれば、性格的にも違和感はない。しかし、どこかしっくりこないところもある。毎話、端島の女性3人の誰かと、いずみの仕草が重ねて映される仕掛けであることも考えられる。
一方、同シーンで、玲央から「ようやく飲めた水はおいしかったんだろうね」と聞かれたいづみは「ちっとも。この浄水器の水のほうが何倍もおいしい。当時は消毒臭い水をがまんして飲んでた。そんなもん」と答える。
そんなふたりの何気ないやりとりからは、センチメンタルなロマンチストの側面のある現代の若者と、戦後を生き抜いて年輪を重ねたリアリストとの対比があった。それもこの先につながっていくのだろう。
毎話ごとに情報量が増えていき、それが分厚く積み重ねられて、難解になっていく。それを読み解いていくのは至難の業だが、そのために観ることを楽しみにさせてくれるドラマだ。毎話ごとに物語に引き込まれ、この先を楽しみに待っている視聴者は多いことだろう。
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