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紅白歌合戦で圧巻だったB'z、異彩放ったLE SSERAFIMとBE:FIRST、なじんだILLIT

武井保之ライター, 編集者
NHK紅白歌合戦公式X(@nhk_kouhaku)より

大晦日の風物詩『第75回NHK紅白歌合戦』が放送され、2024年を締めくくった。今回も安定の予定調和を世間一般が楽しんだことだろう。

2024年を代表するヒットメーカーのMrs. GREEN APPLEやCreepy Nuts、こっちのけんと、近年の音楽シーンをけん引する米津玄師、藤井風、Vaundy、話題の新人のtuki.、Omoinotake、ME:I、ILLITらの出演のほか、西田敏行さん追悼企画で武田鉄矢らが「もしもピアノが弾けたなら」を歌い継ぎ、恒例のけん玉企画があり、THE ALFEEが「星空のディスタンス」、南こうせつが「神田川」、イルカが「なごり雪」を歌い、大トリはMISIAと矢野顕子。まさに日本の芸能界が一丸となって2024年を総括する音楽番組が、お茶の間をにぎわせた。

大晦日の風物詩を盛大に盛り上げたB'z

なかでも圧巻だったのは、初出場となったB'z。スタジオからの映像のあとにNHKホールのメインステージにサプライズ登場。名曲「LOVE PHANTOM」「ultra soul」の稲葉浩志の熱唱と、松本孝弘の歪んでうなるギターは、会場をそれまでとは異なる熱気の渦に巻き込んだ。ラストの「ウルトラソウル」の大合唱は、この日いちばんの盛大なお祭り感を出していた。

そして、異彩を放っていたのが、3年連続出場となったLE SSERAFIM。日本の大衆向け音楽番組で、メロディではなく、印象的なリズムで聴かせる彼女たちの尖った音楽性を貫いた。

男性グループでは、BE:FIRSTとNumber_iも同様。紅白歌合戦という舞台でもスタイルを変えることなく、若い世代に親和性の高い曲で存在感を示した。LE SSERAFIMも含め、彼らのパフォーマンスは、初見の視聴者にもインパクトを残したことだろう。

一方、若年層の女性に圧倒的な人気のK-POPアーティストであり、その曲調が紅白歌合戦になじんでいたのがILLIT。明るくてわかりやすいキュートな歌唱とダンス、トリッキーなリズムとブレイクは、世代を超えてとっつきやすい。メロディで聴かせるVaundyにも通じるが、幅広い世代の紅白視聴者に受け入れられていそうだ。

1年を締めくくる音楽番組であり日本芸能界のお祭り

今回のトリはMISIAと福山雅治。紅組白組ともに5年連続となったが、75年の伝統のなかで些細なことだろう。その年のトリに相応しいアーティストが選ばれるだけであり、重複することを視聴者は厭わないように思われる。

誰が出演し、何をどの順番で歌うかはその年によって変わるが、その年のヒットアーティストがラストを飾る民放の年末音楽特番とは性質が異なる。紅白歌合戦とは、その1年を締めくくる音楽番組であるのと同時に、日本芸能界のお祭りなのだ。この歌番組のフォーマットそのものが日本の伝統芸能のひとつであり、トリはその時代のアイコン的存在が務めることになる。

今回の大トリを務めたMISIAと矢野顕子は、締めはこの2人しかいない素晴らしいユニットだった。愛と平和への深い祈りが込められた曲には、視聴者の心を揺さぶる音楽の力があり、誰もの心の琴線に触れたことだろう。2025年への希望につながるこれ以上ない締めくくりだった。

紅白歌合戦とは、見ているほうが恥ずかしいほどのベタも王道も、視聴者にそれが楽しいと思わせる稀有な音楽番組であり、それこそ伝統芸能となりえる所以だ。そんなことを毎年再確認させられる。

ライター, 編集者

音楽ビジネス週刊誌、芸能ニュースWEBメディア、米映画専門紙日本版WEBメディア、通信ネットワーク専門誌などの編集者を経てフリーランスの編集者、ライターとして活動中。映画、テレビ、音楽、お笑い、エンタメビジネスを中心にエンタテインメントシーンのトレンドを取材、分析、執筆する。takeiy@ymail.ne.jp

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