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映画業界で働く女性の環境改善へ 男性スタッフの罵声はなくなった?まだまだ課題はある?

武井保之ライター, 編集者
左から是枝裕和監督、岡野真紀子プロデューサー、菊地凛子、磯村勇斗(筆者撮影)

開催中の『第37回東京国際映画祭』公式プログラムとなるトークイベント『ウーマン・イン・モーション』が11月1日、TOHOシネマズ日本橋にて開催され、俳優の菊地凛子、磯村勇斗、是枝裕和監督、Netflixの岡野真紀子プロデューサーが登壇した。

女性だけで解決できる問題ではない

本トークイベントは、世界中の映像業界の女性を取り巻く環境、課題、未来について語り合い、幅広い意見交換から考えを深める場となる。2015年のカンヌ国際映画祭での発足以来、世界各地で100回以上のトークセッションが開催され、東京国際映画祭では4回目となった。

この日のオープニング・スピーチは、2022年の『ウーマン・イン・モーション』登壇者であり、映像業界の啓発、人材育成、教育などに精力的に取り組む是枝裕和監督。映画制作現場の環境向上に向けた最近の取り組みを紹介し、本イベントを主催するフランス企業・ケリングを「日本に限らず、世界の映画文化を豊かに発展させていくためのかけがえのないパートナー」と称した。

トークセッションには、菊地、磯村、岡野プロデューサーが登壇。

ハリウッド作品や国際合作の現場を経験する菊地凛子は「プロダクションによってパワハラなどの相談窓口もあるが、スタジオとつながっているので、何かあってもなかなか言いにくい。第三者が寄り添ってくれるシステムがあるとよりいい。少しずつ環境は変わっていますが、男女関係なく平等に働ける環境が整っていくにはまだまだ課題があります」と現状を指摘した。

磯村は、昨今の撮影現場の変化を「デビューした当初の現場は、男性スタッフの罵声が飛び交っていましたが、いまはそういうのはない。近年は女性スタッフの数が圧倒的に増えたことを感じます。こういう流れが映像業界に浸透してきています」。そして、女性の働き方改革については「女性だけで解決できる問題ではない。男性が一緒に向き合わないといけない。そのためにまずは理解する。クリエイティブにディスカッションは必要です。そういう話し合いができる環境を作っていくことが大事」と語った。

岡野プロデューサーは、すべてのキャスト、スタッフが受けるリスペクトトレーニングや、インティマシーコーディネーターの導入によるクリエイティブに集中できる環境作りへのNetflixの取り組みについて語り、「眼の前のことに一生懸命になりがちですが、サステナブルな未来を意識してサポート体制を整えていくことが重要です」と言葉に力を込めた。

本イベントのテーマのひとつは、出産、育児、介護などキャリアがストップする人生の局面から仕事に戻ったときに、それまでと同様に活躍できる場があることが当たり前の環境をどう作っていくか。作品や現場ごとに実現していても、それを業界の標準とするのは、決して簡単なことではない。

その第一歩が、こういう場でお互いへの理解を深めていくことだ。ただ、いつまでも第一歩でいいわけではない。話し合うことが大事と唱えるだけでは世間の関心は薄れていく。理解を深めた先の具体的なロードマップを示すことも求められているのではないだろうか。

ライター, 編集者

音楽ビジネス週刊誌、芸能ニュースWEBメディア、米映画専門紙日本版WEBメディア、通信ネットワーク専門誌などの編集者を経てフリーランスの編集者、ライターとして活動中。映画、テレビ、音楽、お笑い、エンタメビジネスを中心にエンタテインメントシーンのトレンドを取材、分析、執筆する。takeiy@ymail.ne.jp

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