メッセ、小野、才木の150キロ超え継投に驚嘆!交流試合の和歌山箕島球友会《阪神ファーム》
10月です。きのう1日は社会人のクラブチームである和歌山箕島球友会を迎えて、鳴尾浜で交流試合が行われました。日にちが日にちだけに心配していたのですが、まだ戦力外の通達はなかったようで…試合に集中できてよかったです。ファンの皆さんも同じ思いだったでしょう。できれば先延ばしにしたいような…。でも、いずれはやってくるんですよね。その時が。
きょう2日の夕方、球団から『高宮和也投手(35)に対して来季の契約を結ばないことを伝えましたので、お知らせします』との発表がありました。掛布雅之監督最後の試合だった、9月28日のウエスタン今季最終戦で9回に登板、打者3人に投げた15球がラストマウンドだったんですね。志願しての登板だったという記事も見たので、自身の中ではもう決めていたのではないかと推察します。1軍でのあの活躍、忘れません。話が聞けたら改めてご紹介します。
メッセンジャー投手が投げて打って走って
では1日の試合結果です。和歌山箕島球友会は、9月初めに行われた『第42回全日本クラブ野球選手権』で優勝を果たし、クラブチーム日本一の座を奪還しました。元阪神の穴田真規選手(24)の活躍ぶりも合わせて、こちらからご覧ください。1回戦、2回戦、準決勝、決勝の4試合です。
この日は右腓骨(ひこつ)骨折から復帰したメッセンジャー投手が2試合目の登板。そのあとがドラフト2位ルーキーの小野投手、続いて同3位の才木投手というリレーです。それぞれの、この日の最速が151キロ、152キロ、153キロ!才木投手も引けを取らないピッチングを披露しました。
対する和歌山箕島球友会は、クラブ選手権で2試合完投勝利でMVPを獲得した和田投手が先発。打線は3安打完封負けだったものの、10月末から始まる『第43回社会人野球日本選手権』に向け、いい経験といい勉強ができたと話しています。これ以上の投手はなかなかいないでしょうからね。
《練習試合》 10月1日
阪神- 和歌山箕島球友会 (鳴尾浜)
箕島 000 000 000 = 0
阪神 022 000 00X = 4
◆バッテリー
【阪神】メッセンジャー-小野-才木 / 小宮山-小豆畑(6回~)
【箕島】和田‐松尾 / 水田
◆三塁打:緒方 ◆二塁打:西田
◆打撃 (打-安-点/振-球/盗塁/失策)
【先攻・和歌山箕島球友会】
1]右:夏見 (4-1-0 / 0-0 / 0 / 0)
2]中:岸田 (2-0-0 / 2-0 / 0 / 0)
〃中:森下 (2-0-0 / 0-0 / 0 / 0)
3]一三:岸 (3-0-0 / 1-0 / 0 / 0)
4]指:林 (2-0-0 / 0-0 / 0 / 0)
〃打指:富山 (0-0-0 / 0-1 / 0 / 0)
〃走指:岸本 (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0)
5]三:穴田 (2-0-0 / 1-0 / 0 / 0)
〃一:渡部 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0)
6]左:平井 (3-2-0 / 1-0 / 0 / 0)
〃左:矢野 (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0)
7]捕:水田 (3-0-0 / 0-0 / 1 / 0)
8]遊:西口 (2-0-0 / 0-0 / 0 / 0)
〃二:北 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0)
9]二遊:冨樫 (3-0-0 / 1-0 / 0 / 0)
【後攻・阪神】
1]左:荒木 (4-0-0 / 1-0 / 0 / 0)
2]遊:北條 (4-1-0 / 0-0 / 0 / 1)
3]二:板山 (4-0-0 / 1-0 / 1 / 0)
4]右:陽川 (4-0-0 / 2-0 / 0 / 0)
5]一:西田 (4-2-1 / 0-0 / 0 / 0)
6]三:今成 (3-1-1 / 1-0 / 1 / 0)
7]中:緒方 (3-1-1 / 2-0 / 0 / 0)
8]捕:小宮山 (1-1-0 / 0-1 / 0 / 0)
〃捕:小豆畑 (1-0-0 / 1-0 / 0 / 0)
9]投:メッセ (1-1-1 / 0-0 / 0 / 0)
〃投:小野 (1-0-0 / 1-0 / 0 / 0)
〃投:才木 (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0)
◆投手(打-振-球/失点-自責) 最速キロ
【和歌山箕島球友会】
和田 6回105球 (7-7-1 / 4-4) 136
松尾 2回 26球 (0-2-0 / 0-0) 136
【阪神】
メッセ 5回 62球 (2-4-0 / 0-0) 151
小野 2回 28球 (0-0-1 / 0-0) 152
才木 2回 46球 (1-2-0 / 0-0) 153
《試合経過》※敬称略
まず打線。1回は三者凡退でしたが、2回は1死から西田が中前打し、2死後に緒方の左中間三塁打で1点を先取!小宮山は四球を選んで、次はメッセンジャーの打席です。カウント1‐2からの6球目を打って中前タイムリー!続く荒木も快音を響かせますが、サード穴田がライナーを好捕してチェンジ。阪神が2点先制。
3回は先頭の北條が左前打、板山の二ゴロで走者が入れ替わり、2死後に板山の盗塁で2死二塁として西田が、今度は一塁線を破るタイムリー二塁打!そして今成の左前打で“必死の生還”を見せます。少し送球が逸れたので間に合いましたね。これで計4点です。4回は先頭の小宮山が左前打したものの以降はノーヒット、いえパーフェクトに抑えられた打線。5回、6回と箕島先発・和田の前に三者凡退。特に6回は今成、緒方の左2人と小豆畑が3連続三振を喫しています。7回と8回は2人目・松尾の前に三者凡退でした。
投手陣は、まずメッセンジャーが三者凡退で立ち上がり、2回は2死から平井に中前打されますが、小宮山の盗塁阻止もあり3人で片づけて、3回と4回は三者凡退。4回までと聞いていたメッセンジャーですが、その裏も打席に向かい、キッチリと犠打を決めました。そして5回のマウンドへ。2回と同様、2死から平井に左前打されるも、やはり小宮山が刺して終了。5イニングで、“打者15人”に62球を投げて2安打無失点という、さすがの内容です。
後半は小豆畑がマスクをかぶり、ピッチャーは小野。6回は簡単に2死を取ったあと、9番の富樫をショート・北條のエラー(捕球の際に少し足が滑った?)で出しますが、次はあっさりと投ゴロ。7回も4球で2死としてから代打・富山に四球を与えたものの、小豆畑が盗塁阻止。小野は2回を無安打無失点で投げ終えました。
最後は才木。8回は2安打している平井から見逃し三振を奪うなど三者凡退。9回は2死から1番・夏目に左前打を許しますが、森下を遊ゴロ(二塁封殺)に打ち取って試合終了。才木も無失点で完封リレーです。
山田監督代行と高橋投手コーチ
試合前も試合後も、もちろん試合中も、鳴尾浜に掛布雅之監督の姿がなくて…かなりの違和感でした。それに古屋英夫コーチ、久保康生コーチもいないので、ベンチの中はがらんとした感じです。しばらくはこの状態かもしれません。1軍のシーズンはまだ続いていますからね。というわけで、試合後の話はまず山田勝彦監督代行からです。
「メッセンジャーは、この前(甲子園のウエスタン広島戦)はちょっと球が高かったけど、きょうは低めに、ていねいに投げていた。さすがエースだね。小野はテンポのいい真っすぐがよかった。若干、変化球は抜けるのがあったけど。3番手の才木は、それに影響されてか素晴らしかったねえ。感動した。クイックもできたし、課題であるセットのタイミングもよかったし。最速153キロ?確かに速かった。あの2人のあとに投げてどうかな~と思ったけど、遜色なかった。対応力もある。昨日のクイックのタイミングを言ったら、すぐゲームで解消できたからね」
“初采配”について聞いたら「采配も何も」と笑ったあと「いつもは(ベンチで)守備の時に立っているのに、きょうは攻撃の時に立たないといけなくて、ちょっと間違えた(笑)。でも、僕にとって、ものすごく勉強になりました」という山田監督代行です。
メッセンジャー投手は4回までというより、球数から考えて4回くらいだろうとの前提だったよう。でも4回で50球と少な目だったため1イニング追加されたとのこと。これについて高橋建投手コーチは「ブルペンでのピッチング、プラス試合での球数がいくらかという予定だったので」と説明しています。
投球以外でも、2回にはタイムリーヒット、4回は送りバント成功、5回の守備では素早く一塁ベースカバーに走るなど“全快”をアピール。「ベースカバー、ヒットを打って走ること、バント、全部できましたからね。一番気になるところだったので、よかったです。1軍のマウンドが近づいたんじゃないかな」と高橋コーチも太鼓判でした。
小野投手と才木投手
小野泰己投手は、プロ初の中継ぎ登板にも「思っていた以上にすんなりと入れました。入りは先発の時と変わらず、準備の仕方で違いがあるので、それを経験できてよかったです」と話しています。違いとは?「試合前は、先発だと外でキャッチボールしてからブルペンに入りますが、中継ぎではできなくてブルペンでキャッチボールをしたりとか」
登板前にブルペンで投げる球数は?「そんなに変えていません」。力の入れ具合も?「一緒でした」。試合ではテンポも意識した?「先発の時から気にしています。それがなくなると崩れてしまうので、変えずにいきました」
今後(CSなど)は先発、中継ぎといろんな役割が出てくると思われます。それに向けて手応えは?「どの場面で投げるかわからないので、今までは先発でやっていましたが、初めて中継ぎを経験できてよかったです」。ちなみに中継ぎって、いつ以来?「大学3年春の神宮ぐらいですかねえ。内容は…あまりよくなかったです」。じゃあプロで、そのイメージを塗り替えましょう!
才木浩人投手は8回の見逃し三振が152キロの真っすぐ、9回の空振り三振は141キロのフォークでした。その他にスライダーと「1球だけカーブを投げた」そうです。最速は153キロをマークしましたが、本人は不満顔。理由は「空振りを取れていないから」とのこと。3球くらいはあったと思うけど。
「中途半端なスイングじゃなくて、正々堂々とした空振りがない」。そこが物足りない?「いえ、そこがダメです」。才木投手の負けん気が、ここでも現れましたね。さらに「真っすぐと変化球、両方のボールの質を上げていきたい。特に真っすぐの」と付け加えています。
勉強にも、記念にもなった試合
変わって、和歌山箕島球友会の選手コメントをご紹介しましょう。最初に先発した和田拓也投手。
初めて阪神のファーム相手に投げ「全然スイングが違いました!」と目を真ん丸にしての感想。でも4回以降は抑えましたね。「フォークを最初はほとんど振ってくれなくて。バッターの足元くらいに落としていたんですけど、それでは振らないので、もっと向こう(足元よりもバッターの体から遠く)で落ちるように投げたんです。勉強になりました。あれだけスイングの速いバッターは今までやっていなかったので、すごい勉強になった」
メッセンジャー投手と投げ合ったねえ、と言ったら「はい」と嬉しそうにニコニコ笑っています。いつ知ったの?「きのう新聞で見て。スゲー!と思って、きょう家族に(スコアボードの)メンバー表を写真に撮っといて、って頼んだんです(笑)」。お父さんはビデオをばっちり撮っておられましたよ。
そのメッセンジャー投手と、まさか対戦までするとは思わなかったでしょう?「はい。しかも打たれた!」。127キロの変化球ですね。「チェンジアップです。一塁で、岸さんが『ナイスバッティング』って声かけたら、メッセンジャーは『チェンジアップ!イージー!』って答えていたらしいです」。そう言って、すごく楽しそうに笑っていました。いい経験と、いい思い出もできたかな?あちこち自慢してください。
松尾大輝投手は7回に登板して2イニングを無失点。しかし「まだまだダメです。まだ甘い。打ってくれてアウトになっただけ」と不満げでした。9月初めの全日本クラブ選手権のあと「バッターに対して一度投げただけで、試合はそれ以来」だったそうです。「アウトになったのはよかったけど、ボール自体はもっと、もっと」と日本選手権に向けて、自身を奮い立たせます。そして「穴田さん、めっちゃ楽しそうですねえ」と、1年ぶりに戻った鳴尾浜ではしゃぐ先輩を見て笑いました。
日本選手権でいい締めくくりを
林尚希選手は「1軍で投げているピッチャー、やっぱりすごいですねえ。打席に立ててよかった。小野くんもメッチャ速い!」と興奮気味。箕島のコーチ陣も、小野投手や才木投手の球速に驚いていました。才木投手には「まだ19歳ですよね?どうやったらあんなに速い球が投げられるのか。体も大きいですしねえ」と。
平井徹選手がチーム3安打のうちの2安打。どちらもメッセンジャー投手から放ちました。その話を聞こうと思ったら「ことしで上がる(辞める)んですよ」と、なぜか笑顔。え、そうなの?「はい。でも日本選手権でホームランを打ったら、もう1年やろうかな(笑)」。やってほしいような、でもチャンピオンになって終わるのも悪くはないような。あまりにも明るいので冗談かなと思いましたが…。
そういえば、ゲームの後半にほとんどの選手が交代したのが珍しくて、原井和也ヘッドコーチに聞くと「日本選手権はもちろんレギュラーメンバーで戦いますが、きょうは今後のため他の選手にも経験を積ませる目的」だったようで。これは冗談じゃなく、本当に引退する選手も多いのでしょうか。林選手も平井選手も、そして穴田選手もことしが4年目です。
筒井コーチに、ええとこ見せた?
最後は穴田真規選手。鳴尾浜で古巣と対戦した感想を聞かれ「懐かしかった!」と答えましたが、昨年も来ていますよね。昨年は3年ぶりで退団後は初めてだったものの、直前にクラブ選手権予選敗退という出来事があり、ちょっと元気がなかったかもしれません。その時の詳細はこちら→★<3年ぶりの鳴尾浜でパワーをもらって、来年へ>。でも今回はクラブ選手権で見事に優勝!日本選手権出場も決めての“凱旋”ですから笑顔満開です。
メッセンジャー投手と在籍期間は重なっていますが、対戦したのは初。やはり「きのう新聞で知った」と言います。打席に立ってみてどうでしたか?「すごかったですね。角度とか」。ヒットはなかったけど、いい守備もあったし。「荒木さんにメッチャ怒られた(笑)」と言いながらも「壮さんの前だったので、守備は特に意識しました」と穴田選手。
そのあと筒井壮コーチが通りかかって「打ってないのに何を語ってるねん」みたいなツッコミもありましたが、鳴尾浜でいつも鍛えてもらっていた“師匠”に、いいところを見てもらえてよかったですね。なお、1日は日曜とあって選手のご家族も多く来られていました。穴田選手のご両親とお兄さんもスタンドで観戦。そういえばご両親は阪神退団後、初めての鳴尾浜で、いろんなことを懐かしく思い出されたみたいですよ。
穴田選手は好調だった今季を、京セラドームでしっかり締めくくりましょう!和歌山箕島球友会と、阪口哲也選手が所属するパナソニックも社会人日本選手権に出場します。また新日鐵住金鹿島の玉置隆投手も初戦突破を誓う『第43回社会人野球日本選手権大会』は、10月30日から京セラドームで開催。組み合わせ抽選会は10月6日です。
終始はしゃいでいた穴ちゃんが、帰り際に見せた少し寂しげな笑い顔は…もしかしたら「これが最後の鳴尾浜」ということだったかなと思います。今年みたいにまた“延長”してくれるかもしれませんが、おそらく。なので、京セラドームへぜひ見に行ってあげてください。
<掲載写真は筆者撮影>